そもそも「新興国経済の減速」で不利益をこうむるのは誰?

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毎週のようにメディアで目にする「新興国経済の減速」というフレーズだが・・・

2013年5月のいわゆるバーナンキ・ショック以来、定期的に新興国経済の減速が話題に上がるようになりました。

バーナンキ・ショック自体は米連邦準備理事会(FRB)が市場との対話を誤ったために生じたと言えます。つまり、市場参加者が予期せぬ米国の利上げによって新興国からの資金引き上げが起こるかもしれないリスク等について十分な分析を行う時間がない中で見通しを立てて売買を行うことになり、市場に混乱が起こってしまったものです。

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また、時を同じくして中国経済の減速(減速している割にはGDPが7%くらい成長していますが)や資源価格の下落も進行し、だいたいの新興国はなにかしらの減速バイアスにひっかかってしまうのでは、というのがここ2年半ほどのコンセンサスになってきました。

なにかしらの減速バイアスとは、1)米国の利上げにより投資資金が新興国から引き上げられて米国に向かってしまう、2)それによる新興国通貨安(対ドル)によって新興国のドル建て債務が現地通貨建てで見ると膨張してしまう、3)中国経済の減速による輸出の不振、4)資源価格の下落によって新興国の中でも資源国は打撃を受ける、というものです。

これらのどれにも当てはまらない新興国は多くないため「新興国経済が減速している」ということになるのだと思います。

新興国経済の状況は本当に深刻なのか

確かに、新興国通貨はここ数年対ドルで下落しています(ただし先進国通貨も同様)。また、GDP成長率も下落傾向にあることが多いです(これも先進国経済も同様)。

しかし新興国に出張した際に、現地の方に「資源価格の下落とか中国経済の減速とかあるけど大丈夫?」と聞くと、だいたい「え? 今も毎年良くなってるよ」と言われることがほとんどです。もし経済にそこそこ敏感な新興国出身の知人がいれば試してみてください。

私たち日本人は、子供のころに学校で勉強しすぎたせいか経済成長の2次微分(成長率の成長率)を無意識に見るようになってしまっていますが、単純に経済成長率を見ると多くの新興国の経済は現在も普通にプラス成長であることが分かります。

新興国経済の減速の影響をもろに受けるのは外貨投資家のみ?

「経済成長の2次微分を無意識に見てしまっている」は半分冗談ですが、では実際に現在の経済/市場のトレンドで不利益をこうむりそうな人は誰でしょう。

新興国と経済的な接点を持っている人といえば、新興国で実業を展開している人、新興国の株式や債券(以下、まとめて投資信託)、不動産、FXおよび外貨預金等への投資を行っている人などがぱっと思いつきます。

新興国の市場はたいてい日本などの先進国ではコモディティ化して飽和している市場でも参入機会がまだいくらでもあることが多いので、多少の経済の波を考えるより、中小期のスパンでの市場の成長を考えることがほとんどです。

たとえば、1990年代のラテンアメリカのように内戦が起きるような治安状況にでもならなければ事業リスクはそれほど大きくないと言えます。このことは、新興国で実業を展開している方はご自身が一番ご存知だと思います。

また、新興国で不動産投資やベンチャー投資を行っている方も、そもそもの投資対象資産のリスクが大きいため、それほど為替レートの動向を血眼になって見ているという印象はありません。

むしろ、現時点での典型的なトレンド(現地通貨の対ドルでの為替レートの下落)自体よりは、好況期と同様に中長期的なスパン(投資対象資産に本源的な価値があるか、投資対象国の市場は有望なのか)の方に関心があるように見受けられます。

ということで、2016年1月現在で新興国経済の減速を心配している人は、ほとんどが新興国通貨建ての投資信託、個人向け社債や外貨預金に投資を行っている人だと思います。

日本人は景気の波に敏感になりすぎる傾向あり

日本語で書かれた記事やブログなどでは、2016年の世界経済/市場はダウンサイドリスクに気をつけ続けるべきという論調が多くなってきています。

「ITバブル崩壊やリーマンショックを忘れるな」。私はこのフレーズを日本の方以外からはほぼ聞いたことがありません。

リーマンショックの影響が日本よりも大きかったはずの欧米でも、投資家は日本より早くからフィンテック等の新たな分野への投資をアグレッシブに拡大し、イギリスで個人や法人の不動産投資がリーマンショック前なみに盛んになっているのはご存知の方も多いかと思います。

一般にもよく言われるそうですが、私も以前ブラジルの弁護士の方に「欧米の企業は不況期にブラジルに参入してきて中長期的にローカルの事業を拡大するのに、日本の企業は好況期に参入して不況期に撤退するのを繰り返す」と言われました。

ベンチャー投資でも、リーマンショック後に投資額が増加トレンドに入るのに最も時間がかかったのは主要国の中では日本と言われます。また、残念ながら日本ではいまだに失敗を恐れる文化からか、中長期的な本源的価値を考慮せずに短期、中期的な景気の波を見て種々の判断を行う傾向が他の国と比べて圧倒的に強いと感じています。

新興国通貨の為替リスクを取っている、これから取る人は現状どう考えるべきか?

とはいえ、既に新興国通貨建ての投資信託を購入して最近の通貨安で塩漬けになっている方、これから新興国通貨建ての投資信託を購入すべきか悩んでいる方にとってはそんな一般論は役に立ちません。

そういった方々がどういう投資戦略(や考えの持ちよう)を持てばよいか、現在それなりの通貨安に見舞われているブラジル・レアル、トルコ・リラ、南アフリカ・ランド等への投資について次回はひとつの切り口をご紹介しようと思います!

【2016年1月19日 クラウドクレジット】

■参考記事■

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>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

クラウドクレジット

世界の資金需要者と個人投資家をつなぐ金融プラットフォームをつくるフィンテック企業として2013年1月に設立。
2014年6月から投資型クラウドファンディング・サービス「クラウドクレジット」を提供。当初はラテンアメリカのペルーに投資を行うファンドを提供し、2015年からはフィンランドやスペインをはじめとする欧州諸国の個人向けローンに投資を行う。
2016年はアジア、アフリカ諸国での投融資を開始し、2017年に五大陸で投融資を行うプラットフォームになる予定。