相次ぐ不正問題、自動車業界は消費者の信頼を取り戻せるか?

2016年を表す漢字を再び「偽」にしてはいけない

この記事の読みどころ

  • 昨年秋のVWの排ガス不正問題以降、自動車業界を表す漢字は「偽」に尽きます。
  • 日本でも燃費不正問題から、消費者のクルマに対する信頼が揺らぎ始めています。
  • 消費者が性善説に立たないことを前提に、自動車メーカーは信頼回復に努めることが急務です。

12月12日は『漢字の日』

まだ先の話ですが、12月12日は公益財団法人「日本漢字能力検定協会」が制定した『漢字の日』となっており、毎年この日の午後、京都の清水寺で“今年を表す漢字一文字”が発表されています。清水寺の貫主が、大きな筆でササーッと書くのが印象的ですが、最近は年末の恒例行事として完全に定着した感があります。

もう忘れてしまった人も多いかもしれませんが、2015年は「安」、2014年は「税」、2013年は「輪」でした。今振り返ると、やはり、消費増税を実施した2014年は、それなりに大きな影響があったのでしょう。先日、消費再増税が延期になりましたが、さすがに今年は「税」ではないような気がします。

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昨年秋のVWの排ガス不正問題から始まった自動車業界の「偽」

さて、昨年秋以降の自動車業界を表す漢字と言えば、やはり「偽」に尽きます。偽りの“偽”、偽装の“偽”です。発端は、昨年9月18日、世界有数の自動車メーカーであるVW社がディーゼルエンジンの排出ガス数値を不正操作していたことが明らかになりました。

VWはトヨタ自動車と販売台数の世界一を競う大企業です。そのような大企業が起こしたスキャンダルは、世界中に大きな衝撃を与えました。VWのリコール対象台数は1,000万台超となり、業績の大幅悪化を強いられました。なお、このリコールは、現在もまだ継続している模様です。

その後、VWほどの規模ではありませんでしたが、ディーゼルエンジンでの排ガス偽装問題が欧州を中心にいくつか発覚しています。その中には、政府当局(日本の国土交通省に該当する機関)が本格調査に乗り出すに至った件もありました。

日本でも自動車業界の「偽」が次々と明らかに

そして、今度は日本です。4月20日に三菱自動車の燃費不正行為が明らかになり、経営を大きく揺るがした結果、日産自動車の資本傘下入りして再建を余儀なくされています。

この三菱自動車の燃費不正に驚いた国交省が調査に乗り出したところ、5月18日にスズキの排ガス・燃費性能の不正行為疑惑が出てきました(注:会社側は「不適切事案」と称していますが、「不正行為疑惑」とします)。現在、国交省の立ち入り調査が行われている段階です。

スズキの場合、現時点では経営を揺るがすような事態にはなっていませんが、新車販売は大きく落ち込み始めており、まだ楽観視できません。

株価で全てを決めるわけではありませんが、今回の問題発覚後、三菱自動車の株価は一時、発覚前の半値に下落しました。スズキの株価も発覚直後に急落し、その後も軟調に推移しています。投資家の目が非常に厳しいことを物語っています。

性善説に立たない消費者の信頼回復が急務

今回の三菱やスズキの問題で明らかになったのは、こうした燃費性能等の数値が、自動車メーカーの自主申告だったことです。自主申告した数値は一切検証されることなく、消費者に信用されていたことになります。

今後は、今まで性善説に立っていた消費者の多くは、クルマの性能に対する疑念を強めるでしょう。信頼回復は待ったなしです。まずは、消費者の信頼回復に向けて、たとえば国交省が検証専門の第三者機関を設立するなど、具体的な施策が求められます。もちろん、自動車業界の自助努力が必要不可欠であることは言うまでもありません。

ちなみに、その年を表す漢字に「偽」が選ばれた年が、過去に1度あり、それは2007年でした。当時は食品表示の偽装、年金記録のずさんな管理等が大きな社会問題になりました。そして、それら「偽」に該当した問題は、信頼回復まで長い時間を要しています。今年、2016年の漢字が再び「偽」にならないことを切に願います。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。