2016年から始まる金融所得課税の一体化。意外に知らないポイントまとめ

読者に伝えたい3つのポイント

金融所得課税が2016年から変わります。公社債などが2016年以降、株式等と同様に申告分離課税になり、損益通算が可能になります。

外貨建てMMFも含む公社債等では、2015年内に取引した方が税務上有利な場合があります。

公社債等を投資されている方は、特定口座の活用をお考えください。

2016年から始まる金融所得課税の一体化。内容をご存じですか?

2016年から始まる金融所得課税の一体化に対する関心が高まっています。正確には、「2016年から金融商品に関する税制が変わることは何となく知っているけど、詳しくは知らない」という方がとても多いようです(笑)。

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投信1では10月28日の「外貨建てMMFを保有している投資家は特に必見―税制改正の投資リターンへの影響」で、金融所得課税の一体化についてお伝えしました。

大事な話なので、今回はマネックス証券のウェブセミナー(2015年10月9日実施)の内容を参考に、何がどう変わるのか、新旧対照表付きで少し詳しくお伝えします。

なお、マネックス証券の無料Webセミナーの多くは、口座保有者むけとなっています。

>>マネックス証券の公式サイトを見る

金融所得課税の一体化とは何か

金融商品は大きく公社債等と株式等(言葉の定義は後ほど説明します)に二分されるのですが、これまでは、それぞれについて異なる税金の計算方法が適用されてきました。非常に分かりづらく、複雑でした。

2016年からは、公社債等と株式等の課税方法が統一されます。また、公社債等と株式等の損益を通算(合算)して税金を計算することになります。公社債等、株式等を区別することなく、金融所得の課税が一体化されるのです。

国として、「貯蓄から投資へ」の流れを推進していく中で、金融商品間の税負担の中立性を確保すること、簡素で分かりやすい税制とすること、そして、個人投資家の投資リスクを軽減することなどが主な狙いだと思われます。

変わるのは株式の税制ではなく、公社債等の税制

2016年から、公社債等と株式等の課税方法が統一されると言いましたが、株式等の税制はこれまでもかなりシンプルであり、2016年以降も変わりません。

複雑な公社債等の税制を2016年以降は株式等の税制に揃えることで、株式等と公社債等の税制が一本化される予定です。

表1を見て下さい。

ここでは公社債等は、利付債(利子がもらえる債券)、公募公社債投信(投資信託)、ゼロクーポン債等(ゼロクーポン債(割引発行され、利息のない海外発行の債券)と同等の扱いとなる債券)の3つに区分されています。

もう少し身近な言い方をすると、国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債、公社債投信(外貨建てMMFも含む)などが対象になります。

こうした投資商品に投資をしている方は、あらかじめその変更点の確認をお勧めします。

税制変更前に売却した方が税務上有利になるケースがあるからです。所得の計算は1月から12月までですので、早めに対応方針を検討したいところです。

表1:税制変更のまとめ

商品区分 所得 2015年 2016年~
公社債等 利付債 利子 源泉分離課税20.315% 金融所得課税の一体化

申告分離課税20.315%に統一

確定申告により損益通算可能に
譲渡損益 非課税
償還損益 総合課税(雑所得)
公募公社債投信 分配金 源泉分離課税20.315%
譲渡損益 非課税
ゼロクーポン債等 譲渡損益 総合課税(譲渡所得)
償還損益 総合課税(雑所得)
上場株式等 上場株式
公募株式投信
配当・分配金 申告分離課税20.315%
譲渡損益 申告分離課税20.315%

出所:マネックス証券のセミナー資料を参考に投信1編集部作成

公社債等の税制変更のポイント3点

変更1 公社債等の課税は申告分離課税20.315%に一本化。譲渡所得は課税対象になる

前述の通り、公社債等の課税はシンプルになります。

ここで特に注意していただきたいのは、利付債と公募公社債投信を満期前に売却(=譲渡)した場合の損益は、2015年までは課税対象ではありませんが、2016年以降は課税対象になる点です。

また、利子・分配金は源泉分離課税から申告分離課税に変わりますが税率は変わりません。

この改正で特に影響が大きいのが外貨建てのMMF(マネー・マーケット・ファンド)です。外貨建てMMFは公社債投信ですから、これまでは、売却する際の譲渡益は為替差益の分も含めて非課税とされていました。

それが、2016年からの一体化により、他の金融商品と同様に、譲渡益に対して約20%の税金がかかるようになります。

変更2 公社債等の損益通算が可能になる

2015年までは公社債等と上場株式等との間で損益の通算ができませんでした。しかし2016年以降はこれが可能になります。

例えば、公社債で譲渡損(A)を、株で譲渡益(B)を出したとしましょう。これまでは、(A)の損失と(B)の利益を足し算できなかったので、(B)にまるまる税金がかかりました。

しかし2016年以降はこの2つを合算ことができます。従って、支払う税金を少なくすることができるようになります。

もう1つ大事なのが、「3年間の繰越控除制度」が公社債等にも適用できるようになることです。この制度は、ある年に発生し、損が出て控除しきれなかった額を3年間まで繰り越すことができる制度です。

たとえばある年に▲100万円の株式譲渡損が出た場合に確定申告しておくと、翌年株式の譲渡益が出ても前の年の▲100万円の損を繰り越して合算して損益を計算し、それをもとに税金を計算することを認める制度です。

2015年までは株式等でのみ認められていたのですが、2016年以降は公社債等にもこの適用範囲が広がります。

変更3 公社債等も特定口座で管理が可能になる

2016年以降は、公社債等も特定口座を利用できます。

特定口座は証券会社が確定申告に必要な資料を作成してくれる大変便利な制度です。

特に「源泉徴収あり」特定口座では、課税にかかわるすべての計算を証券会社が行って資料を作成してくれ、源泉徴収も証券会社が自動的にやってくれますので、確定申告が不要になります。

2016年以降は公社債等も申告分離課税になりますが、この確定申告の手続きを自動でしてくれますので利用したいものです。

2015年度中に済ませておきたい取引とは

まず利付債や外貨建MMFを含む公募公社債投信をお持ちで、含み益があり、譲渡を予定している場合を考えてみましょう。

この場合、2015年に譲渡すれば譲渡益は非課税ですが、2016年以降ですと20.315%の課税対象になります。2015年に売ってしまった方が有利です。

逆に含み損の場合は2015年に譲渡してもその損を他の利益(上場株式等の譲渡益など)と通算できませんから、売却は2016年以降にした方が税金の面では有利です。

次に2015年の年内に償還を迎える利付債(たとえば利付き外債)があるとしましょう。

含み益が出ているとすると、償還を待たずに譲渡すればその譲渡益は非課税になりますが、償還を待つと償還益となって雑所得として総合課税されます。償還前に譲渡するのが有利になります。

公社債や公社債投信などに投資をされている方は一度ご自身のポジションを確認してみてはいかがでしょうか。

注:税務が関係する投資判断は、事前に最寄りの税務署や顧問税理士に相談の上行ってください。本記事は正確性に注意して執筆しておりますが、その完全性を保証するものではありません。

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。