大手化学株価の今後:弱気から強気への転換点はいつ?

この記事の読みどころ

2016年5月7日付日本経済新聞の証券欄で、めずらしく大手化学株に関する記事がありました(「化学株、試される地力」)。投資家離れが起きている銘柄として、大手化学株を代表例に分析した内容です。

住友化学(4005)、三井化学(4183)、三菱ケミカルホールディングス(4188)の株価の勢いが止まっている要因として、世界的なマクロ状況の低迷に加えて、収益のカタリストだった原油安が底入れを強め、製品価格とのスプレッドが縮小してきたことが挙げられています。

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しかし、既に上記3社の株価は2015年後半をピークに、今年5月6日の終値までに30%強下落していますので、やや今さら感があります。では、この下がった株価を今年はどう見たら良いのでしょうか。

大きな流れを見失っていないか?

自慢話は嫌いですが、あえて言わせていただければ、筆者は昨年夏以降、三井化学、三菱ケミカルホールディングスなどの大手化学株について、株価のダウンサイドリスクを指摘してきた自負があります。

その根拠として、昨年夏以降の原油安加速、および石油化学の主原料であるナフサ(粗製ガソリン)の国際市況が大きく下がり始めたことに注目していました。

短期的には原料安が効いて収益にプラスになったことは確かですが、実はこれが売り時のサインなのです。

株価は6か月から9か月の先見性があると、筆者が若い時に先輩から教えられたものです。そして、今でもこの原則は生きていると思います。

利益がキラキラと輝いて見える時が売りのタイミングである例には枚挙にいとまがありません。特に化学セクターのような景気敏感・循環株についてはこのスキームがよく当てはまります。

現在のように四半期決算が当たり前になると、アナリストは3か月先の業績予想に腐心する傾向が強く、結果、大きな流れを見失うケースが多々あると思われます。

2015年年初からの大手化学株の推移(週間株価)
出所:SPEEDAをもとに筆者作成

下がった大手化学株を今年はどう見たらいいのか

このところ米国の失業率、非農業部門新規雇用数など雇用統計に悪化の兆しが出てきて、世界の株式市場にはいっそうの警戒感が漂い始めています。世界景気のリード役だった米国経済に減速感が強まれば、景気敏感・循環セクターの出番はないと考えるのが一般的でしょう。

加えて中国の経済指標にも改善の兆しが全く見えません。しばらくは消費などの内需関連、フィンテック、自動運転などの新しいテーマ関連の投資を考えざるを得ないでしょう。

大手化学株について筆者は昨年から弱気説を取ってきましたが、では、いつそのスタンスを転換できるのかについて、最後に考えてみたいと思います。

筆者は世界の石油化学のプラント稼働率が2018年前後にタイトになると予想しています。一方、2017~2018年には米国の安いシェールガス・オイルを原料にした大型の石油化学プラントが立ち上がり、世界の需給関係が悪化するという見方が今でも主流です。

ですが、現在の原油、天然ガスの市況は思いのほか安く、シェールガス田のプロジェクトは軒並み停止ないし遅延しています。この結果、米国におけるプラント建設は大幅に遅れる可能性があります。

これは過去の経験からすると良いサインです。その根拠は以下の通りです。

  1. 原油が安くなり石油化学製品の価格も同時に下がります。一般消費財に使われるプラスチックの価格低下は需要を喚起します。特に新興国が牽引役になります。
  2. 結果、プラントの稼働率が上昇します。上記の米国の状況から、新規稼働が遅れるので需給がひっ迫します。
  3. 需給のひっ迫で原油、天然ガスの市況が徐々に上向いてくると、製品価格の値上げ機運が出てきます。
  4. こうした需要増や価格上昇により収益が押し上げられます(この時点でアナリストが強気に転じてきます)。
  5. 株価は既にボトムを打って上昇中です。

大手化学株への新規投資のタイミングを言い当てるのは、実は大変難しいのですが、あえてリスクを覚悟で予想すると、恐らく2016年夏以降から年末、2017年の年明けあたりではないかと見ています。

【2016年5月10日 石原 耕一】

■参考記事■

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>>資産運用初心者に分かりやすい日本株投資信託の見分け方

石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。