AIで仕事の幸福度アップ。日立の新技術は何のため?

人工知能とビッグデータ解析の応用を着々と進める日立

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日立が幸福度向上のアドバイスを自動作成する技術を発表

日立製作所(6501)は、2016年6月27日に、働く人の日々の行動記録を日立の人工知能「Hitachi AI Technology/H」(以下、H)で解析し、その分析結果をもとに幸福感の向上に有効なアドバイスを自動作成する技術を開発したと発表しました。

この技術は、現在日立グループの営業部門で実証実験が行われています。そこでは、名札型のウエアラブルセンサーを身に付けた従業員約600人の行動データが集められます。そして、そのデータは日々「H」によって解析され、その結果をもとに幸福感向上に有効なアドバイスが従業員のスマホに転送される仕組みとなっています。

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より具体的には、本人とその人が関わる周囲のメンバーの平均ハピネス度を計測し、本人が平均に対してどのような状態にあるかを踏まえて、それぞれに有効なアドバイスを提供します。そして、それにより全体のハピネス度を向上させて生産性を高めることを目指しています。

幸福だと生産性が向上することを実証した研究成果が根幹に

“幸福感の向上に有効なアドバイス”というと、なんだか宗教みたいだとお感じの方もいらっしゃるかもしれませんが、日立はれっきとしたテクノロジーカンパニーであり、この実験もAIやビッグデータ解析技術を応用したビジネスの一環として展開中です。

実は、この技術は日立の研究開発グループ・人工知能ラボラトリ長の矢野和男氏が、12年間にわたって実証研究した成果に基づいています。

矢野氏は、もともとは半導体の研究者でしたが、日立が半導体事業から撤退したことに伴い、2004年からウエアラブルセンサーで得られた大量のデータをもとに人間、組織、社会の法則を見出す研究に取り組んでいます。

そうした研究を通して、人間の行動と幸福度には法則があることや、幸せな人ほど仕事の生産性が高く、クリエイティビティが高いということを大量の実証データから証明しています

※詳しくは「データの見えざる手」(矢野和男著、草思社)をご参照ください。

たとえば、苦虫を噛み潰したような顔をした社員と、いきいきと動き回り笑顔で働く社員をイメージして比較した場合、多くの人が後者の方が幸せで生産性も高そうに感じると思います。このことを、日立は感覚ではなく、長期間にわたり収集された人間の行動データ(ビッグデータ)の解析から実証しているのです。

このように、実証データから得られた法則をもとにした技術であるため、それはもはや宗教ではなく、科学であることがご理解いただけるのではないかと思います。

日立のHが普及して、ハピネス度が高く、生産性の高い職場が増えることに期待したいと思います。

 

和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。