FinTech(フィンテック)は日本社会を変えられる―進まない「貯蓄から投資へ」のけん引役へ

この記事の読みどころ

ここ半年ほどでFinTech(以下、フィンテック)に関連する業種や国内外のフィンテックの傾向が幅広く知られるようになりました。

日本ではフィンテックの「テック」に注目が集まる傾向が強いようですが、その一方でフィンテックの社会的インパクトについて語られることはほとんどありませんでした。

今後は、マイナス金利の導入により日本のフィンテックの新たな展開が加速するかもしれません。

日本でも浸透してきた「フィンテック」というバズワード

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昨年、金融庁が今後の重点施策にフィンテックを含むことを発表して以来、クラウド、ビッグデータ、IoTに続くバズワードとして日本でもフィンテックという言葉をよく耳にするようになってきました。

たとえば、ほんの1年ほど前には日本政府からほぼ完全に無視されていた仮想通貨は、現在では市民権を得たと言える段階に近づきつつあります。

世界ではレンディング(Lending:貸付)やオンライン決済、ロボアドバイザーなどが登場し、ブロックチェーンは通貨の常識を変えるのではないかと見られています。欧州でもP2P海外送金という新たなインフラが出てきています。

一方で、日本では会計系のサービスを中心に、家計や資産管理のスタートアップ企業が多く、欧米とはまた異なる生態系ができつつあります。昨今は、こうした国内外のフィンテック事情について詳しくなった方も多いのではないでしょうか。

日本人に流れるソニー、トヨタの血

筆者は、日本のフィンテックブームがどのような方向に進んでいくのか、ここ半年ほどウォッチしていました。最近では、だいたいのコンセンサスができてきたようですので、このタイミングで「フィンテックの次のステージ」についてまとめてみようと思います。

これまで日本では、国内で圧倒的な存在感を誇っている会計系を除くと、「AI」、「アルゴリズム」、「ロボット」という単語に対して未来を感じられる方が多かったように思います。

確かにそれらはフィンテックが作り出す未来のひとつだと思うのですが、一方で日本ではフィンテックに関して、社会に存在する課題をどのように解決していくのかというソーシャルインパクトに関する議論がこれまでのところほとんど出てきていません。

アメリカで上場を果たしたLending Clubをはじめとするレンディングのスタートアップ企業が急成長したのは、アメリカが移民社会で国内の貧困層も多く、人口3億2千万人のうち6千~7千万人程度が伝統的な金融サービスへのアクセスがないという社会課題に対して、ネット金融で資金を供給するという解決策を提示したからです。

レンディングの業界では、2015年に中国の市場規模がアメリカのそれを抜いたと言われていますが、中国でも国内に存在する途上国社会の成長促進という課題を、国内の比較的お金に余裕のある人達がネット上で貸付を行い、資金を供給することによって解決しようとしています。

また、アメリカ、中国に次いでレンディングのフィンテック企業の勢いがあるイギリスでも、もともと伝統的な銀行の預金量が少なく、リーマンショック後に銀行がますます社会にお金を供給できなくなっている中で、伝統的な銀行の代わりに社会にお金を供給する手段としてネット金融が盛んになりました。

どれも、それぞれの国の社会全体の大きな課題を解決するスケールのものですが、このような「フィンテックが海外で実際に社会の何を変えているのか?」という議論は日本では見られません。

20世紀後半における日本の製造業の躍進があまりに目覚ましかったため、私たち日本人は、製造業に携わっていなくても、脊椎反射的にソーシャルインパクトよりも「技術面で」どれくらい新たな要素が含まれるプロダクトかというところに目がいってしまいがちです。昨今のフィンテックブームでもこの傾向は同じでした。

これからフィンテックは日本社会をどう変えるのか

レンディングを例に、アメリカ、中国、イギリスでフィンテックが社会をどう変えているかを説明しましたが、日本の社会課題はアメリカ、中国、イギリスのどの社会課題とも全く異なります。

アメリカのように数千万人の移民や貧困層がいるわけでもありませんし、中国のように巨大な途上国社会があるわけでもありません。また、イギリスのように伝統的な銀行が預金不足に陥り社会に資金を供給できないわけでもありません。

レンディングの例で言うと、日本の社会課題のひとつとして「人口ピラミッドの形状から、国内の資産規模に対して資金需要があまりに小さいこと」が挙げられます。

銀行は預金量があまりに大きい一方で貸出機会が十分にないため、金利を他の銀行よりも引き下げることで貸出量を増やそうとしますが、どの銀行も同じ行動を取るので、低金利貸出競争になってしまっています。

預金金利はすでにほぼ0%で固定されているため、貸出金利が低下するにつれて銀行の収益の源である貸出金利と預金金利の差(利ざや)が縮小してきました。さらに今年に入ってマイナス金利の導入により銀行の利ざや縮小のペースは速くなっており、現状は持続可能ではないということが認識されつつあります。

社会にお金をまわす銀行の経営状況が悪化して経済によい影響があるわけはありませんから、

  • 多すぎる預金
  • 国内投資(融資)先の不足

の問題を同時に解決する必要があります。

もちろん既存の金融機関もこの問題への解決策を出していくと思いますが、フィンテック企業もこれらを解決することで社会にインパクトを与えられると考えられます。

そのため筆者は、

  • 長年言われ続けている個人の「貯蓄から投資へ」を加速させるサービス(預金しか経験のない人が自然と投資を始められるようなもの)
  • 国内の投資先だけでは十分でないのであれば、個人、企業、金融機関のグローバルな投資、融資を促すサービス(株式、投資信託、ETF、不動産、レンディング等)

といったものが、日本においてはソーシャルインパクトの大きいフィンテックサービスになり得るのではと思っています。

【2016年3月8日 クラウドクレジット】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>ネット証券会社徹底比較:株も投資信託も気になるあなたへ

クラウドクレジット

世界の資金需要者と個人投資家をつなぐ金融プラットフォームをつくるフィンテック企業として2013年1月に設立。
2014年6月から投資型クラウドファンディング・サービス「クラウドクレジット」を提供。当初はラテンアメリカのペルーに投資を行うファンドを提供し、2015年からはフィンランドやスペインをはじめとする欧州諸国の個人向けローンに投資を行う。
2016年はアジア、アフリカ諸国での投融資を開始し、2017年に五大陸で投融資を行うプラットフォームになる予定。