スパコンで中国が7回連続トップの座を確保

2016年6月20日、スーパーコンピュータ(以下、スパコン)の上位500位までの性能を評価するプロジェクト「TOP500」は、中国の国産新型機「神威太湖之光」がトップになったと発表しました。

TOP500は1993年からランキングを年2回(6月及び11月)定期的に発表していますが、中国製がトップとなるのは、2013年6月から7回連続になります。ちなみに、1993年からの1位確保の累計回数は米国が26回、日本が13回、中国が8回となっており、いかにここ数年で中国が力を付けているかが読み取れます。

また、スパコンの心臓部であるMPU(超小型演算処理装置)も従来の米国製ではなく中国製であった点、及びTOP500のうち167台が中国製で米国の165台を上回っていたことも注目されます。背景としては、中国が国策として半導体を強化していることや、2014年にIBMのサーバ部門を中国のレノボが買収したことなどが挙げられますが、“コンピュータ大国”として中国が力を付けていることは紛れのない事実と言えるでしょう。

日本は5位に後退

これに対して、日本の「京」(理化学研究所・富士通)は昨年11月の4位から5位に後退しています。

「京」といえば、2009年、当時の民主党政権下での事業仕訳で蓮舫議員から「2位じゃだめなんでしょうか」と予算削減を迫られたいわくつきのプロジェクトですが、2011年に2回、1位の座を確保したものの、その後は順位を落としています。

また、2015年11月に行われた税金の無駄遣いをチェックする行政事業レビューにおいても、自由民主党の河野太郎行革担当大臣から費用対効果が明確に説明されていないと批判を受けているため、首位奪還のために国の予算が大幅に計上されるような気配は全くありません。

スパコンは、防災(地震、津波の予知)だけではなく、航空機・自動車の設計、創薬、新素材などの研究開発を高度化、効率化していくためにこれからも必要性が益々高まる分野です。そこで、中国の後塵を拝して大丈夫なのかという不安がよぎります。

安心してください、日本は省エネで勝負します

では、いったい日本のスパコンはどこに活路を見出そうとしているのでしょうか。その1つのカギが、2016年2月に文部科学省が発表した「京」の後継機の基本設計に対する指針にあります。そこでは、計算速度で世界一の奪還を目指すのではなく、省エネ性能や使い勝手の良さなどを重視する方針が盛り込まれています。

計算速度をいくら高めても、莫大な開発費と高消費電力による多額のランニングコストを考慮すると、宝の持ち腐れになる可能性が十分に想定されます。このため、“計算速度で1位を目指さない”という方針転換は一定の評価が可能だと思います。

実際、TOP500と合わせて6月20日に発表されたスパコンの省エネ性能を競う「GREEN500」では、理化学研究所と日本のベンチャーExaScaler、PEZY Computingが共同で開発したスパコン「Shoubu(菖蒲)」が、3期連続世界第1位を獲得しています。

新聞報道等では、性能では中国が1位ということばかりがフォーカスされていますが、省エネ分野ではしっかりと実績を積み上げていること、それもベンチャーが中心となって開発が行われているということは心強いと言えるでしょう。今後に期待したいと思います。

 

LIMO編集部