この記事の読みどころ

トヨタ自動車が2016年暦年の販売・生産計画を発表しました。暦年計画を発表しているのはトヨタだけです。

全体としては2015年並みを見込んでいるようですが、国内販売がいつになく強気な計画です。

2016年秋頃から始まるであろう消費再増税前の駆け込み需要を織り込んだ可能性があります。

トヨタ自動車が2016年暦年の販売・生産計画を発表

12月16日にトヨタ自動車が「2016年暦年の販売、生産計画」を発表しました。トヨタは毎年12月の中旬以降に、翌年(暦年)の販売・生産計画を発表しています。

今から20年程前は、ほとんどの自動車メーカーが暦年計画を発表していました。しかし、暦年計画の発表を止める会社が徐々に増え、現在ではトヨタ1社だけになっています。

おそらく、各社とも社内では暦年計画を策定していると推測されますが、トヨタのような対外的に堂々と発表している自動車メーカーはありません。

なお、トヨタは連結子会社であるダイハツ工業と日野自動車の分も合わせて発表しているので、広い意味では3社のみと言えます。

暦年の販売・生産計画の有益性はやや疑問

この暦年計画ですが、アナリストの立場から言うと、あまり役に立つものではありませんでした。それは、決算年度(4~3月)とリンクしないこと、計画の詳細(地域別など)が全くないこと等が理由です。

また、公表された暦年計画が、非常に保守的でザックリとした数字であることも一因でした。正直、無いよりはあったほうがいい、という程度だったと記憶しています。それもあってか、各社とも次々に発表を止めたのだと考えらえます。

保守的な数字が多い暦年計画

トヨタが毎年発表する暦年計画は、基本的には、販売・生産とも前年並み、もしくは、前年を多少上回るような計画が多いのが実情です。

販売と生産はそれぞれ国内と海外に分けられており、年によっては国内外の内訳の強弱がありますが、合計すると結局は例年通りのパターンが続いてきたと思います。ただ、最近はVW社(ドイツ)と販売世界一を競っていたため、注目度は少し高まってきたような印象はありました。

トヨタの2016年計画も例年通りコンサバティブな印象

さて、今回発表されたトヨタの2016年の計画ですが、グローバル販売は2015年見込み比100%、グローバル生産も同100%でした。ダイハツと日野自動車を加えたグループ全体でも、同じく100%と101%となっています。

一見すると、いつものパターンで面白みがないというのが第一印象です。なお、グローバル販売は国内販売と海外販売の合計です。生産も同様です。

いつになく強気の国内販売計画

ところが、トヨタのグローバル販売の内訳を見ると、いつもと少し違う点があります。それは、2016年の国内販売を同103%と計画していることです(海外販売は99%計画)。

たった+3%増じゃないかと思われるかもしれませんが、いつになく強気の姿勢です。トヨタは国内市場が成熟化していることを十分認識しており、一部の自動車メーカーのように、チャレンジングな目標を掲げて営業部隊を鼓舞する進撃ラッパを鳴らしたりしません。

ハイブリッド車「プリウス」の増販も一因であろうが…

いつになく強気の計画を出した背景には、先般フルモデルチェンジを実施したハイブリッド車「プリウス」の増販もあるでしょう。ただ、「プリウス」が売れることで、同じハイブリッド車の「アクア」などは減少すると見られるため、それが最大の理由とは考え難いです。

そもそも、昨今のガソリン価格安を考えると、ハイブリッド車が従来のような爆発的な売れ方を示すとは思えません。

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(写真:トヨタ自動車)

消費再増税前の駆け込み需要を織り込んだ可能性も

この強気に見える国内販売計画の背景には、恐らく、2016年秋頃から顕著になり始める消費再増税前の駆け込み需要があるのだと推測します。

2017年4月から消費税が10%に引き上げられますが、高級消費耐久財のクルマ販売にもかなり大きな駆け込み需要が起きることは容易に想定できます。

実際、前回の消費増税時(2014年4月)を始めとして、こうした消費増税前には例外なく大きな駆け込み需要が起きています。また、今回の計画を見ると、軽自動車を扱うダイハツ工業も国内販売を強気に見ています(同104%)。これも、秋以降の駆け込み需要発生を織り込んだ可能性があります。

消費税が10%になるのはまだ先という印象がありますが、既にそれを見込んだ動きが出始めているのではないでしょうか。そんなことを考えさせられる、トヨタの暦年計画でした。

LIMO編集部