団塊世代の静かな楽器演奏ブームをヤマハの決算資料で検証してみた

大衆週刊誌に「シニアの楽器入門」特集、アンチエイジング効果への言及も

あるメジャーな週刊誌の特集として「シニアの楽器入門」が掲載されました。この手の週刊誌は目の毒なので筆者はめったに買わないのですが、このタイトルを見て思わず買ってしまいました。

記事は記者(57歳)がヤマハ音楽教室でアルトサックスの3回レッスンを受けて、チャーリー・パーカーばりの気分に浸ったエピソードから始まります。

そして、プロゴルファーの奥田靖己プロ(55歳)のギター経験2年の話、自民党細田博之・元官房長官(71歳)の独学ピアノ談、アンチエイジング研究の権威である医師によるフルートが終末医療に与える効果などが紹介されています。

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また、新橋の歌声酒場ならぬ“楽器居酒屋”でオヤジたちが楽器ではしゃぐ様も報じられています。

何が彼らをそうさせているのか

何でこんな雑誌特集が組まれるのか、筆者自身も昨年から数十年ぶりに始めたトランペットに我を忘れている精神状態を客観的に考えてみました。

あの曲を吹いてみたい、できればルイ・アームストロングみたいに吹きたい、居酒屋で皆の前で目立ちたい、カッコ良くなりたい、頭の切り替えができて生活にメリハリがつく、娘に注目されたい・・・。

こうした様々な理由が考えられますが、つまるところ“ボケ防止”に効果があるらしく思います。それを意識して楽器を演奏する方はいないと思われますが、細かな音符をたどり、しかも♯、♭がついたりする楽譜を追うのを繰り返すことで頭の体操になるということかもしれません。

筆者も中学、高校の6年間、受験勉強をほったらかしにして演奏に打ち込みましたが、その時と比べて大きく違うのは、読んだ音符が指に伝わるスピードが格段に落ちていることです。しかし、シニアになっても訓練である程度リカバーできると信じています。

シニアの楽器人口は増えている様子―高価な楽器に需要?

難しいことはともかく、暇があるときは御茶ノ水、銀座の楽器店に足を運び、店員さんとアレコレ話すのもひとつの楽しみとなっています。

店には筆者と同じ年代のオジサンが結構、うろついています。また、音楽教室でも5年前あたりからリタイアしたサラリーマン風の方々の入会が増えているそうです。

何といっても今のシニアは全金融資産の60%以上を保有しているという統計もあります。ある化学企業の役員は定年後に高額な金管楽器を買ったと筆者に漏らしました。

必ずしも楽器の高い安いが上手下手と比例するわけではないのですが、バイオリンのように明らかに比例するものもあります。政府がシニアに楽器購入に伴う減税措置でも打ち出せば、600兆円GDP構想より景気刺激には効果的かもしれません。

日本にも世界一流のメーカーが存在する

楽器は今でも欧米製が一流品だという評判が一般的です。確かに、ピアノのスタインウェイ、アコースティック・ギターのギブソン、木管楽器のビュッフェ・クランポン、トランペットのバック等々、皆、欧米製です。

しかし、日本メーカーにもフルートのムラマツ、電子ピアノやグランドピアノのヤマハがあります。また、トランペットなどの金管楽器でもヤマハの名声は世界トップクラスにのし上がっています。

各社ではこれから海外への拡大と同時に、欧米のブランドメーカーのM&Aも活発化するかもしれません。

筆者のトランペットはスペイン製ですが、次回はヤマハ製に買い替えようかとも考えています。

楽器ブームをヤマハの決算資料からひも解いてみると

楽器の総合メーカーであるヤマハ(7951)の直近決算である2016年3月期の中間決算資料を見ることで、これまでのストーリーを検証してみましょう。

中間決算の営業利益は212.3億円と、好調だった2008年3月期の中間決算並に回復しています。この営業利益のうち78.8%を楽器事業が占め、同社の屋台骨となっています。ちなみに楽器事業の営業利益は前年同期比+18.4%増益でした。

楽器事業の中身は電子ピアノ、管楽器、ギターが前年同期比2桁成長、ピアノも堅調だったようです。販売地域では中国の伸びがトップで、北米も好調でした。そういえば銀座のヤマハに行った時には中国系のお客さんが多かった印象です。

中間決算の営業利益は期初予想を上回ったので、同社は通期業績予想を上方修正しています。

楽器事業の通期営業利益予想は同+13.5%を予想しています。通期予想ベースでの楽器別売上高の伸長率は、管楽器がトップ、弦楽器・打楽器が2桁の伸びを予想しています。

また、ここでは楽器に焦点を当てましたが、黒字転換が見込まれる半導体などの電子部品事業、音響機器事業などの事業も堅調で、大きな収益貢献が見込まれています。

人口減少が避けられない日本で、シニアが最後の踏ん張りを見せるのがこの楽器特需かもしれません。

【2016年1月22日 石原 耕一】

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石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。