中国といえば厳しい話ばかりだが...

かつては成長市場と期待された中国市場も、最近では厳しい話ばかりが目立ちます。

たとえば、2016年5月13日に決算を発表した日立製作所(6501)は、2017年3月期の中国の市場環境について「不動産業や過剰生産能力を抱える製造業を中心に投資・生産が低迷」するとし、建設機械や昇降機などが引き続き苦戦する可能性を示唆しました。

こうした中、「おや?」と目を引いたのが富士電機(6504)です。同社は2016年4月28日に開催された決算説明会及び中期経営計画説明会において、中国大連工場の生産能力を倍増する考えを表明しました。

同社は2016年3月期に大連工場の能力を従来の2倍の5万台/年に引き上げたばかりですが、今回の説明会では中計の期間中(2017年3月期~2019年3月期)に、これをさらに10万台/年まで増強する考えを示しています。

富士電機は、国内の自販機市場ではトップメーカーですが、自販機事業の量産技術や、ヒートポンプを活用した省エネ技術を活かして、中国でもこれから積極攻勢に出る考えのようです。

富士電機はなぜ中国で増産を行うのか

中国の景気減速が伝えられる中で、なぜ今、積極投資なのでしょうか。この答えとしては“大衆のライフスタイルの変化”があげられます。

中国では経済発展に伴う生活水準の向上により、大衆消費者の嗜好が多様化してきています。そのため、これまでように「熱いお湯で入れたお茶を飲む」だけではなく、冷たい炭酸飲料や温かいコーヒーを、缶やカップで日常的に飲む人口が増加傾向にあるのです。

こうした変化を背景に、中国でも日本と同じように、工場、事務所、大学、病院、空港や鉄道駅など様々な場所に自動販売機が設置されつつあります。

つまり、富士電機が相次いで増産投資を行う背景には、景気減速を越えるほどのライフスタイルの大きな変化があると見ることができます。

今後の注目点

今後は、需要が期待通りに拡大するのか、また、量産技術や省エネ技術を差別化要因として中国の地場メーカーとの競争激化を中期的に回避できるかを注視したいと思います。

ちなみに、同社の自販機事業が含まれる食品流通セグメントの2016年3月期の営業利益は80億円(全社の約18%)ですが、今回発表された中期計画では、2019年3月期に90億円まで拡大させることを予想しています。

現状では、国内事業で大半の利益を稼いでいますが、人口減の影響等により国内の自販機事業の伸び悩みは避けられないため、目標達成のためには中国での成長が大きなカギを握ると考えられます。

 

LIMO編集部