この記事の読みどころ

アジア市場で石油化学品の代表製品であるエチレンの市況が、2月を底に回復の動きにあります。

主な要因として、この春に日本・韓国の石油化学コンビナートで大掛かりな定期修繕が予定され、一時的に需給が引き締まっている事が背景にあります。

エチレン価格からナフサ価格を単純に差し引いたスプレッドが、3月以降、改善の兆しを見せています。このスプレッドに敏感な大手石油化学の株価に短期的なリバウンドの動きが見られそうです。

エチレン市況が2月に底を打って反発に転じる

アジアのエチレン市況(ドル/トン)が反発に転じています。

同市況は1月935ドル/トン、2月890ドル/トンと切り下がりましたが、2月に産油国が増産凍結宣言を行って以降、原料のナフサ(=粗製ガソリン)価格も底を打ったことで、エチレン市況は3月に1,170ドル/トンまで回復しました。

もっとも2015年4月には1,475ドル/トンという高値を記録しており、依然として低水準にあります。

一方、エチレン価格から原料ナフサ価格を差し引いたスプレッドは2016年1月617ドル/トン、2月564ドル/トンに対して、3月は783ドル/トンまで回復しました。原料のナフサ価格が低位安定しているのに対して、エチレン価格の戻りが大きかったのがスプレッド改善の主要因と思われます。

2016年はアジアの石油化学品生産拠点での定期修理が集中化

石油化学は原料に石油製品であるナフサやLPGガスなどを使い、熱と圧力をかけるなどして化学製品を製造しています。したがって、少しでも原料漏れがあれば大事故につながりやすいと言えます。このため、国の基準にもよりますが、2~3年に1回の割合で大規模定期修繕が義務付けられています。

この大規模修繕が日本、中国、台湾、韓国、シンガポールなどの東南アジア地域で集中すると、需給のタイト化を理由に、石油化学品の市況が一時的に反発することは過去に何度も経験済みです。2016年はアジア市場でこうした大規模な定期修繕が見込まれることも、足元の市況改善の大きな理由の1つになっていると考えられます。

石油化学製品は、衣食住の全てに密接に関わる製品が多く、景気変動の影響は受けるものの、鉄鋼、非鉄など他の基礎素材産業と比べて需要の安定度ははるかに高いと考えられています。そのため、よほどの需給緩和状態(たとえばリーマンショック直後)でもない限り、需要の伸びは安定していると考えらます。

スプレッドの急反発に対して大手化学の株価は出遅れている

そこで、エチレン価格とナフサ価格のスプレッドと、大手石油化学メーカーである三井化学(4183)および三菱ケミカルホールディングス(4188)の株価を比較してみると、足元でスプレッドが急反発しているにもかかわらず、株価の方が出遅れている関係が読み取れます。

株式市場全体が円高で下落しているためかもしれませんが、株式市場が反発する時にはこれら大手石油化学株がスプレッドに追随することが期待できるかもしれません。

※本記事は日本の個人投資家の資産形成を応援する経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。

【2016年4月11日 投信1編集部】

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LIMO編集部