株価が下がるとほっとする人がいる? 相続・事業承継対策に関連する銘柄とは

この記事の読みどころ

株価が大きく下がると心配する人も多いですが、世の中にはあまり株価が上がってほしくない人も存在します。

相続対策や事業承継を検討している人たちにとっては、急激な株価上昇は必ずしも好ましいことではありません。

相続対策や事業承継に対する需要が堅調なのであれば、そうしたソリューションを提供する銘柄への投資は一考に値します。

株式市場が大幅下落した日の街頭インタビュー

2016年の取引初日(大発会)の日経平均株価指数は、前年末終値比583円安(▲3%)と大幅に下落し、株式市場は波乱の幕開けとなりました。

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米国株式市場が軟調だった流れに、サウジアラビアとイランの国交断絶という、地政学的リスクを意識させるニュースが加わりました。さらに、日本市場に遅れて始まった中国の株式市場で、サーキットブレーカーが発動されるほどの下落となったことが、追い打ちをかけた形となりました。

証券市場の関係者も、お屠蘇気分が一気に吹き飛んだのではないでしょうか。

このような日のテレビのニュースでは、証券会社の店舗前での街頭インタビューの様子が放映されます。お決まりの構図です。インタビューを受ける方のコメントは、「心配だ」、「我慢するしかない」といったような内容がほとんどです。

こうしたコメントは、「株価が上がれば(持ち株の評価が上がるから)善、下がれば(持ち株の評価が下がるから)悪」というポジションを前提としたものであることを忘れてはいけません。

株価が下がることでほっとする人もいる

一方で、なかなか表には出てきませんが、株価が下がることでほっとする人たちもいます。

そのように言うと、「株価が下がれば儲かるようなポジションをとっている一部のヘッジファンド」や、「信用取引で売りから入っている人たち」のことが頭をよぎるかもしれませんが、ここではこの人たちのことは横においておきます。

今回取り上げたいのは、「相続対策や事業承継を検討している人たち」です。

相続対策に直面する人たちの悩み

最近、ニュース等で、相続対策に関して取り上げられる機会が増えてきました。金融機関の広告でも、相続対策について触れられているものを目にすることが多くなりました。

団塊の世代の人たちがビジネスの一線から退く時期にさしかかっていることも影響しているかと思います。また、政府も相続税を上げようとする方向に進んでいますので、関心はますます強まっています。

最近の政府の施策を見ると、その方針は単純明快で、年齢層が上の世代に偏在・滞留している金融資産を何とかして動かしたい、ということにつきます。

たとえば、相続税率を引き上げる一方で、贈与税率は引き下げました。また、教育や住宅資金の贈与の控除枠を拡大しました。お金を握りしめて死ぬのではなく、生きているうちに使う、または若い世代に移転することを推奨しているように見てとれます。

一方、資産を保有している側に目を移してみます。すると、資産の大半が不動産や自分で営む会社の株式(以下、自社株式)というケースが多く見られます。資産としては存在するけど、現預金が少なくて、いざ相続税を払うとなったら不動産や会社を売らざるをえないということが考えられます。

不動産や自社株式は流動性が低い資産なので、売ろうとしてもすぐには売れませんし、売り急ぐと予想より安い価格になってしまいます。そこで、生前より相続対策をしておこうという話になります。

不動産の適正価格も分かりにくいですが、自社株式にいたっては、たいていは未上場のため、市場での取引価格がありません。「自分の会社がどのくらいの価格で評価されるのか分からない」という問題に直面します。

相続対策は、とかく「誰にどのように分けるか」ということに目が向けられますが、それ以前に、「一体どのくらいの資産価値があるのか」という問題が必ずつきまといます。

株式市場の株価が上がると自社株式の株価も上がってしまう

生前に相続対策をしておこうとする人たち、特に自分で事業を営んでいて、子に事業承継しようという人たちにとって、相続税法上の自社株式の株価の算出は、とても大きな問題です。支払う相続税または贈与税を抑えたいとすれば、相続税法上の株価は低い方が良いということになります。

自社株式の株価を算出するいくつかの方法のうち、最もよく使われるのが、「類似業種比準価額方式」と呼ばれる方法です。

これは、自社の事業内容と類似する上場企業の株価をもとに評価する方法です。上場企業の株価をもとに算出するため、世の中の株価が上がれば、自社株式の価格も上がってしまいます。自分の子などにこれから事業を承継しようとする人たちにとっては、株価上昇は必ずしもありがたいことではありません。

ちなみに、会社を自分の子などに承継するか、それとも外部に売却するかを迷われている人たちにとっては、結論が前者なら株価は下がった方が良いですし、後者なら株価は上がった方が良いですので、方針が定まらないと悩ましい状況になってしまいます。

2016年の株価がどうなるかの見方はいろいろありますが、現時点では急ピッチで一方的に株価が上昇する可能性は高くないと思われます。そのため、急激な株価上昇を見込んで事業承継を急ぐという需要は減るかもしれません。

ただ、もともと事業承継は、年単位の時間をかけて丁寧に行われるべきものです。株価が一定のレンジ内で推移するうちに、じっくりと事業承継の準備をするという需要も根強いように思われます。

個別銘柄へのインプリケーション

事業承継または相続対策の準備をするという需要が今後も根強く推移するのであれば、そのようなソリューションを提供する銘柄への投資は一考に値します。

すでに株価が大きく上昇している日本M&Aセンター(2127)が下がらない理由も、こうした根強い需要にあると考えることができます。また、事業承継案件に関連するM&Aを仲介するM&Aキャピタルパートナーズ(6080)、富裕層に運用や相続のコンサルティングを行う青山財産ネットワークス(8929)も、関連銘柄と言えそうです。

注意点としては、これらの銘柄は、需要が旺盛であっても、コンサルタントの採用・育成という供給面でのミスマッチが起きると、業績に悪影響をおよぼすタイミングがありうるということがあげられます。

【2016年1月6日 藤野 敬太】

■参考記事■

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藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。