この記事の読みどころ

ふるさと納税制度普及の大きな要因は、お礼の品の存在にあります。

ふるさと納税は厳密には納税ではなく、自治体への寄付と税額控除がセットとなった制度です。

まだまだ普及が進むせっかくの制度なので、お礼の品を楽しむ以外の活用方法をご紹介します。

普及してきたふるさと納税

最近は、普通の会話の中にも、ふるさと納税のことが話題にあがるようになりました。金額の多い少ないはともかく、誰もができる手軽さがあります。

そして、何といっても「(実質負担額の)2,000円でこれだけのものがもらえた~」という、自治体からのお礼の品のお得感が受けているように思います。

総務省が1,788の全自治体(47都道府県と1,741市区町村)に対して行った「ふるさと納税に関する現況調査」の結果が、2015年10月に発表されました。

それによると、全国の受け入れ金額は、2014年度は1年間で389億円だったのに対し、2015年度は上期(4~9月)の半年だけで453億円に達しました。

参考:「ふるさと納税に関する現況調査」(総務省)

普及を後押ししているお礼の品の存在

普及が進んでいる要因として、全自治体の41%が「お礼の品の充実」をあげています。そして、すでに全自治体の84%がお礼の品を送付しているとのことです。「送付を予定、または送付検討中」の自治体を含めると、実に90%を超えてきます。

もはや、お礼の品はふるさと納税の必須アイテムとなっています。お礼の品を用意しないと、ふるさと納税を申し込んでもらえないという危機感が強まっているのでしょうか。魅力度を競うように、いろいろなタイプのお礼の品が登場しています。

ある自治体では、お礼の品をQUOカードや商品券にしたところ、「換金性が高い」という理由により総務省から注意を受けてしまったケースがありました(その後、そのお礼の品は中止・終了となってしまったようです)。

また、金額に応じてポイントを付与し、ギフトカタログのように好きな物を選べるというプログラムを用意する自治体も出てきました。

総務省の調査に対し、全自治体の16%が、「お礼の品の送付競争となっている現状を懸念する」、また、28%の自治体が、「(総務省の要請を受け)お礼の品の見直しをする予定」と回答しています。

お礼の品の盛り上がりは、どこかで歯止めがかかるのかもしれませんが、しばらくは今のような状況が続くように思われます。

政府は普及に躍起

政府には、地方活性化という大きな目的があります。そもそも、ふるさと納税の制度は、第1次安倍内閣だった2007年5月に、菅義偉総務大臣(現・官房長官)が創設を表明した制度です。

そのため、以下のように制度の内容を変えて、「もっとふるさと納税を使ってください」という方向に進んでいます。

  • 控除の枠の拡大(平成27年1月1日から適用)
  • ふるさと納税ワンストップ特例制度(平成27年4月1日以降):今までは確定申告が必要だったが、寄付先が5団体までなら確定申告不要
  • 企業版ふるさと納税の導入(検討中)

厳密には「納税」ではないふるさと納税

ふるさと納税は、そのネーミングのせいで、やや誤解を招いている部分があります。

ふるさと納税は、税金を納める行為ではありません。正しくは、自分で選んだ自治体に寄付をする行為であり、寄付した金額に応じて所得税と住民税の寄付金控除(税額控除)を受けるというものです。寄付と税金の控除がセットになった制度です。

「私は一体いくらまでふるさと納税できるの?」というテーマ。一番気になる話です。意地悪に答えると、「寄付なので、支払えるなら好きなだけどうぞ」となります。

上の質問は、厳密には「寄付金控除でどうしても負担しなくてはならない2,000円の範囲内で、いくらまで寄付できるの?」です。その金額を知るには、本来支払うべき税額(所得税・住民税)がいくらなのかを知る必要があります。

今は、多くのサイトで目安金額をシミュレーションできるようになりましたが、税額を計算するには、所得や基礎控除(扶養家族の人数)、他の控除(医療費や社会保険料など)の情報が必要となります。

お礼の品を楽しむ以外の活用のアイデア

政府が普及に躍起であることを考えると、当面、ふるさと納税の制度は続くと考えられます。そこで、お礼の品をあれこれ吟味して楽しむこと以外で、この制度を活用する方法を3点ほど考えてみました。

アイデア1. タックス・リテラシーを身につける

先に述べた通り、ふるさと納税は寄付と税金の控除のセットです。税金に密接に関係する仕組みですし、自分が支払う税額を計算できるようになると、寄付しても税額控除分をはみ出して税金が戻ってこないことなどは防ぐことができます。

資産運用する際には、税金のことを知っているかどうかでリターンが大きく違ってくることは、「外貨建てMMFを保有している投資家は特に必見―税制改正の投資リターンへの影響」でもお伝えしました。

資産運用に限らず、税金のことを知っていると得をすること(または、損をしないこと)は多くあります。タックス・リテラシーは人生を豊かにするのに必要なことです。

タックス・リテラシーを身につけるためにも、「自分はいったいいくら税金を払っているのか」という現状を知ることはとても大切です。そのためにも、できれば、ふるさと納税ワンストップ特例制度は使わずに、ご自身で確定申告をされることをお勧めします。

アイデア2. お子様とのコミュニケーションツールにする

お子様がいらっしゃる家庭なら、お礼の品を食べながら、その品がどうして届いたのかなどをお子様にお話するのはどうでしょうか。制度の仕組みを説明するのでも、その自治体を選んだ理由を話すのでもよいかと思います。

または、お礼の品をお子様と一緒に選ぶというのもありです。

アイデア3. お子様の教材として使う

2.の延長になりますが、「1万円分のふるさと納税をする自治体を選ぶ」ことをお子様に一任してみるというのはいかがでしょうか。

その際、「どうしてその自治体を選んだのか」の理由を、(親が納得できるように)きちんと説明させてみてください。そうすれば、考えをまとめるロジカルシンキングの練習にも、人前で自分の考えを伝えるプレゼンテーションの練習にもなります。

そして、自分で選んだものが手元に届く、という一種の成功体験は、子どもにとっては大きな刺激になります。

お子様が、メロンをお礼の品としている自治体を選んだとします。その時は、「メロンをお礼の品としている他の自治体と比べてみたか」を聞いてみてください。

そのようなやり取りを続けていくうちに、メロンの生育についてやたら詳しくなったり、メロンの産地比較に興味を持ったりするかもしれません。このように深掘りしていけば、夏休みの自由研究にも使えそうです。

親からすれば、子どもの教育は最大の投資行動です。お礼の品の一時の美味しい思いを楽しめる上に、教育上のリターンも得られるかもしれません。

まとめ

ふるさと納税は、議論の余地が残る制度かもしれません。仕組みも年々変わっていくかもしれません。しかし、せっかく存在する制度ですので、人生を豊かにするために活用したいものです。

藤野 敬太