消費増税延期は織り込み済み。財政出動明示されず失望売りへ

2016年6月3日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は、前日より79円68銭高の16,642円23銭となりました。3日ぶりの値上がりです。

まず先週の動きを振り返りましょう。5月30日、31日と終値が17000円を超えました。しかし、全般的に商いが薄く、上値の重い展開でした。

6月1日夕方に安倍首相が消費増税の再延期を表明しました。ただし、市場は再延期を織り込んでおり、すでに株価の上昇が進んでいました。一方で、首相が具体的な財政出動に言及しなかったため、投資家の間に失望感が広がり、2日は全面安となりました。

為替相場は、さまざまな材料で神経質に上下する動きが続いています。3日は米雇用統計が発表されましたが、市場の予想を下回ったことからドルを売って円を買う動きが加速されました。円相場は一時、1ドル=106円台にまで急伸しました。

来週以降の見通しですが、まず東京株式市場の大引け後に急速な円高になったことに注意が必要です。

英国では6月23日に、欧州連合(EU)からの離脱の賛否を問う国民投票が行われます。当初は残留派が優勢と伝えられていましたが、最近行われた世論調査では離脱を支持する声が残留を上回っているようです。仮に離脱するようなことになれば、投資心理はさらに冷え込み、日本の株価にも影響を与えることになるでしょう。

米国は6月か7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げを行う見込みです。ただ、実際に利上げが行われても、たとえば1ドル=120円台までの円安になることは考えにくいところです。

米景気や世界経済の先行きに対する投資家の警戒感が強まっています。「有事の円」とまでは行かないでしょうか、「不安を感じたらとりあえず資産を円に換えておく」という海外の投資家が少なくありません。

今後も、特定の材料で急に円高方向に振れるといった動きも起こりそうですので注意したいところです。

前述したように、商いが非常に少ない状況になっています。特定の材料で、急に上下する可能性もあります。柔軟な対応ができるよう、ニュースなどに注意するようにしましょう。

17,000円超えに保ち合い放れが期待されたが、再びレンジへ戻る

今週の動きをテクニカル面から見ると、5月31日には一時、17,251円まで上昇しましたが、その後、6月1日~3日にかけて大きく値を下げました。

5月11日あたりから、上値は16,800円、下値は16,400円という小さな幅で上下を繰り返していました。先週はここを上抜けたことから保ち合い放れも期待されましたが、再び戻る動きとなりました。

上下の動きが読みづらい状況、方向感を見極めたいところ

今後の展開ですが、再度レンジ内に戻ってしまってしまったことから、方向感が読みづらい状況になりました。

まずは再度レンジを上抜けることができるのか、あるいは保ち合いの下限がサポートになるのかどうかを確認したいところです。レンジの上限である16,800円を超え、ここが下支えになるようであれば、5月31日の17,251円超えも見えてきます。

逆に、レンジの下限である16,400円以下になるようであれば上目線は持ちづらいところです。

といっても、現状の株価は2月12日の安値(14,865円)と、4月8日の安値(15,471円)を結ぶ上昇トレンドラインのチャネル内です。下値のめどとしては、5月2日の安値(15,975円)となりますが、ここを下回っても、チャネル下限からの反発もあります。

トレンドラインがサポートされない場合には目線は下になるでしょう。この場合の下値のめどは、4月8日の安値(15,471円)となります。

下原 一晃