なぜこの時期は役員報酬が話題になるのか

6月中盤から後半は株主総会のピークです。また、この時期になると上場企業の役員等の報酬に関する話題が増えます。

その理由は、2010年3月期から上場企業は役員報酬の総額だけではなく、1億円以上の報酬を受け取った役員、執行役、監査役について、総額とは別に個人名で有価証券報告書に開示することを金融庁が義務付けていることや、年度末の有価証券報告書が株主総会と同日に開示されるからです。

なんだか“人の財布”を覗き見するようで、少し卑しい気持ちにもなりますが、こうした情報からも株式投資に対するヒントが生まれるかもしれません。長期的に資産形成を目指す投資家は、躊躇せず、こうした情報も活用してみましょう。ちなみに、金融庁の情報公開サイト「EDINET」を使えば、誰でも簡単に最新の有価証券報告書を見ることができます。

ソニーの年俸1億円超プレイヤーは3人に

そうしたことを踏まえて、2016年6月17日開示されたソニー(6758)の2016年3月期有価証券報告書を見てみましょう。そこでは、3人の1億円超プレイヤーの名前を確認することができます。

トップは平井一夫 取締役代表執行役社長兼CEOで、基本報酬と業績連動報酬合計の報酬総額は5.13億円でした。2番目は吉田憲一郎 取締役代表執行役副社長兼CFOで1.47億円、3番目が鈴木智行 執行役副社長で1.36億円でした。

時系列で見ると、個別開示された人数は2010年3月期が7人、2011年3月期は6人、2012年3月期は3人、2013年3月期が3人、2014年3月期が2人、2015年3月期が2人で、2016年3月期は前年度より1人増加したものの、以前と比べるとまだ少人数に留まっていることが分かります。

ちなみに、同じ電機業界でも三菱電機(6503)の場合、2015年3月期の1億円超プレイヤーは23人もいました。こうしたことに鑑みると、まだソニーの復活は道半ばではないかという印象になります。

平井社長への一極集中が気になるところ

このように、1億円超プレイヤーの人数だけに着目すると復活途上ということになりますが、経営トップの年棒で見ると平井社長の2016年3月期の報酬総額5.13億円は、2010年3月期のハワード・ストリンガー代表執行役会長兼社長CEO(肩書きは当時のもの)の4.08億円を上回る同社の過去最高額となり、本格回復という見方もできます。

余談ですが、平井社長は2010年3月期から毎回、1億円超プレイヤーとして名前が挙がっており、7年間合計の報酬総額は13.07億円になります。

平井社長の報酬額からはソニーが本格回復といえるものの、1億円超プレイヤーの常連が平井氏だけで広がりが生まれないこと、つまり報酬面に限れば全員参加型の経営とはなっていない点は気になるところです。

有価証券報告書の分析だけからは解決できない難問ですが、この気になる疑問は、宿題として今後さらに精査していきたいと思います。

 

LIMO編集部