東証がIFRS適用状況の調査結果を発表した意図は何か―関連銘柄の今後は?

東証が国際財務報告基準に関する調査を発表

2016年4月12に東京証券取引所(以下、東証)は、3,194社の上場企業を対象に行った国際財務報告基準(以下、IFRS)の適用状況に関する調査結果を発表しました。今回の調査のサマリーは以下の通りです。

- IFRS適用済会社、IFRS適用決定会社、IFRS適用予定会社の合計は128社(前回2015年9月公表比+16社)

- 2016年3月末時点における128社の時価総額の合計は140兆円であり、東証上場会社の時価総額(518兆円)に占める割合は27%(前回公表比+3%)。

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- IFRSの適用に関する検討を実施している会社は213社(前回公表比+19社)。

- 業種別での適用済、適用決定、適用予定の合計数が多いのは、電機機器(20社)、医薬品(13社)、情報・通信(11社)、サービス業(11社)、輸送用機器(11社)、卸売業(10社)。

- 一方、非鉄金属、鉄鋼、陸運業、建設業、石油・石炭製品、その他製品は、それぞれ1社と少なく、空運、鉱業、水産・農林、保険業、電気・ガス業など10業種は1社も存在しない。

東証が調査結果を公表した理由とは?

上述のように、適用済、適用決定、適用予定の合計数は3,194社中128社、時価総額ベースでも27%にとどまっています。

移行が進まない背景として、1)国内事業が大半の内需関連や中堅企業には、IFRSへの移行メリットが強く感じられない、2)のれん償却に長年なじんできた多くの日本企業には、のれんを償却しないIFRSへの根強い抵抗感があること、などがあります。

また、こうした点を配慮し、現時点で政府や東証は、期限を定めて強制的にIFRSへ移行させる議論を事実上凍結しています。

とはいえ、15ページにわたる今回の公表資料には、2014年、2015年に発表された「日本再興戦略」の中で、IFRSの拡大促進のために東証が積極的な役割を果たすべきと明記されていたことや、適用率の低い業種まで開示していることから、東証としては引き続き政府の意向に沿って上場企業に対しIFRSへの移行を粘り強く促す意志があることが読み取れます。

IFRS特需は過去のテーマだが、それでいいのか?

IFRSを採用しない企業の言い分も理解できますが、複数の会計基準が乱立している状態が長く続くと海外マネーを呼び込みにくくなるリスクがあることも否定できません。

また、IFRSを採用することで、国際比較が可能となり、日本企業の優位性が発揮される例も少なくないと考えられます。このため、今後、この議論が建設的に進展していくことを期待したいと思います。

ちなみに、IFRSへの移行の議論が活発化した2010年~13年にかけては、ビジネスブレイン太田昭和(9658)、オービックビジネスコンサルタント(4733)、ピー・シー・エー(9629)、ミロク情報サービス(9928)、TKC(9746)などの会計ソフト関連企業が、IFRS特需の恩恵を受ける銘柄として注目されました。

これらの銘柄がIFRS特需関連として再び注目される日が来るためには、政府、東証の関与が強まるか、あるいは、企業サイドの意識が変化するといったことが条件になります。こうした点について、決算等で今後の動向を注視していきたいと思います。

【2016年4月18日 投信1編集部】

■参考記事■

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投信1編集部

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