株主総会まっさかり

今日6月22日は、アローラ氏の突然の退任発表に揺れたソフトバンクグループ(9984)をはじめ、東芝(6502)、日産自動車(7201)など120社を超える企業で株主総会が開催されました。毎年6月下旬の数日間は3月期決算企業の株主総会が一斉に開催されます。大きなホテルなどが会場になっているケースも多く、会場への道には案内板を持った係員が立っているのを見かけますし、電車であたりを見渡すと同じ企業名のロゴが入った紙袋を抱えた方も見受けられます。

さて、株主が参加している株主総会の平均所要時間はどの程度のものなのでしょうか。実際株主にならないとわからないと思うので、統計で見ていくことにしましょう。

2015年の経済産業省のサイトによれば、現在では1時間程度が平均となっているようです。また、証券代行サービスを展開している三井住友信託銀行の調べによると2015年の平均所要時間は50分とのことですから、概ね1時間という理解で良さそうです。

一方で、1997年(平成9年)商法改正前の平均所要時間は30分程度でした。時代を経るにしたがって、長時間化しているのは間違いないようです。

株主総会の長時間化の背景

では、なぜ株主総会は長時間化しているのでしょうか。

企業が不祥事を起こした場合や業績低迷により無配に転じた場合などには株主からその背景や理由、今後の施策を問いただすために長時間化するというのはすぐに理解できるかと思います。ただし、時代とともに企業の不祥事の数が増えていったということもないとすれば、日本の企業および経営者を取り巻く環境が変化していったと考えるのが妥当です。

2015年にはコーポレートガバナンス・コードが適用となり、企業がいかにしてガバナンスの質を担保できるかということに説明をより多く割いているのかもしれません。

また、外国人株主の比率上昇などとともにISS(Institutional Shareholder Services Inc.)といった機関投資家向け議決権行使サービサーの存在感が増していることも関係しているのかもしれません。昨年ISSは議決権行使サービス対象の上場企業について、ISSの定める基準でROEが一定以下の企業の経営者に対して反対票を投じるなどの方針を発表したことから、上場企業の経営者の間で緊張が走りました。

ISSや機関投資家のこうした対応により、一部の上場企業では、長期投資前提の個人投資家や企業のファンとなってくれる投資家層の取り込みにこれまで以上に積極的になってきたといえます。トヨタ自動車(7203)が個人投資家向けや学生を対象に会社説明会を実施したりしていることからも個人投資家への取り組みの熱意を感じます。

いずれにせよ、企業とその経営者はこれまで以上に関係者(ステークホルダー)への配慮が必要な時代となりました。最近の株主総会では、なんとおむつを着用して株主総会に臨む社長もいるといいます。議長である社長がトイレに行くことで議決が取れないという事態を避けるためのことのようです。長時間化ゆえに、致し方なしというところでしょうか。

日本の上場企業でも世界で著名な投資家ウォーレン・バフェットが経営する保険会社バークシャー・ハサウェイの株主総会のように「お祭り」のような株主総会が実施できると個人投資家層の広がりが進むかもしれません。ちなみに、今日のソフトバンクグループの総会は記録が残る2004年以降で過去最高の2時間51分。東芝は2時間58分、日産自動車は1時間51分を要しました。さすがに株主総会が1時間を過ぎるようであればトイレ休憩があってもよいと思います。

青山 諭志