オリンピック10年後のリスク:北京、ロンドン、東京に何が起きる?

過去半世紀、開催地の10年後を振り返る

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この記事の読みどころ

  • 夏のオリンピック開催国では、開催の約10年後に大きな出来事が起きるという法則があるように見受けられます。
  • 国民投票でEUからの離脱を決定したイギリス。今後の動向にはあまりに不透明な要因が多く、ロンドンオリンピックが開催された2012年の10年後の2022年頃に向けて、大きな動きがあることも頭の片隅に置いておく必要があるのかもしれません。
  • 東京オリンピックが開催される2020年の10年後は2030年。大きな出来事が起きるかどうかは分かりませんが、2030年は国内人口の3分の1が65歳以上の高齢者になると言われており、社会のあり方が大きく変わっていると考えておいた方が自然です。
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「オリンピック開催9年後の法則」をご存じですか?

リオデジャネイロオリンピックの開幕まで、1か月を切りました。アスリートの活躍への期待は高まりますが、スポーツそのものとは別に、メディア報道では、まだ完成していない競技場の様子や、物々しい警備の映像が連日流れています。スポーツの祭典の裏側では、開催地または開催国への負荷に相当なものがあるように見受けられます。

ところで、「オリンピック開催9年後の法則」というのをご存じでしょうか。これは、外交評論家の加瀬英明氏が言い始めたとされる法則で、「全体主義国家でオリンピックが開催されると、その9年後に体制が崩壊する」というものです。その話の中では、以下の2つの例があげられています。

  • 1936年 ベルリン(ドイツ)→1945年ドイツ敗戦、ナチス崩壊
  • 1980年 モスクワ(ソ連)→1989年ベルリンの壁崩壊(その後1991年にソ連崩壊)

オリンピック開催約10年後の開催国では?

他のオリンピック開催ではどうでしょうか。

そこで、上記の法則から「全体主義国家」という条件を外し、「9年後」を「10年後近辺」へと条件をゆるくして、過去半世紀の夏のオリンピックについて調べてみました。すると、体制崩壊とまではいかなくとも、オリンピック開催の約10年後に、政治・経済面に大きなインパクトのあるイベントが起きる場合が多いということが見えてきました。

実際、過去半世紀の夏のオリンピックを見てみると、多少強引と言える内容も含まれますが、1960年のローマ大会から2004年のアテネ大会までの12回のうち9回は、開催約10年後に大きなイベントが起きています(以下のリストで*印をつけたもの)。

2012年 ロンドン(イギリス)
2008年 北京(中国)
*2004年 アテネ(ギリシャ)
 →2010年代前半のギリシャ危機(失業率やGDPの最悪期は2013年)
*2000年 シドニー(オーストラリア)
 →2009年に記録的熱波と、オーストラリア史上最悪のビクトリア州森林火災(暗黒の土曜日)
*1996年 アトランタ(米国)
 →2007年サブプライム危機、2008年リーマンショック
*1992年 バルセロナ(スペイン)
 →2002年欧州通貨統一でスペインの通貨ペセタ廃止
*1988年 ソウル(韓国)
 →1997年アジア通貨危機でIMF管理入り
*1984年 ロサンゼルス(米国)
 →1994年カリフォルニア州オレンジ・カウンティの破綻
*1980年 モスクワ(ソ連)
 →1991年ソ連崩壊
1976年 モントリオール(カナダ)
1972年 ミュンヘン(西ドイツ)
*1968年 メキシコシティ(メキシコ)
 →1982年メキシコ債務危機
*1964年 東京(日本)
 →1973年オイルショック
1960年 ローマ(イタリア)

開催地ごとに事情が異なっていることもあり、オリンピック開催とその10年後の当地の世情についての因果関係を明確に説明しきれるものはありません。ただ、直感的には、オリンピック開催というゴールに向かって、開催地の政治や経済に負荷をかけて準備をするため、開催後に負荷をかけてきた部分の無理が徐々に表面化してくるという流れがあるように感じざるをえません。

ロンドンオリンピックの10年後は2022年

2016年6月の国民投票により、英国はEUから離脱する方向に進むことが決まりました。ただし、これですぐに離脱できるというわけではありません。

これからEUに対して正式に離脱申請をしなくてはならず、さらに、申請してから実際に離脱するまで少なくとも2年はかかると言われています。そうなると、本当に離脱するのは早くても2018年以降になるのではないか、またはもっと時間がかかるのではないかと見られています。

また、今回、残留派と離脱派が拮抗していたため、残留派の不満が大きく残っているように見受けられます。残留派が多いスコットランドでは、連合王国から独立した上でEUに加盟(または残留)しようという動きすら出てきています。状況によっては、連合王国の分解という話にすら発展しかねない雰囲気です。

ロンドンオリンピックの開催は2012年でした。その10年後は2022年ですので、今後5~6年は、政治や経済の枠組みを大きく変えてしまう動きがあるのかもしれません。また、今回は詳しくは触れませんが、この法則を信じるのであれば、2008年の北京オリンピックの約10年後の2018年頃の中国の動向も注視しておく必要があるかもしれません。

イギリスにしても、中国にしても、「思いがけないことが起きるかもしれない」ということを頭の片隅に留めておくのが良いかと思います。

東京オリンピックの10年後は2030年

リオデジャネイロオリンピックの次は2020年の東京オリンピックです。その10年後の2030年はけっこう先のことなので、ぴんと来ないかもしれません。ただし、2030年と言えば、日本の人口の3分の1が65歳以上の高齢者になる年とも言われています。

オリンピックの法則が当てはまって2030年前後に大きな出来事が起きるかどうかは分かりません。しかし、人口動態1つをとってみても、社会保障のあり方、働き方、お金に対する考え方など、社会の仕組みは大きく変わっていく可能性は高いと思われます。

 

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。