釣り旅で毎年通う北海道東部

筆者はサケ・マス類を追い求める釣り旅に出ることを無上の喜びとして、毎年、決算が一段落する6月中下旬に北海道遠征を10年以上続けています。愛車のワゴンに釣り道具、キャンプ道具、食料を積み込んで、毎年、大体同じコースを走ります。

以前は千歳周辺の湖、釧路市から近い阿寒湖を中心にドライブしながら釣り歩いていました。最近は徐々に北上して名寄市近くの朱鞠内湖(しゅまりないこ)、稚内近くの猿払川(さるふつがわ)に“幻の魚”イトウを求めて走り回っています。今回は、北海道に通う中で目についたことを雑記風に書き留めてみます。

阿寒湖温泉街に見るインバウンドの恩恵、光と影

マリモの生息地として有名な阿寒湖に生息するアメマス(エゾイワナ)、大型のニジマスは釣り人を興奮させ続けています。筆者もほとんど毎年阿寒湖に通い、何とかゲットして自己満足しています。阿寒湖温泉地区の近くには百名山の雄阿寒岳がそびえ、その雄大で優雅な自然は世界遺産級だと思います。

人口がたったの1,271人に過ぎない阿寒湖温泉地区ですが(釧路市住民基本台帳、2016年5月末)、夜の温泉街は中国語が公用語のように飛び交っていました。台湾や中国の観光客が激増しているそうで、驚いたことに温泉街に免税店までできているほどです。

今年は年明け以降、円高もあって訪日外国人数の伸び率が鈍化しているようですが、阿寒湖温泉地区の、特に大型のホテルは中国人観光客で一杯になると聞きました。阿寒湖などの道東を撮影現場にした中国映画『狙った恋の落とし方。』(中国語原題『非誠勿擾』、2008年公開)の大ヒットが契機なのだそうです。

札幌やニセコ周辺は、外国人観光客・スキー客で活況と以前から聞いていましたが、道東内陸部の阿寒湖周辺にもインバウンド効果が波及しているのは嬉しい話です。

ただ、建物のリノベーションで賑わっているところはカラカミ観光チェーンのような大型ホテルで、古い旅館風のところは依然として寂しいという二極化が進んでいる印象を受けたのは残念に思います。

ところで、この阿寒湖温泉街になんとコンビニが5軒もあるのです。セイコーマート2軒、ローソン2軒、セブン-イレブン1軒ですが、筆者の記憶ではセブン-イレブンは最近の進出だと思います。

町に観光客が増え始めたので大手コンビニチェーンも採算が合うと判断したのでしょうが、どの店もそれほど来店客は多くないように見えました。インバウンド需要が一巡するといずれどこかが淘汰されるかもしれません。

北海道で圧倒的な存在感のコンビニ、セイコーマート

そのコンビニの話です。北海道のあちこちを走り回って一番困るのは食糧の確保ですが、現在ではほとんど問題ありません。大きな都市はもちろん、牧場が広がる小さな町にもセイコーマート(Seicomart)が必ずといっていいほどあるからです。

筆者は小売セクターのアナリストではないので細かい知識はありませんが、北海道では店舗数で40%弱のシェアでトップの存在です(『流通情報』2015年5月7日発行)。もともとは地元の酒販店が集まってできたコンビニグループで、1971年に札幌で開店した1号店は日本最初のコンビニエンスストアだそうです(セコマグループのウェブサイトより)。

このように、北海道におけるセイコーマートは、地の利と独自の商品ラインで、大手コンビニを寄せ付けない勢いがあるようです。特に店内調理の惣菜、弁当「ホットシェフ」、ワインの品揃えに特色があるとのことです。

釣れなくて夜が更け食べる物の確保がままならない時、ちょっと走ると見えるセイコーマートの存在は大変ありがたいものです。恐らく地元の方々もセイコーマートの品揃えの恩恵を受けているのではないかと推察します。

 

石原 耕一