働き方の多様化で注目される製造業派遣ビジネス―その関連銘柄は?

なぜ、株式市場で人材派遣ビジネスが注目されるのか

2015年秋に安倍政権が掲げた「一億総活躍社会」というビジョンに対しては様々な意見がありますが、少子高齢化に伴う人口減が進む日本社会において、限られた人的資源を有効活用するために「多様な働き方が可能な社会を目指す」政策であると言えます。

この政策を進めていけば、雇用は一段と流動化し、その結果、旧来型の終身雇用制度はより形骸化していくことになるでしょう。これは、個人レベルで見れば、最悪の場合は失職という痛みを伴うことになるかもしれません。

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一方、マクロで見れば、競争力を失った産業から成長産業への人的リソースのシフトが進むため、経済成長力の上昇につながる可能性もあります。もちろん、雇用の流動性を進めるためには、現在議論されている同一労働・同一賃金が担保されることが前提です。

雇用の流動化が進めば、求人広告、職業紹介、派遣、請負といった人材サービス産業の活躍の場が広がる余地は大きいでしょう。このため、「一億総活躍社会」の実現に向けた政策が推進される中で、人材サービスは重要な投資テーマになると考えられます。

そもそも、人材サービス産業とは?

人材サービス産業は約9兆円の巨大産業であり、関連企業も多岐に渡っています。

※出所:「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」(人材サービス産業の近未来を考える会)

人材派遣・請負業界だけに限って見ても、

(1)オフィスワーク(ファイリングなど)や営業販売(コールセンターなど)への人材派遣を行うリクルートホールディングス(6098)などの事務・営業販売系人材派遣

(2)メーカーの研究開発・設計部門やIT企業のソフトウエア、システム開発部分へ人材を派遣するメイテック(9744)などの技術者派遣

(3)工場の製造ラインへ人材を派遣するアウトソーシング(2427)などの製造派遣・請負

に分かれ、各々で非常に多くの関連企業が存在します。

この中で、今回は製造業およびIT業界を中心とした派遣・請負分野に絞って関連銘柄を考えたいと思います。

製造業・IT関連の派遣、請負ビジネス関連銘柄

人材派遣業(製造業・IT関連等)は労働者派遣法により規制されているため、銘柄選別を行うには、まずこの法律を理解する必要があります。

2015年9月から施行された改正労働者派遣法では、特定派遣事業所と一般派遣事業所の区別がなくなり、これまで届出制であった特定派遣事業も許可制になっています。

また、派遣期間については、派遣元が技術者を正社員として無期雇用契約し需要先へ派遣する場合は、これまで通り派遣期間の制限はありません。

しかし、有期雇用の派遣従業員を派遣している事業者の場合は、それまで派遣受け入れ期間制限がなかった専門26業務も含めて、同一業務であれば最長3年までに制限されるようになりました。

さらに、派遣会社には労働者への教育訓練や雇用安定措置(労働者は、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元事業主における無期雇用などを求めることができる)が義務付けられるようになりました。

こうした規制変更により、最も大きな恩恵を受けると期待されるのは、従来の特定派遣事業の分野で、常用雇用者(正社員)を派遣してきた大手事業者で、具体的には、メイテック(9744)、テクノプロ・ホールディングス(6028)、アルプス技研(4641)などです。

アナリストの眼:銘柄選別における注目点

上記の銘柄が注目される理由は、今回の法改正により業界再編が進み、中小零細が淘汰されていくと見られるからです。

法改正前には、本来は無期雇用契約を結び需要先へ人材を派遣することが求められていた専門26業務向けに対して、無期雇用という名目で特定派遣を行っているのに、実質的に雇用を保障していない中小の特定派遣事業者が存在していました。

こうした事業者は、これまでは届出制であったため、存在することが許されたのが実情です。しかし、許可制になると、無期雇用で雇用を保障しない限り、従来の事業を継続できなくなります。この結果、体力のない企業の廃業や大手企業への吸収が進むと見られます。

加えて、従来の特定派遣事業者は、これまでは26業務に付随する業務(他部門との会議など)に制限がありました。それが今後はなくなるため、柔軟な運用が可能になると見られます。こうした点からも、前述した大手3社にとっては、派遣報酬の増額などのメリットも期待できると考えられます。

さらに今後は、製造業派遣や工場ラインの一部を一括して受注する請負事業についても、技術者派遣業と同様に業界再編が進むと予想されます。

なぜかというと、今回の法改正に対応するために、派遣社員の正社員化やキャリアアップ支援(教育や派遣先への正社員化の働きかけなど)の対応が必要になると見られ、こうしたコストアップに耐えられない企業の淘汰が進むと予想されるためです。

技術者派遣に比べると、製造業派遣は上場会社の数が多いため、注目可能な企業を現時点で特定することは難しいものがあります。今後は、前述のポイントを頭に入れながら銘柄選別を行っていきたいと思います。

※本記事は日本の個人投資家の資産形成を応援する経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。

【2016年4月13日 投信1編集部】

■参考記事■

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投信1編集部

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