“観光立国”第2幕、進化するインバウンド需要で関連銘柄も変わる?

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なぜ、株式市場で“観光立国”が注目されるのか

近年、訪日渡航者数が急増しています。まず日本政府観光局のデータを確認してみましょう。

2013年 1,036万人 前年比+24%増

2014年 1,341万人 前年比+29%増

2015年 1,974万人 前年比+47%増

国別では、中国、韓国、台湾など近隣諸国からの渡航者が特に増えています。その主な理由としては、これらの国々の経済が成長したこと、アベノミクス以降の円安により訪日コストが低下したことなどがあります。

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こうして3年間で訪日渡航者数がほぼ倍増している勢いだけに、株式市場ではホットなテーマです。しかし、これは一時的なものではなく、官民挙げて観光を全国的な産業にし、3,000万人受け入れを目指してGDPを高める国家の成長戦略に密接に係っています。

そのため、株式市場では今後も繰り返しスポットライトが当たる中長期テーマになるでしょう。

2016年は1つの変節点に?

政府が掲げていた2,000万人という数値は2016年(暦年)には達成されそうで、今後もますます訪日渡航者は増えていくでしょう。しかし、2016年は1つの変節点になると筆者は考えます。その理由は以下の2つです。

1つ目の理由は、訪日渡航者の伸び率の鈍化懸念です。2016年1-2月累計は374万人が日本を訪れているが、その伸び率は対前年同期比+44%となり、やや減速感が見え始めている。伸び率の鈍化は株式市場が嫌う事象の1つと言えるでしょう。

2つ目の理由は、ボトルネックの顕在化です。観光庁のデータでは、2015年1-12月の宿泊施設の稼働率は61%ですが、シティホテルとビジネスホテルはそれぞれ80%、75%と調査以来最高の水準にあります。特に3大都市圏の稼働率が高く、東京や大阪のビジネスホテルがなかなか予約できないというのが最近の実感です。

アナリストが注目する“観光立国”のポイント

このように訪日渡航者の増加ペースが鈍化する一方、2020年の東京オリンピックに向けて受け入れ態勢が整備されていく可能性が高いです。そのための投資は、東京だけに止まらず全国規模になるでしょう。

これは需要と供給で言えば、需要に対して供給が追い付こうとする局面であり、需要が逼迫した局面とは異なります。したがって、将来的には、過去数年株式市場でもてはやされた銘柄やストーリーが単純に蒸し返されるとは限りません。

たとえば、ここ数年急増した中国からの観光客は、家族で団体旅行をし、お土産を「爆買い」していました。しかし、今後は日本の観光情報が中国で広まるにつれて、個人が自由旅行を楽しむように変容していくと見るべきでしょう。それも東京・京都・大阪だけではなく、もっと日本の隅々へ、多様な関心を満たす旅をすることになると見られます。

「爆買い」も今後は落ち着くかもしれません。むしろライフスタイルともいうべき「コト」への投資が増えると予想すべきでしょう。このような変化を取り込めるのかが、株式市場で問われることになりそうです。

“観光立国”の進化で恩恵を受ける銘柄は?

まず、インバウンド消費関連を見てみましょう。これまでは、大都市での「爆買い」と連動する銘柄がもてはやされてきました。

たとえば、銀座でその恩恵を受けてきた三越伊勢丹ホールディングス(3099)、家電量販のラオックス(8202)、都市部で強いマツモトキヨシホールディングス(3088)、深夜営業が好評のドンキホーテホールディングス(7532)などです。これらの企業は今後も訪日渡航者の増加の恩恵を受けると思われます。

ただし、注意点もあります。その1つが、銀座・日本橋の再開発です。現在、J.フロント リテイリング(3086)傘下の銀座松坂屋跡地に大規模商業施設が建設されており、竣工は2017年1月ごろの予定です。さらに2018年度に髙島屋(8233)の日本橋の新館も竣工する予定です。

この結果、銀座・日本橋地区の集客が高まり、松屋(8237)も含めた各百貨店が恩恵を受けるのか、それとも市場が十分に拡大せずシェアを奪い合うことになるのかを見極める必要がありそうです。

2つ目の注意点は、「モノ」需要が変容する可能性です。これまで爆買いで恩恵を受けてきた日本の化粧品や家電製品などのメーカーは、日本の百貨店や家電量販店をアンテナショップとして引き続き活用しつつ、自社でアジアの近隣諸国への販売を進めるでしょう。

従って、ここで挙げたインバウンド消費の恩恵を受けてきた企業は、従来に増して「日本でしか買えない付加価値商品」の品揃えと提案力が問われることになります。

次に、観光立国が第2幕に入るカギについて考えたいと思います。ここでのテーマは、ビジネスホテルを中心にした宿泊キャパシティの拡大、地方観光、リゾート・テーマパーク、多言語対応、多通貨決済、越境ECなどでしょう。

民泊も大いに期待されますが、法制面の整備、民泊提供側のコンテンツの強化などを考えると、もう少し時間がかかるのではないでしょうか。まずはビジネスホテルの拡大が進むと見られます。しかし、この分野のトッププレーヤーである東横イン、ルートインジャパン、アパホテル、スーパーホテルなどはいずれも非上場企業です。

テーマパークについては、オリエンタルランド(4661)、ハウステンボスともに訪日渡航者の全入場者に占める割合は1桁台と見られるため、まだ伸びしろがあるでしょう。また、カジノ解禁にも目を向けておきたいと思います。

【2016年5月2日 投信1編集部】

■参考記事■

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投信1編集部

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