2016年の中国の景況感をアジアのエチレン市況から読み解く

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この記事の読みどころ

化学の“コメ”と言われ、種々の有機化学製品の原料となるエチレンのアジア市況の動向から中国の景況感を読み解いてみます。

年初から春節(旧正月)までの時期のエチレン市況の動向が、その年の中国およびアジア全域の景況感を示唆する傾向にあります。

その意味では2016年初のエチレン市況は弱く、中国、アジア全域での経済停滞が長引く可能性があるかもしれません。

エチレン市況と中国の景況感の関係

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筆者が化学業界の駆け出しアナリストの頃、ある大手化学会社のIR担当者に次のような質問をしたことがあります。化学産業の“コメ”と言われ、種々の有機化学製品の原料となるエチレン市況を予想する方法はあるのですかと。

その担当者が若い私に教えてくれたのは、年初の1月から2月の春節(旧正月)に向けた時期にエチレン市況が強ければ、その年は間違いなく経済が活況、逆に2月に向けて軟化するようならば、その年の景気は良くないということです。

本稿では過去7年の市況を振り返り、今年の中国、アジアの経済を予想してみました。なお、2000年以降のアジア化学品市場はそれまでの日本、韓国、台湾主導から、中国主導の市場構造に変化してきました。したがって、ここで述べるアジアのエチレン市況は、中国の景況感をかなり反映していることを、前提としてご理解願いたいと思います。

エチレン市況は過去7年で5回強く、2010年と2016年は弱かった

下図は2010年以降のアジアのエチレン市況(ドル/トン、月次)を見たものです。各年の1月から2月にかけてのエチレン市況の変動を調べてみると、この7年で1月から2月にかけて市況が上昇したのが5回、下がったのが2010年と2016年の2回という結果でした。

この時期は2月の春節の前哨戦的な期間で、中国本土のみならず、台湾、東南アジアの華僑も一斉に旧正月を祝う行事に突入します。当然、帰郷となれば大量のお土産を買い込み、消費が盛り上がります。結果として一般消費財に直結するプラスチック、合成繊維衣料品などの需要が増え市況も上がります。

しかし、今年はその盛り上がりもなく、年初からのエチレン市況は低水準で推移しています。

2010

経験則では年間を通じて景況感は改善しないというサインと見る

2016年の中国の実質GDP見通しは、2015年の+6.9%に引き続き、6%台の低空飛行が続くと予想されています。中国人観光客の日本での爆買いは続いているようですが、平均単価が下がっているというデータも出ており、節約モードに入っているようにも見えます。

経験的には年初のエチレン市況の弱さは、1年を通じて中国の景況感が改善しないことを示唆しています。中国経済がアジア地域全体に与える影響が大きいだけに、日本を含めたアジア全域での通年の経済停滞の可能性を否定するのは難しいかもしれません。

【2016年2月22日 石原 耕一】

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石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。