グーグルはなぜ自動運転車に取り組むのか

自律運転技術開発センターを設立したグーグルの目論見

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グーグルが自律運転技術開発センターを設立

グーグルは、2016年5月26日にGoogle+の中で、自律運転車プロジェクトの一環でデトロイト近くのノバイ(ミシガン州)に自律運転技術開発センターを設立することを発表しています。

同ポストでは、ノバイに拠点を置いた背景について、現在のパートナーがグレーター・デトロイト州周辺に多いこと、現地パートナーとこれまで以上に協業しやすくなること、そしてミシガンの優秀な自動車開発やエンジニアリングの専門家と組みやすくなることが述べられています。

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また、最初に成し遂げるべき仕事は、クライスラー・パシフィカのハイブリッドミニバンの自律運転化であるとのことです。

グーグルが自動車事業に取り組む背景

では、米国ネット検索大手のグーグルは、異業種であるにもかかわらず、なぜ自動運転車に取り組むのでしょうか。この点について、「Google vs トヨタ」などの著書もあり、個人投資家向け金融経済メディアLongine(ロンジン)のアナリストでもある泉田良輔氏に話を伺いました。

――なぜグーグルは自動車産業に進出しようとしているのでしょうか。

「グーグルは、グーグルXというプロジェクトでセルフ・ドライビング・カー(自律運転車)に取り組んでいます。ネット上の検索とそれに伴う広告事業を行っているグーグルは、これまでリアルとの接点が限られていました。グーグルXはハードウェア中心に取り組むプロジェクトです。これまで以上にインターネットとリアルの接点を増やそうという取り組みです。」

「もちろん、グーグルにも自律運転車を開発するすべてのリソースがあるわけではないので、今回のように米国の自動車産業の拠点に開発センターを開設するのでしょう。グーグルはこれまでもスマートフォンなどハードウェアのデザインにも取り組んできましたが、その点ではアップルなどと比較するとあまり得意ではないように見えます。いずれにせよ、自動車のバリューチェーンを考えれば、デトロイトという選択は理にかなっていると言えます。」

――グーグルは自動車事業において今後はどのような事業モデルを展開するのでしょうか。

「現時点でははっきりしませんが、いくつかの選択肢があります。グーグルの強みを考えれば、自律運転可能なハードウェアを生産して消費者に販売するよりは、ハードウェアは第3者に納入させ、グーグル自身は自律運転システムサービスの提供者となる方が現実的かもしれません。」

「また、グーグルがリース事業を立ち上げて、自社の自律運転システムに最適なハードウェアを設計して調達し、それらを事業者や個人に貸し出すという選択肢もあります。」

――グーグルから配車アプリはどのように見えているのでしょうか。

「グーグルのベンチャーキャピタルは配車アプリ・Uber(ウーバー)に投資もしていました。将来的に自律運転システムと配車アプリを掛け合わせることができれば、個人が利用できる移動交通システムを構築することができます。したがって、都市で走り回る自律運転システムを考えれば、必要なパーツと言えるでしょう。」

「顧客とのタッチポイント(接点)の数が多い方が今後の事業展開には有利なので、自律運転システムという規制やインフラの整備を含めて、時間軸の長い事業に取り組む前の準備としては始めておいた方が良い事業だと思います。」

――グーグルと自動車メーカー(OEM)との関係はどのようになるのでしょうか。

「グーグル1社だけではすべての開発はできないので、自動車メーカーとのつながりは維持していくでしょう。別業種ですが、日本の通信事業者(オペレーター)と電機メーカー(ハードウェア供給者)のような関係になっていくかもしれません。」

「その際、自動車メーカーはハードウェアに特徴を持たせないと、交渉力をオペレーターに奪われかねません。そのようにならないためにも、アップルのiPhoneのように、ハードウェアとiTunesやApp Storeといったサービスプラットフォームとの組み合わせに競争優位を確立するような取り組みが必要になるでしょう。」

まとめ

グーグルが技術開発センターを設立した背景には、自動車という巨大な産業にテクノロジーを持ち込むことで、様々な事業機会があると見ていることがあるようです。日本の基幹産業である自動車産業が、テクノロジーによってどのような競争に巻き込まれていくのかについて、引き続き注目していきたいと思います。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。