アナリストが気づいた3つのポイント

セブン&アイ・ホールディングスの母体であるイトーヨーカ堂の1号店の閉鎖が発表されました。同社の採算改善への取り組みを示す象徴的な事例と言えます。

1号店は開店から51年経ち、周辺環境への対応に限界がきています。英断だと思います。

跡地の活用法も、同社の今後の戦略を読むうえで大変重要です。閉店後も目が離せません。

驚きのイトーヨーカドー1号店閉店

セブン&アイ・ホールディングス(3382)は、2016年3月9日に成長戦略説明会を投資家・アナリスト向けに開催しました。2月決算ですので4月上旬には本決算の発表があるにもかかわらず、緊急の開催でした。

ここでイトーヨーカ堂の収益改革が語られ、食品事業で収益が芳しくない店舗は閉鎖するとされました。2020年度までに40店舗が閉鎖対象になると以前から言われていましたが、2016年度にその半分にあたる20店舗が閉鎖されることになりました。

イトーヨーカ堂の1号店はイトーヨーカドー千住店として開店して51年、ザ・プライス千住店に生まれ変わって6年になります。ザ・プライスはイトーヨーカドーをよりディスカウント形態に進化させた業態です。

調べてみると、この店舗が2016年4月10日に閉店になると発表されました

これは筆者にとってかなりの驚きでした。筆者はこのお店に行ったことがあります。何しろ記念すべき1号店ですし、訪問時には食品売り場は活気が感じられたからです。23区内の店舗が閉鎖になることも驚きでした。

なぜ今、閉店なのか

これには3つの要因があると思います。

1つ目は、イトーヨーカ堂のビジネスモデルの限界です。2015年3 - 11月期累計で営業赤字が▲144億円にまで膨らんでいます。前年同期の赤字▲26億円から急速な悪化です。

その背景は利益の柱の1つである衣料品や日用品で思うような利益が上がらなくなってきていることがあります。モノがあふれ、高齢化によって買い替え・買い足しのニーズが低下し、しかも競合が増えたことがその要因です。こうした要因は一時的というよりも構造的と言えるでしょう。これに対して手を打たざるを得なくなったと言えます。

2つ目は、アクティビストの株主の存在です。米サードポイントがセブン&アイ・ホールディングスの株式を保有し、不採算事業からの撤退と株主還元の強化を要請していることがマスメディアで報道されていましたが、株主総会を前に現経営陣がきちんと対策を示す必要を感じていたのだと思います。

最後は、1号店を閉めることによる決意表明でしょう。

店舗別の収益状況について開示はないので想像だけになりますが、筆者はこの店は閉店をしなくても良かったのではないかと思います。食料品を中心にオペレーションを続け、2階以上の上層階をシニア向けサービスやテナント誘致で再構築することで営業を続けることもできたのではないでしょうか。

にもかかわらず閉店を決めたのは、社内外に構造改革の聖域を作らないという意思を表明したかったからではないかと推測します。

今後の注目点

閉店を決めたザ・プライス千住店。実は注目はここで終わりません。次は跡地の活用法に注目です。大手町まで15分という立地ですので、北千住駅周辺はマンションの建築が進んでいます。大都市圏強化を狙うセブン&アイ・ホールディングスが記念すべき千住の店舗を今後どう展開するのか、引き続き目が離せません。

参考:『セブン&アイ・ホールディングス発祥の地、イトーヨーカドー1号店の「今」から見えるものとは

【2016年3月17日 椎名 則夫】

■参考記事■

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椎名 則夫