半導体製造装置株はなぜ買われたのか

2016年5月23日の東京株式市場では、東京エレクトロン(8035)、日立ハイテクノロジーズ(8036)、日立国際電気(6756)、アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)などの半導体製造装置関連株が軒並み上昇となりました。

スマホ市場の減速などで足元の半導体市場についてはネガティブな話が多い中、なぜ半導体製造装置関連株は注目を集めたのでしょうか。

この背景としては、5月19日に決算を発表した世界最大の半導体装置メーカーである米アプライド マテリアルズの20日の株価が好決算を背景に+14%高となったことや、5月20日に日本半導体製造装置協会(SEAJ)が発表した2016年4月の国内半導体製造装置メーカーのBBレシオ(3か月移動平均、暫定値)が1.16となり、5か月連続で1を上回ったことなどが考えられます。

米アプライド マテリアルズの決算では受注好調を確認

まず、アプライド マテリアルズの2016年10月期Q2(2-4月)決算が好感された理由を考えてみましょう。売上高は前年同期比横ばい、当期純利益は同▲12%減となり、実績数値を見る限り、大幅高になるような内容ではありませんでした。ただし、新規受注高は前年同期比で+37%増、前四半期比で+52%増と大幅に伸びており、そのことが注目された可能性が高そうです。

同社の決算発表資料によると、当四半期の受注は四半期ベースで過去15年間で最大とのことです。また、受注の中身を見てみると、半導体製造装置だけではなく、ディスプレイ用(液晶や有機EL向け)も受注が大幅に伸びていることが確認できます。足元の収益ではなく、受注増加による将来の収益改善期待が株価の上昇要因であったと見ることができると思います。

BBレシオがなぜ好感されたのか

BBレシオについても少し補足したいと思います。BBレシオとは、販売額(billing)に対する受注額(booking)の比率のことで、通常、3か月移動平均の売上高、受注高を用います。これが1を上回ると将来の景況感は改善傾向へ、下回ると悪化傾向に向かうと考えられます。

SEAJの発表資料によると、2016年4月の日本製半導体製造装置の販売額は1,174億円(同▲15%減)、受注額は1,361億円(前年同期比+5%増)でした。販売額だけに注目すると,前年割れのため業界の景況感はまだ良くないということなります。しかし、受注高が増加しており、BBレシオも1.16と1を上回っているため、多くの市場参加者が先行きは良くなるだろうというポジティブなシグナルとして、この発表数値を捉えたと推測されます。

今後の注目点

投資格言の1つとして、“噂で買ってニュースで売る”がありますが、半導体製造装置株はその典型例です。足元の収益は冴えなくても、将来はよくなるだろうという見方で株は買われ、また、その逆(足元の収益売上は伸びているが受注が減少してきている)の場合は、売られることになります。

足元の半導体メーカーの収益状況は、スマホ市場の減速により冴えない状態がまだ継続していますが、新製品の販売増によりいずれ良くなるだろうという見方から、半導体メーカーは半導体装置メーカーへ製造設備の発注を増やしています。

期待通りに需要が回復すれば半導体メーカーの業績は改善し、さらに設備投資の増額を行うため、半導体メーカーも半導体装置メーカーも需要回復の恩恵を受けることになります。一方、期待はずれになった場合は、過剰投資ということになってしまい、設備投資は抑制されることになります。

現時点では、どちらになるかを正確に予測することはできませんが、BBレシオが1を上回っていますので、当面は将来の業績改善を期待した買いが継続する可能性が高そうです。ただし、繰り返しになりますが、過剰投資となってしまう可能性もあるということを頭の片隅に入れておきましょう。

 

LIMO編集部