実績は上振れたが決算後の株価は前日比大幅下落に

2016年1月20日(現地時間)、米IBMは2015年12月期Q4(10-12月期)決算を発表しました。実績は市場コンセンサスに対して上振れでしたが、発表後の20日の株価は前日比▲4.9%安となり、昨年来安値を更新しました。52週間高値に対しても▲31%の下落となっており、S&P500指数の▲13%に対して大きく見劣りします。

今回は、なぜアメリカを代表するIT企業大手のIBMの株価がここまで冴えないのか、また、実績が上振れたにもかかわらず、なぜ決算後の株価が下落したのかを、決算を読み解く中で解説したいと思います。

理由1:15四半期連続の減収決算が嫌気

第1の理由は、今回の決算でも売上の減少に歯止めがかからなかったことです。Q4の売上高は、ハードウエアのみならずサービスやソフトウエアも減収となり、対前年比で▲9%減でした。為替の影響を除いても▲2%減です。これで、IBMの四半期売上高は15四半期連続で減少したことになります。

会社側はアナリティクス、クラウド、セキュリティなど戦略分野は前年比+26%増と高い伸びを示し、全社売上の35%(2年前は22%)である点を強調しましたが、レガシー分野の落ち込みをカバーしきれていなかったため、ポジティブに評価はされなかったようです。

理由2:稼ぎ頭のソフトが減収、減益に

IBMはサーバーをレノボに、半導体をグローバルファウンドリ―ズに売却する一方で、ビッグデータ解析、人工知能などノンハード分野を強化中です。こうした戦略を進めることで、ソフトウエアセグメントが高い伸びを示すことが期待されていました。しかし、実績は売上高、セグメント利益ともに四半期、通期ともに減収・減益に留まりました。

2015年12月期通期のソフトウエアの全社に対する構成比は、売上高では32%に過ぎませんが、利益(税引前利益)では57%を占め最大の稼ぎ頭です。ここが伸びていないことが、投資家が強気になれない一因であると推察されます。

理由3:ドル高影響

決算で発表された2016年12月期の特別項目を除く1株当たり利益(EPS)ガイダンスは、13.5ドルと市場コンセンサスの15ドルを下回り、2014年12月期実績14.9ドルも下回る見込みとされました。会社側では、ドル高影響は前年度よりも大きくなるとコメントしており、このことが冴えないガイダンスの一因であると推定されます。

日本企業へのインプリケーション

日本企業の決算も来週から本格化しますが、株式市場の関心事は2016年3月期通期見通しだけではなく、2017年3月期にも向かうと思われます。

日立製作所(6501)、NEC(6701)、富士通(6702)、NTTデータ(9613)などの日本のIT企業に対しても、戦略分野がレガシー分野をカバーして伸びていくのかが問われるでしょう。また、足元ではやや円高方向に向かっているため、為替変動が足を引っ張らないかも注目すべきポイントになるとと思われます。

参考:米IBMの過去5年間の株価推移
【2016年1月21日 投信1編集部】

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LIMO編集部