決算資料をAIにより読み取るシステムを開発

投信運用会社の大和証券投資信託委託(以下、大和投信)は、2016年6月7日に「AI を利用した WEB 上の業績要因情報抽出技術の産学共同開発開始について」というプレスリリースを発行しました。

その発表内容は、同社が成蹊大学理工学研究所と共同で決算短信やプレスリリースなどの膨大なテキストデータから、企業価値や投資判断に影響を与える文章を選別・要約する技術を開発したというものです。

AI(Artificial Intelligence)とは人間の知能を人工的に実現させようとするソフトやコンピュータシステムのことで、以下のように大きく分けて3つのタイプがあります。

1)センサーから様々なデータを集めて故障診断などを行う「運転判断型AI」
2)文章テキスト等のWeb検索、評判分析を行う「質問応答型」
3)画像・音声などのデータをもとに顔認識や音声認識などを行う「パターン認識型AI」

今回の発表は2)に相当するものと言えます。活用される技術は、インターネットから集められた自然言語による大量のデータをコンピュータによって解析し、そこから法則や何らかの有用な知見を得ることを目指すデータマイニング技術です。

同社では、この共同研究の成果を2016年中には実際のファンド運用に活用していく予定です。資産運用業務は、日々、大量の文書データの収集と分析に多くの時間が費やされています。同社では、AIを活用することでこの作業を効率化し、スピードアップを図ることで運用パフォーマンスの向上に結び付けたいとしています。

いずれファンドマネージャーは不要になる?

少し話がそれますが、最近、米国の最大の投資銀行において、業務時間の服装に関する規定(ドレスコード)が大幅に緩和されたというニュースがありました。さすがにTシャツ、ビーチサンダルは認められないものの、ネクタイだけではなく、スーツも着用しなくてもよいと認められたそうです。

このニュースで重要なことは、変更の目的が日本でのクールビズ導入(省エネによるエアコンの設定温度上昇や真夏の仕事効率改善のため)とはやや異なり、他業界との比較からの決定であったということです。その他業界とは、シリコンバレーでのハイテク産業です。

金融にハイテク技術を結びつけたフィンテックを進めるためには、シリコンバレーの優秀なソフトウエアエンジニアを採用する必要があり、そのためには堅苦しいドレスコードを緩和する必要性があったということなのです。

このように、米国金融界のフィンテックへの取り組みに対する本気度は高いものがあります。また、米国の動きは必ず日本へも波及することを踏まえると、今回の大和投信の取り組みは、業界全体では氷山の一角に過ぎないという推測が可能になります。つまり、資産運用業界でも、AIで行える仕事はAIに任せるという時代がもうすぐそこまで来ていることを示唆しています。

携帯電話の急速な普及により街中で公衆電話を見かけなくなってしまったように、AIの普及で運用会社からファンドマネージャーがほとんどいなくなってしまう時代が訪れることになるでしょうか?

もちろん、すぐにということではないですが、AIには自己学習機能もありますので、時間の経過とともに相当数の人的リソースが削減される可能性は安易には否定できないと思われます。時代は大きく変わりつつあるようです。

 

LIMO編集部