宝塚歌劇花組公演を観て、タカラヅカ次の100年をビジネス視点で考える

毎年2回の家族サービスの日が来た

筆者は、ここのところ毎年最低2、3回は東京宝塚劇場で宝塚歌劇団の公演を観ています。家族サービスの一環です。

普段から音楽、絵画、写真などに関心があり、1人で観に行きますが、さすがに観劇は自分の引き出しにはありませんでした。しかし、クレジットカード会社の貸切公演に年2回必ず応募し、夫婦で観にいくことが恒例化しています。

“ヅカファン”でなくても楽しい内容

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これまで通算10回以上は観ていますが、予習なく十分に楽しめます。東西古今の名作や話題作のエッセンスを2時間ほどでつかむことができるのもメリットです。さきほど家族サービスと言ってはみましたが、最近は気分転換にはうってつけだと感じます。

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貸切公演の場合、家族サービスと思われる男性も少なからずいらっしゃいます。通常公演の男性比率はおそらく1%くらいかと思いますが、貸切公演では5%以上になると思います。これは気恥ずかしさを薄める重要な要素の1つです。

メインは新源氏物語、光源氏役は花組トップスターの明日海りおさん

筆者はまだまだ素人で、5組(花・月・雪・星・宙組)プラス専科の構成や特色などまで理解できていません。ただ、今回の花組はみな歌が安定していて安心して観ることができました。

女性役の歌は普通に歌うのでまったく問題がありませんが、問題は男性役の歌です。セリフまわしと違和感がないような歌唱を求められ、さぞかし難しいと思います。

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ビジネスとしての宝塚歌劇

宝塚歌劇は阪急電鉄の一部門であり、その業績は阪急阪神ホールディングス(9042)のエンタテイメント・コミュニケーション事業に含まれています。

この事業は2014年実績の営業収益が1,126億円、営業利益が150億円、2015年度の会社予想はそれぞれ1,083億円、127億円です。ちなみにこのセグメントには阪神タイガースなども含まれているため、宝塚歌劇の業績は推測で語らせていただきます。

しかし無粋を承知で宝塚、東京の2つのメイン会場の稼働状況と客席数、客席単価などを計算すると、収入はおそらく100億円を優に超えるのではないかと試算されます。固定費のウエイトが高いため、現時点ではかなり収益が出ていることでしょう。エンタテイメント・コミュニケーション事業の中では収益の柱と見て間違いないと思います。

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宝塚の次の100年を素人なりに考える

宝塚歌劇は今年101年目に入るという長い歴史を誇り、しかもこれだけの収益部門に育っています。そこで筆者なりに今後の展開について語ってみたいと思います。

タカラヅカの良さは、ファンがスターの成長を見届けるシステムが完成していて、ファンの定着率が高いことでしょう。また、劇場に入ればほぼ女性だけで夢の世界が繰り広げられることも魅力的です。こうした長所を損なうことなくどう進化していくのでしょうか。

筆者は3つの点に注目しています。

第1に、勝ち残る人材への成果報酬をどう高めることができるかです。夢を売る商売とはいえ、例えば同じ事業に属する野球と比べて待遇面での改善の余地はあると思われます。

阪神阪急は収益拡大のため1日2公演をかなりの頻度で実施しています。年間を通じて休みが少なく、こなすステージ数がかなりの数になります。息つく暇がないのがスターの実生活に違いありません。野球であれば、公式戦は365日の半分程度、ほぼ1日1試合ですみますから、宝塚の負荷が想像できるでしょう。

今後、宝塚といえども少子化の影響は避けられないでしょう。待遇向上策をある程度オープンにして、人材を確保していく必要性がでてくると想像します。

第2に、劇場の稼働率です。今の陣容で1日2公演をしているので、フル操業状態と言えるはずです。ここからさらに収益を上げるとなると、現状の体制では単価引き上げか、チケット外収入の底上げが必要になりますが、さてどうでしょうか。もう少し抜本的な成長戦略が必要ではないでしょうか。

第3に、顧客層の拡大です。「女性による女性のためのファンタジー」という基本線を堅持しつつ、男性の集客を高めるか、あるいは海外に向けて需要の喚起を進めるか、具体的に検討する時期ではないかと考えます。

今の東京の劇場はほぼ満席で気軽に立ち寄って観劇する状況ではありません。一方、宝塚の育成システムは7、8年目くらいでぐっと絞り込みが行われると聞きます。

筆者は、鍛えた人材をもっとうまく活用して、新たな活躍の場を設けることはできないかと思います。スター候補に残れなくても、優秀な人材で、例えば1時間くらいで短い劇とショーを行うような別働隊を組んで1日2公演を新しい器で(東京で)行う、ここに男性やインバウンドの旅行者も気軽に立ち寄れるようにする、そして新しい客層に何がアピールするのかさまざまな実験を行う、というのはいかがでしょうか。

いまの宝塚の運営は、キャッシュカウの色彩が少し強いかなと案じています。次の100年のために、さまざまな新しい挑戦をする、そのための先行投資を阪急阪神ホールディングスには希望したいと思います。

最後に、阪神タイガース、もっとしっかり利益を出しましょう。

【2015年12月8日 椎名 則夫】

■参考記事■

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椎名  則夫

早稲田大学政治経済学部を卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。証券運用と法人融資に携わる。
シカゴ大学MBA取得。フィデリティ投信に入社、中小型株全般、医薬品・ヘルスケア、保険、通信、インターネットの企業調査に従事。その後モルガンスタンレー証券にて株・クレジットのリスク管理業務を行う。
日本証券アナリスト協会検定会員、CFA。