失敗しない投資? クラウドファンディングで「集合知」原理は働くか

スタートアップ事業に困難はつきもの

スタートアップ事業は、投資する側にも、実施する側にも、悩みがあります。

まず、スタートアップ事業への投資にリスクはつきものです。スタートアップ事業はその多くが失敗に終わっています。失敗の定義もいろいろですが、投資家からの借入資金を返せずに消滅するスタートアップ事業は、4件のうち3件程度と言われています。

また、スタートアップ事業を立ち上げたい側にとっては、投資家を見つけるのも一苦労です。たとえば、たまたま事業アイデアを共有する機会があり、これに共感をしてくれた友人。または、事業分野をネット上で検索しヒットしたエンジェル投資家やベンチャーキャピタルファンドなど。いずれにしても、地道な営業活動により少しずつ投資家の賛同を得ていくことが当たり前でした。

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このように、スタートアップ事業への投資は、直接接触した人や、クチコミで関心を持ってくれた人などの限られた投資家たちに支えられてきました。

しかし、クラウドファンディングの普及により、スタートアップ事業主は後者の問題を解決することができました。クラウドファンディングは、一度に多くの投資家に自分のアイデアをアピールすることを容易にしてくれる、画期的な資金調達の場と形容されることも少なくないでしょう。

今注目を浴びているのは、前者の投資家が抱える問題におけるクラウドファンディングの効果です。クラウドファンディングは、投資への失敗の確率においてはどのような影響があるのでしょうか。

進むクラウドファンディング上の「集合知」研究

昨今クラウドファンディング業界では、The Wisdom of Crowds、あるいは「集合知」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。集合知とは、2004年のベストセラーとなった書籍「The Wisdom of Crowds」(邦訳:『「みんなの意見」は案外正しい』)により広く知られるようになった言葉です。

集合知とは、個人の推測は数が多ければ多いほど、そこから導き出された回答を正しいものに近づけるという統計的現象を指します。集合知を利用したサービスの代表例としては、多くの個人貢献によって情報の質が保たれていると言われるWikipediaがあります。

この集合知の原理は、クラウドファンディングでも働くのか。クラウドファンディング上のアイデアに対して、多数の個人が査定をすることで成功しやすい事業が選ばれているのか。この問いに答えようと、多くの専門家や研究者が調査・研究を重ねています。

クラウドファンディングは投資家の判断を研ぎ澄ますか

2016年2月、この問いに対して、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学の教授らの回答が発表されました。その内容は、投資型クラウドファンディングでは集合知のメカニズムが働き、投資家はより失敗しない選択をすることができるというものでした。

研究はイギリスの投資型クラウドファンディングプラットフォームであるCrowdcubeの投資家を対象に、2年にわたりデータ分析やインタビューを通じて行われました。

そこでは、投資家は多くの情報共有や意見交換を行うことで、事業への単純な印象や人気レベル、あるいは二次情報などに惑わらされることなく、バリュエーションや事業計画の審査などを通じて、合理的かつ正確に、投資の額や期間などの判断を行うことができているとのことです。

投資家は、事業主が発信する一次情報や、多くの他の投資家の意見を得つつ、入手した情報を慎重かつ入念に検討した上で、判断に至っているとの結論が出されたのです。

この研究結果は、近年増加の一途にある投資型クラウドファンディングへの投資を、さらに伸ばすことになるかもしれません。一方で、寄付型のクラウドファンディングでは集合知の原理が働かず、寄付者は口コミ、人気度、流行などに流され、失敗しかねないプロジェクトへの資金提供を行ってしまうと警鐘を鳴らす専門家もいます。

皆さんのご意見はいかがでしょう。クラウドファンディングにおける集合知の研究や議論は、これからも続けられ、興味深い結果が発表されていくものと思われます。

参考:
Angel (2016) Crowdfunding investors make economically rational decisions, according to new study from London School of Economics
Fortune (2014) Why startups fail, according to their founders
The Wallstreat Journal (2012) The Venture Capital Secret: 3 Out of 4 Start-Ups Fail
Andrew Abramowitz (2016) Crowdfunding and the Wisdom of Crowds

【2016年5月9日 クラウドクレジット】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>ネット証券会社徹底比較:株も投資信託も気になるあなたへ

クラウドクレジット

世界の資金需要者と個人投資家をつなぐ金融プラットフォームをつくるフィンテック企業として2013年1月に設立。
2014年6月から投資型クラウドファンディング・サービス「クラウドクレジット」を提供。当初はラテンアメリカのペルーに投資を行うファンドを提供し、2015年からはフィンランドやスペインをはじめとする欧州諸国の個人向けローンに投資を行う。
2016年はアジア、アフリカ諸国での投融資を開始し、2017年に五大陸で投融資を行うプラットフォームになる予定。