なぜ、株式市場で水ビジネスが注目されるのか

相性の悪い関係を意味する「水と油」という言葉がありますが、世界の株式市場を見渡すと「水関連」と「石油関連」でもそうした傾向が見られるようです。

実際、水関連企業と石油関連企業の2013年から2016年3月15日までの株価推移を見ると、この間のS&P500が+35%上昇したのに対して、水関連はそれを大きくアウトパフォームし、逆に石油関連はアンダーパフォームしているのです。

水関連で最も高いパフォーマンスを示したのは、世界最大の水ビジネス企業であるフランスのVeolia Environnement(VIE)で、この間の株価上昇率は+119%に達しています。また、米国最大の水道サービス会社であるAmerican Water Works(AWK)も+78%上昇しています。

一方、世界最大の民間石油会社であるExxon Mobile(XOM)は▲8%下落し、世界最大の油田開発サービス会社のSchlumberger(SLB)も▲6%の下落でした。

このように水関連企業の株価パフォーマンスが良好なのは、水は人類の生存には不可欠なため、世界の人口増加に連動する形で安定的に需要が拡大してきたことが挙げられるでしょう。また、石油とは異なり、先物市場が存在しないため、金融投機の対象にならなかったことも一因と考えられます。

こうした状況を勘案すると、水ビジネスは長期投資を考える個人投資家が注目できる投資テーマだと言えるでしょう。

そもそも、水ビジネスとは?

水ビジネスの市場の定義は様々ですが、経済産業省やOECDなどのデータのよると、2013年の上下水道関連ビジネスの世界市場規模は、概ね50兆円程度です。

このうち事業運営(水道事業の運営および保守事業者、薬品メーカーなど)が約6割、管網敷設(ゼネコン、土木事業者、水道管メーカーなど)が約2割強、プラント建設(プラント設計・建設メーカー、機器装置メーカー、膜メーカーなど)が約2割弱となっています。

中でも最も安定的かつ継続的に収益を確保できるのが事業運営で、主要プレイヤーは欧州の3大・水メジャー(Veolia Environnement、Suez Environnement、Thames Water Utilities)、米国の民営水道会社(American Water Worksなど)、アジアの新興企業(シンガポールのHyfluxなど)、地場の小規模事業者などです。

残念ながら、現時点では日本企業のプレゼンスは小さいですが、総合商社の取りまとめ力と海水淡水化技術などの差別化技術を組み合わせたインフラ輸出が徐々に増えてきています。また、日本では水道局は民営化されていないため、先に紹介したAmerican Water Worksに相当する上場企業はありません。

しかし、日本でも自治体の財政悪化が進む中で、PFI注1、DBO注2といった官民パートナーシップのスキームを活用し、トータルコスト削減のためのソリューションや保守管理を民間に委託するケースも増加しています。

注1 Private Finance Initiative:民間の資金、経営能力、技術力を活かして公共施設の建設、運営、維持管理を行うこと

注2 Design Build Operation:公共部門が資金調達を行い、民間が公共施設の設計、建設、運営を行うこと

アナリストが注目する日本の水ビジネス関連銘柄

こうした変化を事業機会にしている代表企業が、富士電機(6504)と日本ガイシ(5333)の水処理事業が統合されて発足したメタウォーター(9551)や、荏原製作所(6361)、三菱商事(8058)、日揮(1963)による合弁会社の水ing(非上場)です。

一方、管網敷設やプラント建設も国内向けが中心ですが、この中で例外的に、水処理機器やフィルター用の膜などの素材は海外展開が進んでいます。

十数年前までは、膜を使わない砂ろ過法など、時間をかけて水道水を浄化する方法が一般的でした。しかし、人口の急速な増加などにより、自然の浄化作用だけでは水量と水質の確保が困難な地域が増えてきたため、膜を利用した水道システムのニーズが海外市場でも高まっています。

また、水源が限られる地域では、海水を淡水化する需要も増えています。このため、日本の高品質・高速処理・省エネプロセスの膜処理技術が海外でも求められるようになっているのです。

こうしたトレンドから見て中長期的に恩恵を受けると期待できる膜メーカーは、日東電工(6988)、東レ(3402)、三菱ケミカルホールディングス(4188)、旭化成(3407)などでしょう。

【2016年4月19日 投信1編集部】

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LIMO編集部