この記事の読みどころ

  • 「起業には熱意や情熱が必要だ」と、よく言われます。
  • それはそうなのですが、そのことが強調されるあまり、お金のことが軽視されているように思えてなりません。
  • 起業家におけるお金の重要さを、自ら起業をした経験を踏まえ、ゲームや戦いを例にとってわかりやすく説明します。

サラリーマンをしているときと、起業家として活動しているときでは、お金に対する考え方は変わります。財務というフィールドでお金を専門に扱っていた私ですら、たびたび「お金とはこういうものか」と目から鱗が落ちる思いがします。実はそれが知りたくて、起業したという面もあるのですが。

経営とはある面、お金を使ったゲームだ

ゲームというとすぐに「不真面目」「不謹慎」と言われるのですが、経営は明らかに一種のゲームです。ルールは明瞭で、お金がなくなったらゲームオーバーです。お金とは身体を守る鎧であり、HP(ヒットポイント、生命力のこと)そのものなんです。そして死んでしまったら基本的には、復活はありません。

一方でこの「お金がなくなる」という定義はやや曖昧です。たとえ資本金がなくなっても、誰か出資や融資をしてくれる人がいればお金はまだなくなっていないということですし、自分の財産から追加出資や貸付をすれば会社としてはまだ死にません。金融機関から借り入れても良いでしょう(もっとも、負債が資本より多い「債務超過」という状態だと借りることも難しいですが)。

したがって手元のお金がなくなっても、「信用」が残っていればまだゲームは終わらない、とも言えるでしょう。かといって、「だから大切なのはお金じゃない」という反論は無意味です。この場合、お金は信用を計る尺度でしかなく、信用をお金に変えたとしても、そのお金がなくなれば終わりなのですから、最終的にはお金がゲーム続行の判断基準です。これはもはや、ルールです。

攻めるためにもお金は必要

お金が必要なのは、守りの場面だけではありません。モノを作って売れば在庫が発生しますし、そもそも工場や生産設備に投資が必要です。起業のネタとして選んだ事業がモノ作りでなくても、何らかのサービスを消費者の手元に届けるには宣伝が必要です。潜在顧客と出会うためには会食費用が、知識を得るためにはセミナー代がかかります。

特に今の私が痛感しているのは、コンサルなどの高額商品を売ろうと思えば経営者と繋がらなくてはならず、彼らと出会うにはある程度の投資が必要だということです。B to Cの小口サービスなら、集客をネット上で完結させたりパーティーやセミナーに出ても安いもので十分、潜在顧客に出会うことができますが、それはそれでシステムや広告への投資が必要になったりします。

一定以上のステータスがある人達は、それ相応の価格帯の場所にしか出てこないのです。もちろん、例外はあります。しかし、例外だけ追っていても確率が低いので、ただ経営者の方に出会うためだけにある程度の投資は必要になってくるのです。このことは、考えたら当たり前のことですが、起業前には思いもよらないことでした。