防災袋に入れておきたいお金にまつわる3つのアイテム―東日本大震災から5年を機に意識したいこと

この記事の読みどころ

東日本大震災から5年が過ぎました。防災意識はもしかしたら薄らいできているかもしれませんが、定期的に防災意識を新たにすることは大切です。

生命の安全が第一ということは言うまでもありません。避難等により安全が確保された後は、スムーズな生活再建に焦点が移っていきます。それに伴い、お金にまつわる話題が増えていきます。

災害にまつわるお金の備えとしてできることは多くありません。それでも防災袋に入れておきたい3つのアイテムをご紹介します。

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5年前の3月11日は何をしていましたか?

2011年3月11日の14時46分、東京で日本株の運用の仕事をしていた私は、投資候補先の会社とのミーティングに向かうために地下鉄の日比谷線に乗っていました。次の駅に向かうために車両のドアが閉まった時に、車掌室方面から緊急停止の非常ベルのようなものが鳴り、その直後、大きな揺れに襲われました。

あれから5年が経過した2016年の3月11日。

東日本大震災発生当日と同じ金曜日でしたので、これから週末を迎えるという雰囲気など、これまで以上に当時と似ているように感じました。

さらに、東京メトロでは、14時46分に合わせて緊急停止訓練が行われました。その訓練の時に、東京メトロ(しかも5年前と同じ日比谷線)に乗っていたので、地下鉄の車両内での大きな揺れをはじめ、当時のことが鮮明に思い出されました。

被害に遭われた方への黙祷とともに、5年前のあの日、自分はどこでどのように過ごしていたかに思いを馳せたのは私だけではないはずです。

それぞれの被災

当時、東北地方で津波の直接の被害に遭われた方もいらっしゃれば、それ以外の場所でも、いろいろと怖い経験をされた方もいらっしゃるかと思います。

また、首都圏では、いわゆる帰宅困難者となった方も多かったです。単に自宅に帰れないという話にとどまらず、保育所に預けた子どもを引き取りに行けずに大変だったとか、連絡がとれずに子どもがどこにいるか分からなくて歩き回って探した、といった話も聞きました。

災害への備えの現状

調査会社のマクロミルによる「防災意識に関する定点調査」(2015年2月発表)があります。

この中の「地震・災害に対する備えとして、どのようなことを行っていますか」という質問に対し、「日用品や水、食料品の備蓄」が43.9%、「保険加入」39.2%、「家具等の転倒・落下防止」31.6%、「家族に携帯電話を持たせる」29.8%、「非常用持ち出し袋の準備」28.5%、となっています。最も多い項目でも半分に到達していません。

東日本大震災の後、防災意識は高まったと言われていますが、時間が経つにつれて、防災意識は徐々に薄らいできていることも考えられます。

大規模災害が起きたら・・・

「災害は忘れた頃にやってくる」と言われるので、やはり、定期的に防災意識を新たにすることは大切なことです。

大規模災害が起きたら、言うまでもなく、まずは命を守り、身の安全を確保することです。どのような状況で災害に遭うか分かりませんので、自宅にいるケース、職場にいるケース、外出中のケースなど、「もしここで災害に遭ったら・・・」と考えを巡らせるだけでも、いざという時に違いが出てきます。

身の安全が確保された後、しばらくは避難所等での生活を余儀なくされるかもしれません。また、自宅に直接の被害がなかったとしても、インフラの破損や物資不足により、日常生活に支障をきたすかもしれません。ある程度の備蓄をしておこうというのは、災害後数日~数週間を過ごすためです。

これらについては、東京都が作成して都民に配布した「東京防災」という黄色い防災ブックをはじめ、多くの防災関連の本で紹介されているので、詳細はここでは触れません。これらを参考に、自分に適した備えをしていけば良いかと思います。

1つ言えるポイントは、防災のためだけに特別に何かをしようとすると、続かないことが多いということです。たとえば、防災用食品として買ったものの、賞味期限が過ぎて何年たってもそのままになっている、というのはよくあるケースです。これらを、いかに日常生活に組み込むかが鍵となります。

安全が確保された後は生活再建に焦点が移っていく

災害への備えについて多くの対策が紹介されていますが、お金に関して紹介されているものは意外と少ないです。生命が第一ですから当たり前なのですが、避難後は生活再建をスムーズにすることが大切になってきますから、次第にお金の話題が増えてきます。

生活再建に必要な手続き(支援金や融資等)は、市区町村などの自治体が窓口になることが多いので、詳細はそちらで相談していただくことになります。なお、自宅が壊れた場合には「り災証明書」が必要ということ、および、地震保険に入っている時は損害保険会社に連絡するということの2点は、覚えておいて損はありません。

防災袋に入れておきたい3つのアイテム

災害にまつわるお金の備えで事前にできることはさほど多くありません。それでも、もし、防災袋のように災害時に持ち出そうとしているものを用意しているのであれば、その中に以下の3つのアイテムを入れておくことをお勧めします。

1. いくらかの現金

いざ避難する時、多少でも現金があると何かと心強いものです。普段使っているお財布を身につけられないことも考えられるので、分散の意味も込めて、防災袋の中にも現金を入れておきます。

その際、千円札と小銭を多めにしておくと良いです。被災初期の段階ではお釣りがもらえない状況にある可能性があるのと、家族に持たせるなど、分けて持つことがしやすいためです。

2. 本人確認書類(またはそのコピー)

災害後、多くの金融機関では、一定金額を上限に、預金の引き出しに応じてくれます。ただし、「本人確認ができた場合」というのが条件になります。状況が状況だけに、本人確認は柔軟に行ってくれるものと考えられますが、本人確認書類があると、はるかにスムーズに進みます。

そのため、運転免許証などの写真つきのもののカラーコピーをとり、(濡れないように)ビニール袋などに入れて、防災袋に入れておきます。加えて、写真をデータファイルにして、スマホに入れておくとさらに安心です。

3. 取引している金融機関リスト

避難しようという時に、銀行の通帳などをすべて持ち出せると考えないことです。日常使うものとして、防災袋ではなく、普段使う引き出しにしまい込んでいることも多いと思います。

せっかく避難できたのに、通帳などを取りに家に戻って、津波に巻き込まれてしまったという悲しい話も聞きます。被災地では、通帳がなくてもある程度の預金の引き出しは可能ですので、命をかけるほどのものではありません。

ただし、取引している金融機関のリストがあると、とてもスムーズになります。

口座がある金融機関のすべてがリストアップされているのに越したことはないですが、少なくとも、以下の情報はおさえておくと良いかと思います。また、普段から家計簿ソフトを使っている人は、それをプリントアウトしておくというのも手です。

- 銀行(支店名、口座番号)

- 生命保険・地震保険(連絡先、保険の種類、保険証書番号)

- 年金(年金番号、特に年金受給者の場合)

まとめ

「災害は忘れた頃にやってくる」という言葉が伝えたいことは、「忘れないようにすることが身を守る」ということです。防災にも資産運用にも資することですから、時々は資産の棚卸しをしたいものです。

【2016年3月17日 藤野 敬太】

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。