日本を代表する製造業へ成長が期待される航空機産業

MRJ、ホンダジェットの登場で株式市場の注目度も上昇中

Darren Brode / Shutterstock.com

なぜ航空機産業が株式市場で注目されるのか?

昨今、MRJやホンダジェットなど、国産航空機の話題がニュースを賑わせていますが、航空機産業は株式市場でも注目のテーマです。その理由として、以下の3点が考えられます。

第1の理由:中長期的に安定成長が見込まれる

日本航空機開発協会によると、今後20年間(2015年~2034年)、世界の民間航空機の新規納入機数は32,688機(新規需要53%、代替需要47%)。既存機4,459機を加えた2034年時点での合計運行機数は37,147機となり、2014年実績の19,877機と比較すると、ほぼ倍増することが予測されています。

続きを読む

こうした強気な需要予測の背景には、世界の航空旅客輸送量が2014年から年率+4.7%で成長し、2034年には2.5倍(2014年比)に拡大すると見込まれていることがあります。

1994年~2014年の20年間に年率+4.9%で成長し2.6倍に拡大していたこと、世界人口の増加が不可逆的であることなどを考慮すると、この予想は決して楽観的ではないと考えられます。実際、ボーイング社、エアバス社ともに、現在は大量の受注残を抱えています。

第2の理由:航空機産業の中で日本企業のプレゼンスが高まっている

航空機産業の大きな特色として、1機あたりの部品点数が数十万点から数百万点に及ぶため、機体メーカーの下に基幹部品メーカー(Tier1)、下請け(Tier2、Tier3)が階層化した産業構造を形成していることが挙げられます。

世界の民間航空機市場は、米ボーイングと欧州エアバスによる寡占状態にあるため、大半の日本企業は下請け企業にならざるを得ないことが多かったと考えられます。しかし、この階層構造の中で、日本メーカーは着実にプレゼンスを高めています。

たとえば、ボーイング向けの場合、従来の主力「767」型機における日本企業の製造割合は16%であったのに対し、最新の「787」型機ではこの比率が35%に高まっています。

また、2016年2月12日付け日本経済新聞よると「三菱重工業と川崎重工業、富士重工業の3社が、米ボーイングに次世代小型旅客機の共同開発を提案した」と報じられており、今後は単なる下請けからリスク・レベニュー・シェアリング・パートナーとしての存在感が高まると考えられます。

このため、かつての主力産業であった電機業界が凋落する中で、航空機産業は自動車に続く日本を代表する製造業として注目度を高めていくと考えられます。長期的な成長余地という観点で見れば、自動車産業よりも大きな期待が持てるのではないでしょうか。

第3の理由:部品製造だけではなく、完成機ビジネスも本格的な拡大期に入ってきた

日本の航空機産業は1945年の終戦以降、機体生産のみならず、部品生産から研究・実験も1952年の朝鮮戦争まで禁じられていました。このため、戦前まで世界最高水準にあった多くの航空機関連メーカーが撤退に追い込まれました。

その後、1980年代頃からボーイングとの共同開発で技術力を高めてきた日本メーカーは、ついに完成機ビジネスにおいて、再び世界に向けて羽ばたく時期に差しかかっていると言えるでしょう。

最近の例では、ホンダが2015年末に小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の初号機を米国で納入しており、米国工場で年間80~100機を量産する計画です。また、三菱重工は、MRJの組立工場での量産準備を今秋から計画しており、2017年から量産を開始し、2019年から本格的な量産体制に入ることを目指しています。

ビジネスとして完成機事業が成功に至るまでには、今後も様々な紆余曲折が予想されます。しかし、航空機産業関連のニュースフローが増加することは間違いないと見られるので、株式市場での注目度は今後も一段と高まっていくと考えられます。

アナリストが注目する航空機産業のポイントと関連銘柄

前述の通り、世界の民間航空機産業の長期需要は右肩上がりの成長が期待でき、日本企業のプレゼンスも高まっています。また、短期的に見ても、原油価格の下落等によりエアライン各社の業績改善が目覚ましく、新型機導入への投資余力が高まっていることも、航空機産業にとっては大きなサポート要因です。

さらに、航空機の主要部位は、機体構造(エンジン以外の胴体部分)、エンジン、装備品(脚部品、飛行制御装置、タイヤ、化粧室、AVシステムなど)、素材(チタン鍛造品、アルミ鍛造品、炭素繊維)に分かれますが、いずれにおいても、安全性を確保するために高い品質を求められることに注目すべきでしょう。

安全性確保のための品質重視であるため極端な価格競争に陥りにくいこと、既に納入実績を持つ企業は新規参入企業に置き換えられるリスクが非常に限定的であることなども、この業界に係わる企業にとっては大きな魅力であり、アドバンテージでもあります。

常に部品サプライヤーが入れ替わる民生エレクトロニクスやIT業界とは、この点で大きく異なるため、個人投資家は、需要動向をじっくりと見定めながら長期投資を検討することが可能です。

具体的な関連銘柄としては、機体構造では三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)など、エンジンではIHI(7013)、素材では東レ(3402)などが挙げられます。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。