株投資をする時に「買う」ことばかりに目がいくとうまくいかない

この記事の読みどころ

一般的なビジネスでは、売上高に直結する「売り値」が強く意識されます。

ところが株投資の話となると、「売り値」が意識されることが少ないです。

ビジネスと同様、株投資でも「売り値」から考える習慣をつけることをお勧めし、そのためのアイデアをご紹介します。

「何を買えば儲かる?」と聞かれても・・・

忘年会など、師走はいつにも増して人と会う機会が多くなる季節です。久しぶりに会う人も多くなります。

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「最近、仕事の調子はどう?」という話になることが多いのですが、以前、日本株のファンドマネージャーをしていた時は、「何(の銘柄)を買えば儲かる?」と聞かれることがありました。

職業倫理上、個別銘柄のことをお話することはできないので、やんわりと話をそらすことになるのですが、仮にお話することが許されたとしても、聞いた方が満足するような内容はお伝えできないと感じていました。

以前、「NISA口座では100万円の枠を使いきることを目的にしてはいけない」の記事で、「個人が資産運用を行う際には、目的と目標を明確にすることが大切」とお伝えしました。

繰り返しになりますが、目的と目標が明確になって初めて、「何にどれだけ投資をするか」という、手段の話が有効になります。したがって、「何を買えばいい?」だけでは、聞かれる側としては、「何を答えたらいいのか・・・」と困惑してしまいます。

そして、もう1つ、違和感を覚えることがありました。

一般的なビジネスでは「売り値」を強く意識する

それは、「買うことだけしか意識していない」ということです。

一般的にビジネスとは、「売り値-買い値」の差額で収益をあげていく活動です。あえて乱暴に言いますが、流通業は「安く仕入れて高く売る」活動ですし、製造業は「原料を買ってきて、人の手を加えて付加価値をつけて高く売る」活動です。

企業の決算書類の損益計算書を見てください。ほとんどの場合、日本でも海外でも、損益計算書の一番上に書かれているのは売上高です。

ビジネスでは、売上高を最初に考えるためです。「この商品は1個1,000円で売れるから1個400円で仕入れよう」といった考え方をしているはずで、「売り値」に対して強い意識が働いています。

株投資では「売り値」を意識することが少ない

ところが、どういうわけか、株投資の話になると、「売り値」への意識がどこかにいってしまうことが多いように見受けられます。上の例で言えば、「この商品は1個いくらで売れるかよく分からないけど、1個400円で仕入れよう」といった感じです。

株投資も、収益をあげるという意味では、ビジネスと同じく、「安く買って、高く売る」活動のはずです。違いがあるとすれば、値上がり益のほかに、配当という別の収益形態があることくらいです。

多くの方は、「とりあえず手元の余裕資金があり、銀行の金利は低すぎるので、運用して増やしたい」ということで株投資などを始められるかと思います。

その考えは十分に理解できますが、「売り値」を考えずに株を買い付けてしまうと、おそらくうまくいきませんし、継続できません。

「売り値」から考える習慣をつけよう

そこで、株投資を考える時、ビジネスと同じように、「売り値」から考えてみることを意識してみてください。

そうは言っても、実際にどうやったらよいか分かりにくいと思うので、ヒントとなるようなアイデアをお伝えします。この先は、値上がり益を目指して株式を購入する場面と思ってください。

アイデア1. 投資をする時は目標株価を設定する

「値上がりしそう」というあいまいなものではなく、また、「2倍になる」といったような欲望に引きずられるようなものではなく、「2,000円になる」というように、具体的な数字で設定するようにします。

単に設定するだけでなく、株価収益率(PER)などを使って根拠を示すのも、「過去にその株価をつけたことがあるのか」などを調べてみるのもよいことです。

アイデア2. 目標株価だけでなく、投資期間も気にする

目標株価という価格だけでなく、「いつ頃までに」という意識はとても大切です。今の株価が1,000円で、目標株価を2,000円とした場合、「今月中に」では非現実的ですが、「1年以内に」としたら、現実味を帯びた設定になります。

別の言い方をすると、「1年間はこの株とおつきあいする」と意識づけることにもなります。

アイデア3. 次に買うのは誰か、思いを馳せてみる

いくらか背伸びはあっても、目標株価は現実味のある範囲で設定することがポイントです。現実味があるかどうかをチェックする1つの方法が、「目標株価で買ってくれる投資家を想像する」ことです。

上の例と同じく、今の株価が1,000円で、目標株価を2,000円とした場合を考えてみます。2,000円の株価が現実のものになるということは、将来、2,000円の株価で買う投資家が存在することを意味します。

その投資家は、一体どんな人なのでしょうか。値動きの大きい株を好む個人投資家でしょうか。または、1日あたりの取引額が大きくなり(流動性が高くなり)、機関投資家が買いつけてくるのでしょうか。

想像する段階では正解はありませんが、自分が買おうとする株が将来どうなっていくかを考えるためには、大切な視点です。

まとめ

「売り値」から考えるというのは、これから資金を投じようとしている投資先の将来の姿を想像することにつながります。

将来のことを想像することは、投資につきものの不確実性を下げることにもつながりますので、何か株を買おうとする際には、ぜひ思い出して実践してみてください。

【2015年12月17日 藤野 敬太】

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藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。