イオンの株主優待は魅力的

イオン(8267)は株主優待の優等生で、個人投資家の人気が高い銘柄です。さまざまな優待ランキングを見ると、必ずイオンが取り上げられています。

その魅力は、優待を受けるために必要な投資金額が手頃なうえ、日常イオンのお店で買い物をする方には大変お得なキャッシュバック制度があるからです。持株数に応じて、3%ないしそれ以上の率を買い物金額に掛けた金額を、半年ごとに返金してもらえます。これは20日、30日のお客様感謝デーの割引日でも適用になるのです。

詳しくはこちら(株主優待制度)をご覧ください。

イオンの業績を考えてみる

イオンの株主になると、配当を受け取ることに加えて、このようなキャッシュバック制度が利用できます。長期保有株主の優待制度もあります。もちろん、株主総会で議決権を行使できることは言うまでもありません。

読者の方には、この株主優待に目をつけて個人株主になっている方も多いことでしょう。そのイオンですが、2月本決算ですので、ちょうどそれが発表されたばかりです。

イオンの業績はどうでしょうか。イオンはいわゆる総合小売業(General Merchandise Store、 GMS)をメインビジネスの1つにしています。一方、好調が続くコンビニエンスストア事業の規模は限定的です。

小売り分野ではセブン&アイ・ホールディングスに属するイトーヨーカ堂の業績が厳しく、閉店が始まっています。そんな中、気になるイオンの業績を紐解いてみましょう。

営業利益は前年度比+25%増益だが

決算短信を見ると、2016年2月期の営業収入は8.2兆円で前年度から+1.1兆円増えています。営業利益は1,770億円で、同じく+356億円の増益です。なかなかすばらしい増益トレンドと言えそうです。GMS不振はどこ吹く風、と見えます。

ところが、イオン株主の手に残る当期純利益を見ると対前年度比▲86%減の60億円とあります。個人の生活感覚からすると60億円とは大きな金額ですが、営業利益の約3%に過ぎません。「もっと当期純利益があってもいいのでは」そんなみなさんの声が聞こえてきそうです。

ちなみに、決算短信ではイオンの考える2017年2月期の業績予想が出ています。ここでは営業利益が1,900億円に対して当期純利益は100億円にとどまっています。

決算の数値から見えてくるイオンの強みと課題

実はこの決算の数値にイオンの強みと課題が現れています。ごく簡単に3つお伝えします。

第1に、イオンはさまざまな事業を展開しているコングロマリットで、その稼ぎ頭はクレジット事業に代表される総合金融事業とショッピングセンターを運営するディベロッパー事業です。この屋台骨がしっかりしているので業績が安定するのです。今回の決算は、その土台の上で、GMS事業やスーパーマーケット事業などに採算改善傾向が見られます。

第2に、イオンがM&Aを好む素顔を持っていることです。最近では2014年11月にウェルシアホールディングスを子会社に、2015年1月にマルエツを子会社に、そしてマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東からなるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスを設立しました。いわゆる外部成長の取り込みに積極的です。

第3に、連結した高収益の企業が100%子会社でないことが多く、これらの企業の利益を当期純利益段階までまるまる取り込むことができないことです。当期純利益を大きくするためには本体と100%子会社の事業で利益をしっかり出さないといけません。

こう見てくると、イオングループ全体はしっかりと事業規模を拡大してきていますが、イオンの株主に帰属する利益を最大化するにはまだまだ採算改善の課題があることがわかります。

イオンの株主優待を狙って株主になった方も多いことかと思います。そろそろ株主総会の招集通知がお手元に届くことでしょう。ぜひ開封して決算を見てください。そして都合がつくならば、ぜひ一度株主総会に足を運び、直接質問を投げかけてみるのもよろしいかと思います。

【2016年4月15日 投信1編集部】

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LIMO編集部