新興国への投融資を考えているならば、今後携帯電話会社からは目が離せません。携帯電話会社は新興国金融の様相を一変させようとしています。

これから経済発展が期待される新興国において、今まで貧困層の資金需要を満たしてきたのは主にマイクロファイナンス機関でした。マイクロファイナンス機関は、従来型の銀行がサービスの対象としてこなかった貧困層に小口で資金を貸し出し、彼等の生活を支えたり、小さなビジネスを始めたりするのをサポートしてきました。

バングラデシュのムハマド・ユヌス氏がグラミン銀行というマイクロファイナンス機関を立ち上げ、主に貧困層に融資して高い返済率を達成した功績を評価され、2006年にノーベル平和賞を受賞したことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。

マイクロファイナンスの問題点

しかし、マイクロファイナンスには一つ大きな問題点があります。それは利率が高い、ということです。世界銀行傘下のCGAP(Consultative Group to Assist the Poor)によると、世界全体でマイクロファイナンス機関の利子率は年率20%代後半となっています(2011年時点)。中には年率100%を越える利子率で貸し出しを行っていたマイクロファイナンス機関もあり、物議を醸しました。

マイクロファイナンス機関の利率が高い大きな理由は、オペレーションコストが高いということです。新興国の貧困層はインフラが整っていない山岳部や都市部から遠く離れた農村部に住んでいる場合も多く、彼等の家一軒一軒をバイクで回って資金を回収したり、融資案件を発掘したりするのには大きなコストがかかります。そのため、必然的にコストが利率に跳ね返り、利率が高くなってしまいます。

解決策は携帯電話と電子マネー?

しかし、近年この問題を解決できる可能性を持った技術的なソリューションが登場してきました。携帯電話と電子マネーです。携帯電話を通じて電子マネーで融資できたり、借入金の返済ができるとなると、オペレーションコストが大きく下がり、利率を下げることができます。

たとえば、フィリピンの地方銀行であるGreen Bankは、携帯電話会社Globeが提供する電子マネー、GCashでの返済を始め、債権回収にかかるコストを減らしたことで、利子の引き下げに成功しました。

このように、携帯電話を上手く使えば、都市部から遠く離れた山岳部や農村地帯に住んでいる貧困層も低い利率で融資を受けることが可能になります。こうして、今後は携帯電話会社が貧困層への融資の中核を担っていく可能性も大いにあるのです。

課題は規制

こうした状況の下で課題となるのは規制です。携帯電話会社が金融業も営むとなれば、規制の見直しも必要になってきます。サービス利用者を保護しつつも、この新しいトレンドに歯止めをかけないような適切な規制が求められています。

例えばケニアでは、M-PESAというモバイル送金サービスが立ち上がった際、中央銀行がサービス提供者であるSafaricom(Vodafoneの子会社)に厳しい規制をかけず、成り行きを見守り、新たな規制の制定を先送りしたことがM-PESAの成功を後押ししました。

適切な規制が整備され、携帯電話を通じた金融サービス「モバイルバンキング」が盛んになれば、新興国の資金需要はさらに増す可能性があります。新興国に住む携帯電話保有者全員が融資の対象になる可能性があるからです。

ちなみに、新興国における携帯電話保有率はインドネシアで125%、カンボジアで133%、スリランカで95%、バングラデシュやインドでも70%超(全て2013年)と、非常に高くなっています。

このように、新興国の貧困層の資金需要を満たすために、携帯電話会社は資金を必要とするようになります。このようなトレンドを鑑みれば、クラウドファンディング等を通じた投融資先として新興国の携帯電話会社は魅力的になってくるでしょう。

新興国の携帯電話会社に投資することで、高いリターンを期待でき、同時に貧困層への融資を支え、社会的なインパクトも期待できる可能性があるのです。

参考文献:

Microcredit Interest Rates and Their Determinants 2004-2011

Microfinance and Mobile Banking: The Story So Far

Mobile Payments Go Viral M-PESA in Kenya

世界情報通信事情:携帯電話事情

【2016年2月16日 クラウドクレジット】

■参考記事■

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