この記事の読みどころ

トヨタが国内の全ての組立工場を1週間停止することになりました。愛知製鋼の工場爆発事故により部品供給が滞るからです。自動車は部品1つでも欠けると生産できません。

現在は増産期なので、1週間の生産停止は痛手となります。ただ、もし、消費再増税の駆け込み需要が出る来年の今頃に起きれば、もっと深刻な影響が出るでしょう。

トヨタは何度もこういう問題に直面していますから、その対処にも“カイゼン”の跡を伺うことができます。

トヨタが1週間の工場稼働停止を発表

2016年2月1日、トヨタ自動車(7203)は「工場稼働に関するお知らせ」と題した短いリリースを発表しました。

そこには、

『トヨタ自動車は、本年1月8日(金)に、愛知製鋼株式会社知多工場で発生した事故の影響による部品の供給状況等から、2月8日(月)~2月13日(土)の間、国内における完成車組み立てラインの稼働を全て停止することといたしましたので、お知らせいたします。稼働再開は2月15日(月)を予定しております。なお、海外における完成車組み立てラインの稼働は継続いたします。(以下略)』

とありました。

自動車の生産ラインは部品1つでも欠けると停止する

簡単に言うと、“愛知製鋼(5482)が工場災害のトラブルで部品が供給できなくなったので、(それを使用している)トヨタが国内にある全ての組立工場を1週間停止する”ということです。

自動車は1台当たり約2万点の部品を使いますが(注:車種によってかなり違います)、部品1つでも欠けると生産できません。こうした事象は、過去何度も起きています。部品メーカーの工場が火災になったり、台風や大雪で部品が工場に届かなかったり等、様々なケースがありました。

東日本大震災の時には、丸々1か月近く停止したのは記憶に新しいところです。これは、もう“仕方ない”と考えるしかありません。

増産期に1週間の生産ライン停止による影響は大きい

この1週間は国内の生産台数がゼロになります。これは、トヨタだけでなく、他の部品メーカーにもかなり大きな影響が出ます。

トヨタが1週間工場を停止するということは、部品メーカーも1週間停止することを意味するからです。ただし、実際にはトヨタ以外にも納入したり、海外向けも生産したりするので、完全に停止することはありません。

毎年1~3月(特に3月)は、年度末需要に対処するための増産期になります。残業、休日稼働は当たり前のように実施されています。

今回のトヨタの操業停止は、国内販売にとって大きな痛手ですが、新型「プリウス」等の一部車種を除くと、“商機を逸して大変だ”のような悲痛な叫びはあまり聞こえてこない感じがします。消費増税後に不振に陥った新車販売の回復が遅れていることが、背景にあるからと推察されます。

来年の今頃は、消費再増税に伴う駆け込み需要が発生しているはず

しかし、もし、今回のような事態が来年(2017年)の今頃に起きたら、一大事どころでは済まないでしょう。

来年の今頃は、消費再増税(8%→10%へ)に伴って発生すると思われる駆け込み需要に対応すべく、例年以上の増産が予想されます。そのような時に、1週間も生産ラインが止まったら、販売店では死活問題になりかねません。

部品供給トラブルへの対処にも“カイゼン”の跡

さて、今回の部品供給の滞りですが、1点気になったことがあります。愛知製鋼の工場が爆発事故を起こしたのは1月8日ですが、生産ラインが止まるのは2月8日からです。

トヨタ生産方式の詳細な説明は省略しますが、「ジャスト・イン・タイム」の考え方に基づき、必要以上の在庫を持たないことが大きな柱です。今回、問題となったのは特殊鋼部品(エンジン等に使用)なので、通常の部品よりは在庫を長く持っていると考えられますが、それでも、1か月分の在庫があったとは考え難いです。

おそらく、工場爆発事故により部品供給不足が避けられないため、当該工場の復旧支援や、他社への代替生産依頼を中心に、様々な手を尽くしたと推測されます。

トヨタは何度もこうした部品供給の問題に直面しているので、対応策が整っているような印象を受けました。また、来年に予想される駆け込み需要対応の増産に向けて、改めて良い教訓になったとも言えます。

LIMO編集部