2015年は世界景気の減速に翻弄された1年だった

電機セクターの代表的なセミマクロデータである世界半導体出荷額(3か月移動平均)は、7月が前年同期比▲1%、8月が同▲2%減、9月が同▲9%減とマイナス成長が続いています。

このことから、足元の業界環境は世界景気の減速傾向を受け軟化傾向にあることがご理解いただけると思います。

また、株価の方も、2015年初(1月5日終値)に対して、11月20日終値のTOPIX-17電機機器指数は+5%に留まり、TOPIXの+14%を大幅に下回っています。

ただし、個別株で見ると、村田製作所(6981)、カシオ計算機(6952)、ソニー(6758)、日本電産(6594)など、業界平均を大きく上回るパフォーマンスを確保している銘柄も見受けられます。

好調の理由はスマホ用セラミックコンデンサ、Gショック、スマホ用CMOSセンサーなど様々ですが、独自の競争力を背景にしていることが共通項です。

一方、市場平均を下回っている不振組は、シャープ(6753)、東芝(6502)など個別の経営問題を抱えた銘柄を除くと、多くが世界景気、とりわけ中国の景気減速に対する懸念が下落要因となっています。

2016年のメインシナリオ

筆者が、1年前の2014年12月時点で予測した2015年の電機株における株式投資テーマは、(1)電力小売り自由化を背景にしたスマートグリッド関連、(2)円安メリット、(3)IoT関連、の3点でした。

円安メリット以外は、2016年についても引き続き重要なテーマになると考えます。ただし、世界景気がこれ以上大きく減速しないことが条件です。

なお、過去のオリンピックイヤーには、年前半にオリンピック需要への過度な期待から仮需が発生し、後半は失速ということがありました。

しかしながら、オリンピック特需が期待されるかつての液晶テレビに相当するような大型製品が見当たらないため、こうしたリスクが顕在化する可能性は低いと考えらます。

2016年のサブシナリオ

2016年は、スマートグリッド関連、IoTに関連した銘柄に注目することがメインシナリオです。ただし、現時点では実現可能性は高くないと予想しますが、以下のようなサブシナリオも頭の片隅に入れておきたいと思います。

設備投資関連銘柄:政府から民間企業へ内部留保の有効活用に対する圧力が高まりそうです。また、法人税減税の議論も再び活発になっています。このため、設備投資関連銘柄が再び盛り上がる可能性も考えられます。

この場合は、NEC(6701)、富士通(6702)などのITサービス関連や、オムロン(6645)、三菱電機(6503)などのFA関連銘柄に注目が集まると思います。

また、政府は通信キャリアに対しても“儲け過ぎ批判”を展開していますので、通信料金の引き下げ要請以外にも、設備投資や研究開発投資の増加を具体的に求めてくる可能性もあるかもしれません。

仮にこうしたことが顕在化すれば、アンリツ(6754)などが大きく恩恵を受けると思います。

日本でもM&Aが活発化:NXPセミコンダクターズによるフリースケール・セミコンダクタの買収、サンディスクのウエスタンデジタルへの身売り、GEによるアルストムの買収など、海外では低成長下での生き残りのためにM&Aが活発化しています。

また、中国企業も、ハイテク産業を強化するという国策により欧米企業に食指を伸ばしている模様です。

日本では相変わらず「日の丸○○○」といった発想が強く、クロスボーダーM&Aに対するアレルギーが強いため、実現可能性はそれほど高くはないかもしれませんが、国内市場の成熟化や“ガイアツ”を考慮すると、国内勢同士の統合が活発化する可能性も完全には否定できません。

この場合、海外投資家から日本のハイテク業界が再び見直される可能性もあるでしょう。

新興国市場が再注目される:米利上げによる通貨安等の影響や、中国での過剰投資の反動などにより新興国市場に対する成長期待は大きく後退しています。

とはいえ、若年労働生産人口が多く、かつ増加している国が多いという実態が大きく変わったわけではありません。

いずれ資源・食料不足に対する懸念が顕在化する可能性は十分に残っているため、このことが再認識される条件が整えば、2015年に大きく売られた日立製作所(6501)などの中国・新興国関連銘柄(特にインフラ関連)が再び脚光を浴びる可能性もあるかもしれません。

※本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。

【2015年12月3日 投信1編集部】

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LIMO編集部