日立、ソニーが相次いでロボット事業強化を表明

加速するロボット市場拡大の恩恵は誰に?

2日連続してロボットの話題にリアルに遭遇

今週は、2日連続してロボットに関する話題に直に触れる機会がありました。

1日目は、2016年6月28日に開催された日立製作所(6501)の研究開発インフォメーションミーティングにおいてでした。そこでは、なんとプレゼンテーションの最後に同社が2018年の実用化を目指して開発中のヒト型ロボット「EMIEW3」(以下、エミュー君)が、締めの挨拶を行いました。また、今回のイベントでは、エミュー君などのサービスロボティクスに関して詳細な説明を行うためのブースが設けられていました。

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ちなみに、エミュー君の身長は90センチ、体重は15キロですので、ソフトバンクのペッパー君(身長121センチ、体重28キロ)よりもやや小柄ですが、人と協調して移動できる(最大移動速度:時速6キロ)、15ミリの段差を乗り上がることができる、転倒しても自分で起き上がることが可能など、機動性に優れたロボットです。

また、センサーによる画像処理技術で、立ち止まって困っている人を見つけたり、相手に合わせた動作や説明もできたりします。さらに、ロボット同士でも会話ができ、お客様からの要求を別のロボットに引き継ぐことまでできます。

実用化された段階では、様々な言語対応が求められる空港や駅での施設内案内、1つの店舗で複雑なサービスを複数取り扱う銀行などの窓口業務、高齢者や子供など情報サービスに精通していないユーザーへの案内業務など、ますます高度化が進む対人サービスでの活用が期待できそうです。

2日目は、29日に開催されたソニー(6758)の経営方針説明会でした。登壇した平井一夫社長兼CEOは、将来に向けた新たな取り組みの1つとして、「AI×ロボティクス」を取り上げ、一度は撤退したロボット事業に再参入する考えを表明しました。

具体的な参入時期や製品の姿について明言はされませんでしたが、「お客様と心のつながりを持ち、育てる喜び、愛情の対象となり得るようなロボットもある」と発言したため、エミュー君やペッパー君に相当するヒト型ロボットの開発も想定されている可能性が高いと考えられます。

ロボット市場の拡大で恩恵を受けられる銘柄と今後の注目点

この2日間を通して、電機メーカーでのロボット熱の高まりを実感することができました。また、かなり以前から日本電産(6594)の永守重信会長兼社長が、ロボットは今後のエレクトロニクス産業にとって大きな成長分野になることを熱く語っていたことが思い出されました。

ロボットの駆動部分には大量のモーターが搭載されているため、大手電機メーカーが相次いで参入し、市場が急拡大すれば、日本電産にとって新たな成長分野になることは間違いないでしょう。早い段階からロボット用モーターに取り組んでいる同社は、ロボット関連の本命の1社として注目できると思います。

一方、ソニーや日立にとっても、技術面での差別化余地が大きいため、取り組む意義のある事業領域と言えるでしょう。ロボットは、メカニカルなハードウエア技術だけではなく、高度なセンサー機能、センサーから得られた情報のリアルタイム処理を行うIT基盤など幅広い技術リソースが要求されるからです。

このため、ロボット市場が、”直ちに”、かつての薄型テレビ市場のようにレッドオーシャン化する可能性は低いと考えらえます。しかし、ソフトバンクのような通信キャリアや自動車メーカーなど、今後は参入企業が、業界の垣根を越えて益々増える可能性があることや、ソニーや日立の動きに触発されて、市場拡大が予想以上に急速に進むことも想定されるため、“スピード”がより重要になることに注意が必要でしょう。

そうした点を踏まえて、日立については、顧客との共創を加速させ、計画通りに2018年にエミュー君の実用化を実現できるかを注視していきたいと思います。

一方、ソニーは今年5月に、人工知能(AI)に特化したベンチャー企業であるCogitai(コジタイ)社に資本参加しロボットの頭脳となるAI技術の強化に着手していますが、こうした取り組みによる成果が早期に現れてくるかに注目したいと思います。

 

和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。