米アルミ大手アルコアの秘策は、日立や東芝の企業価値向上にも役立つ?

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アルミ価格の低迷が続く中、アルコアが取った策とは

昨年来、株式市場での最大の関心事は長期化する商品市況の低迷です。石油、鉄鋼、非鉄金属(アルミなど)など様々なコモディティ価格が、中国の景気減速などの影響を受けて急落しました。そのため、商品市況に関連した企業の業績や株価も大きな影響を受けてきました。

こうした中で、創業から127年の歴史を誇る米アルミ大手のアルコアは、2015年9月に川上部門(原料のボーキサイトを掘削する鉱山事業やアルミ精錬)と川下部門(航空機、自動車用アルミ部品などの製造)に分社化することを決定したと発表しています。

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川上部門はアルミ価格低迷による打撃を受けている一方、川下部門はボーイング、エアバス、フォード等に対して高付加価値なアルミ部品を供給し、高い成長が期待されています。

このため、分社化はアルミ価格低迷の影に隠れていた成長部門の事業価値を、より顕在化させることが目的と考えられます。

川下部門の新会社の社名はアーコニックに決定

アルコアの分社化への深い思い入れは、2016年3月15日発表された新会社の名前からも読み取れます。

川下部門の新会社の社名はアーコニック(Arconic)とされ、同社によると、ArconicのAはアルコアの伝統ある歴史、Arcは進歩の軌跡、conicは象徴として残る製品を作り続けた歴史を表しているとのことです。

成長部門と位置付けた新会社だけあって、かなり強い思いが込められています。なお、川上部門は、これまでのアルコアの社名が継承される予定です。

分社化は企業価値を高めるのか

ところで、分社化するだけで企業価値は上がるのでしょうか? 理論的には答えはノーとなります。分割したとしても、そのことだけで両社の将来のキャッシュフローの現在価値の合計が増加するとは考えられないためです。

とはいえ、仮に分割前のアルコアの両事業の企業価値が正しく評価されていなかったとしたら(例えば川下部門の企業価値が過小評価されていたとしたら)、分社化は企業価値に対してポジティブということになります。

実際にどうなるかは、現時点で予想することはできません。しかし、たとえば、分社後にアルコアの川上部門は嫌だが川下部門(アーコニック)は評価するという新規の投資家を多数呼び込むことになったり、既存株主が川下部門を買い増すといった行動に出て、アーコニックの株価が大幅に上昇し、「アルコア+アーコニック」の時価総額が分社前より上昇したとしたら、とりあえずアルコアの資本政策は成功したということになるでしょう。

日本でも、かつてNTT(9432)が移動通信事業を分社化して、NTTドコモ(9437)として上場させたように、成長部門を切り出し上場させることはありました。しかし、今回のアルコアのケースのように、既存株主に新会社の株式が無償で割り当てられることはありませんでした(新会社の株式を持ちたければ、新たにIPOに応募する必要がありました)。

このため、アルコアが行った分社化という資本政策はあまり馴染みのあるものではありませんが、もしかしたら、歴史の長い日立製作所(6501)や東芝(6502)のような日本の電機メーカーの企業価値向上策を考えるうえで、参考になるかもしれません。

アルコアは、これから長期債務、年金退職給付債務、資本金の両社への配分比率を詰めていく作業が残るため、分社化が実行されるのは2016年下期(7-12月)とまだ先の予定ですが、非常に興味深いケーススタディになりそうです。今後の動向を注視していきたいと思います。

参考:アルコアの長期株価推移
【2016年3月17日 投信1編集部】

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投信1編集部

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