プチ“EU離脱ショック”も? 日本にダブルパンチ懸念

日本の経済・産業界に為替と関税の重荷

この記事の読みどころ

  • 6月23日に英国の欧州連合(EU)離脱是非を問う国民投票が実施されます。
  • 日本の経済・産業界にも無関係ではありません。離脱となれば、為替と関税がダブルパンチで効いてきます。
  • 最悪の場合、プチ“EU離脱ショック”が起きる可能性がありますので、注意が必要です。
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6月23日は英国のEU離脱是非の国民投票

現在、国際政治経済問題での最大の注目は、6月23日に実施される英国の欧州連合(EU)離脱是非を問う国民投票でしょう。投票日が間近に迫ってきた中、各種世論調査によると、賛成・反対は拮抗しているようです。

英国政府、及び、ドイツなどEU主要国は、離脱反対という立場です。しかし、昨今の難民流入問題や労働力流動化による雇用減少懸念等から、英国内には離脱を支持する政治家や著名人が少なくありません。

日本の経済界にも無関係ではない

遠く日本から見ていると、“英国がEUに残留しようが離脱しようが、日本に関係ないじゃないか”と思う方がいるのではないでしょうか。いや、決して無関係ではないのです。最悪シナリオの場合、リーマンショックのような超メガトン級の経済危機ではありませんが、プチ“EU離脱ショック”は十分起こり得ます。

そもそもの発端は、英国が通貨ユーロを導入しなかったこと

ところで、今回のEU離脱問題が騒がれ始めてから、“あれっ、英国はEUに加盟していたの? 英国は通貨ユーロを導入していないよ”と疑問に思った人がいるかもしれません。確かに、素朴な疑問ですが、重要な指摘です。

実は、英国はEUに加盟している主要メンバーですが、通貨統合には加わることなく、現在もポンドを使用しています(他に、スイス、スウェーデンなどもユーロ未導入)。英国は様々な事情があって、通貨ユーロの導入を見送ったのですが、これが産業界には深刻な問題となって今日に至っています。

英国には諸外国の様々な産業が進出して、相応に大きな規模の生産拠点を有しています。その進出の背景には、英国政府による補助金支給や、他の欧州諸国における労働争議問題などがありますが、ここでは省略します。今、英国に進出した産業界はほぼ例外なく、EU離脱に反対していますが、それを日本の自動車産業を例にとって説明しましょう。

英国工場からEU域内への輸出は為替の影響を受ける

英国には日本の大手自動車メーカー(トヨタ、ホンダ、日産)の大規模な工場がありますが、そこで生産したクルマの約6~7割をEU域内(一部ロシアなど域外含む)に輸出しています。

その輸出で大きな問題になるのが、為替と関税です。現在はEU加盟国であるため、EU域内への輸出は原則、非関税です。ところが、英国が通貨ユーロを導入していないため、為替の影響が発生しています。

1999年の単一通貨ユーロの誕生以降、ほぼ一貫して「ポンド高ユーロ安」が続いており、多額の為替差損を負っているのが現実です。また、人件費や生産性を鑑みると、英国工場での生産コストは相対的に高く、EU域内向けの輸出事業は非常に厳しい採算と見られます。

EU離脱となれば、為替と関税のダブルパンチ

もし、英国がEU離脱するとなれば、EU域内向け輸出には一律の規定関税が課せられるでしょう。各社の英国事業の採算が、ただでさえ厳しい現状よりもさらに悪化するのは明らかです。その結果、工場の低稼働率を余儀なくされ、将来的には「撤退」という選択肢が出てきても不思議ではありません。

少なくとも、更新維持を含めた追加投資は、大幅削減となることは確かです。正しく、通貨と関税のダブルパンチとなるのです。

また、主要メンバーの英国がEUを離脱した場合、通貨ユーロが大幅に下落することも想定されます。つまり、円高になるということです。この場合、日本からの輸出も大赤字は必至です。こうした“負の構造”は、自動車産業だけでなく、電機、化学、素材など他の産業にも同じことが言えます。

英国がEUに留まるか、離れるかは、英国の国民が決めることです。他の国があれこれ口を出すことではありません。しかし、内心では“残留してくれ”と願いながら23日の国民投票の結果を待つ人が多いのでしょう。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。