ついに原子力ののれん減損を発表した東芝―ここからの注目点は?

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東芝が業績予想修正に関する説明会を開催

2016年4月26日に東芝(6502)は2016年3月期の業績予想修正を発表し、説明会を急遽開催しました。

既に複数のメディアが前日までに報じていた通り、今回の修正では、原子力関連ののれんの減損が行われた一方で、東芝メディカルシステムズの売却益が計上されたため、当期純損益は、従来予想の▲7,100億円の赤字から▲4,700億円の赤字に上方修正されました。

減損理由は割引率の変更

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これまで東芝は2015年10月1日を基準日とするのれん減損テストの結果を踏まえ、のれんの減損の必要性はないと言い続けてきましたが、今回は、“あっさり”と▲2,600億円という巨額の減損を計上しました。

理由としては、「原子力事業の計画に大きな変更はないが、東芝グループの資金調達コスト上昇を考慮し割引率を変更」が挙げられ、事業の将来性には全く問題がないが、財務体質の悪化に伴い格付けが低下し割引率を見直さざるを得なかったことが示されました。

「事業の将来性」については議論の余地がありそうですが、いずれにせよ、今回の減損により原子力事業ののれんは700億円にまで大幅に減少したので、将来の大幅な減損リスクが低下したことはポジティブな変化として捉えられます。

ただし、割引率の変更を理由とするならば、なぜ、ランディスギア社ののれん(1,713億円、2015年12月末時点)は減損しなかったのかという疑問が残るため、この点は精査する必要がありそうです。

今後の注目点

東芝の2016年3月期決算は連休明けの5月12日に発表予定です。2017年3月期予想については、3月18日に発表された「2016年度事業計画説明会」において示された計画(営業利益1,200億円、純利益400億円)に沿ったものと予想されます。

懸案であった原子力事業ののれん減損も終えたため、大幅な赤字からのV字回復に注目した強気な見方が株式市場では増えるかもしれません。

とはいえ、東芝は特設注意市場銘柄に指定されており、2016年9月に東京証券取引所に対して「内部管理体制確認書」を提出し、内部管理体制等に問題がないと認められなければ上場廃止の可能性も残っています。このため、引き続き不正会計の再発防止策が着実に実施されているかを十分に見極める必要があります。

また、今回の業績修正により赤字幅が縮小したため、2016年3月期末の株主資本比率は従来予想の2.6%から5.5%に上方修正されたものの、依然として極めて脆弱な財務体質であることには留意が必要です。

収益変動の激しい半導体や、長期的な事業へのコミットメントが要求される社会インフラ事業を手掛ける企業のバランスシートとしては心許ないと言わざるを得ません。このため、今後も資産売却やそれ以外の手段でいかに毀損した株主資本を修復していくかが、目下の最大の注目点となると考えられます。

最後に、最近の三菱自動車の問題を見ても、大企業の企業文化を根本から変えていくことは容易ではないことが改めて認識させられました。このため、中長期視点では、東芝の企業文化が根本から変化していくのかにも注目していく必要がありそうです。

【2016年4月27日 和泉 美治】

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。