いよいよ東証マザーズ指数先物が取引開始。市場はどう変わる?

マザーズ市場の上昇要因になるか―3つの効果を探る

2016年に入り好調続く東証マザーズ指数

2016年に入りTOPIXに代表される日本の主力株価指数が調整を続ける一方、特に3月以降、東証マザーズ指数が急上昇しています。実際、昨年末から2016年6月7日までを見るとTOPIXが▲13%下落したのに対して、東証マザーズ指数は+29%上昇しています。

マザーズ上場銘柄には、為替や景気に左右されにくい、あるいは左右されるとしてもそれを乗り越えるだけの成長ポテンシャルを持っている企業がたくさんあり、これが評価されたと考えられます。

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東証マザーズ先物指数が2016年7月19日取引開始へ

さて、この東証マザーズ指数の先物取引が2016年7月19日から始まります。これは日経平均先物やTOPIX先物と同じような株式先物の取引所取引です。個人投資家にも参加が可能になるよう準備を進める証券会社もありますので、身近な株価指数先物になるかもしれません。

東証マザーズ指数のおさらい

では、東証マザーズ指数とはどんな指数なのか簡単におさらいしておきましょう。JPXによれば、マザーズ市場に上場する内国普通株式全銘柄を対象に、浮動株調整時価総額加重型で算出された株価指数ということです。

非常に簡単に言うと、マザーズ上場企業の株式時価総額を調整して足しあげた総額の値動きの推移を示します。この算出方法は、日経平均株価ではなく、TOPIXと同じ方法になります。

先物取引導入による効果とは?

一般に先物取引が導入されると、ヘッジ、裁定、スペキュレーションなどのさまざまな取引が可能になり、投資家の裾野が広がると言われます。こうした説明は既にさまざまなところにありますので詳細はそちらに譲ります。むしろ知っておいていただきたい効果は次の3つです。

第1に、マザーズ指数の売買が先物によって簡単になるという利便性です。従来であれば、指数構成銘柄を個別に買うか、ETFや投信を探すかしか手がありませんでした。これからは、先物の売買であっという間にマザーズ指数のポジションを取ることができるようになります。

第2に、先物ですから、比較的簡単に売りから入ることができるようになります。従来であれば信用取引で個別株ないしETFを売るしか方法がありませんでした。先物を売りから入ると、比較的容易に売りのポジションを作ることができます。

第3に、参加者が増えることで(少なくとも平時であれば)先物も個別銘柄も流動性が厚くなるということです。おそらくこれが最大の効果と言えるでしょう。

先物取引導入で注意したいこと

読者の皆さんは、「先物が始まると、マザーズ指数は上がるのか?」とお考えかもしれません。しかし、その問いに対する答えはせいぜい「そうかもしれない」というのが正直なところです。先物取引が始まり流動性が高まると、従来よりも安心してマザーズ市場に投資をする投資家が増えても不思議ではありません。そういう意味では指数上昇要因と言えるでしょう。

しかし、先物の登場で売りから入る投資家も増えるかもしれません。価格形成がより洗練されるということは言えますが、上がるか下がるかは、やはり指数を構成する各企業の将来性と投資家のセンチメントにかかっています。

マザーズ市場の銘柄を見ると、足元の財務体力や現金創出力よりも将来の成長性を評価されている銘柄が数多くあります。これは、とりもなおさずこれらの株価が将来性の見方の変化に大変敏感に反応すること、つまり株価のボラティリティがもともと高いことを意味します。

先物取引の登場で、そのボラティリティが低下するかは正直わかりません。また、株価が下げるとき、先物市場が存在しても流動性が枯渇する傾向があるのは歴史が示すところです。

マザーズ市場を育成するなら卒業生を輩出することが必要

これまで見たように、マザーズ指数に先物が導入されることは、マザーズ指数の認知を高め流動性が高まるうえ、投資主体や投資手法が広がるという意味で歓迎したい動きです。

一方、マザーズ市場が新興企業へ株式というリスクマネーを供給するという使命を負っていることを考えると、少し残念に思う点もあります。

そのことを考えるために、マザーズの浮動株調整後時価総額上位3銘柄(2016年5月末時点)を日本取引所のウェブサイトからピックアップしてみましょう。会社名、時価総額、時価総額シェアの順に表記します。

そーせいグループ(4565)3,107億円 16.9%

CYBERDYNE(7779)2,350億円 12.8%

ミクシィ(2121)1,443億円 7.8%

いかがでしょうか。上位3銘柄で時価総額シェアは37.5%にものぼります。これはさすがに指数と言うには銘柄集中が大きすぎるというのが率直な印象です。また、いったんこの状況で先物取引を開始すると、指数投資家の存在が強まり、これら3銘柄がマザーズを卒業することが難しくなるかもしれません。

この3社の時価総額はもはや新興企業と呼べる規模ではありません。むしろこれらが東証1部に移行し、より分散した、そしてよりフレッシュな企業で構成されるマザーズ指数の方がマザーズ市場のあるべき姿にふさわしいとも思えます。

マザーズ市場は、もっと多くの卒業生の輩出と新入生の組み入れによる活性化が求められているように思います。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。