第1四半期決算発表翌日、イオンの株価が急落

イオン(8267)といえば日本の総合小売り業でトップの規模であり、最近では電子マネーWAONや格安スマホなど、新しい試みも注目を浴びています。

そのイオンが2016年7月6日に、2017年2月期第1四半期(2016年3-5月期)の決算を発表しました。営業収益は対前年同期比+1%増、営業利益が同▲6%減の329億円、経常利益が同▲3%減の347億円ですので、一見したところ「消費環境は厳しいが、健闘している」ように見えます。期初に開示した会社の通期業績見通しや配当を変更したわけでもありません。

しかし、翌7月7日の同社の株価は対前日比▲8%の下げになりました。なぜこのような株価の動きになったのか、少し考えてみましょう。

連結営業利益は不振のGMS事業を好調事業でカバー

イオンの業績が語られるとき、総合小売り業態(General Merchandise Store、略してGMS)事業の採算の話題が必ず取り上げられます。しかし、イオンの小売事業はその関連事業も含めると非常に多岐にわたっています。

イオンの業績は9つの事業セグメントに分けられ、これらが相互作用しています。たとえば、この期の連結営業利益329億円に寄与の大きい順に、各セグメントを並べてみましょう。

1.総合金融事業 137億円(対前年同期比+12億円増益)

2.ディベロッパー事業 116億円(同+3億円増益)

3.サービス・専門店事業 78億円(同横ばい)

4.SM・DS事業 55億円(同+25億円増益)

5.ドラッグ・ファーマシー事業 39億円(同+6億円増益)

6.小型店事業 収益とんとん(同▲3億円減)

7.その他事業 ▲10億円(同▲1億円減)

8.国際事業 ▲13億円(同▲21億円減)

9.GMS事業 ▲93億円(同▲45億円減)

となります(このほかに連結調整額があります)。

確かにGMS事業は他社と同様厳しい状況が続いていますが、旧ダイエーを始めとしたさまざまな構造改革が行われています。そして全社で見れば稼ぎ頭の上位の事業セグメントがしっかり利益を伸ばして、連結ベースでの営業利益で考える限り、厳しい事業環境をうまくしのいでいると言えるでしょう。

四半期純利益の按分がポイント

実は、筆者が一番気になったのは営業利益の減益ではなく、親会社株主に帰属する四半期純利益が▲63億円の赤字になったことです。

帰属を振り分ける前の四半期純利益は91億円の黒字決算ですが、ポイントはこれをイオン株主に帰属する部分とそうでない部分に分けた後です。結果として、親会社株主に帰属する四半期純利益は▲63億円の赤字であり、ここにイオングループの課題が集約されています。

たとえば、イオンのモール事業や国内の金融事業はイオンの小売事業がエンジンになっています。その恩恵がモールや金融に反映されているのです。しかし、本業と言える小売事業は100%ないし高い持分比率になっている一方、儲かる事業を営む子会社ほど外部に一般株主がたくさんいるため、一般株主とその儲けを折半せざるを得ないのです。

ここで会社の通期計画を改めて見ると、営業利益の目標は1,900億円ですが、親会社株主に帰属する当期純利益は100億円となっています。この2つの数字のギャップを、株式市場は再認識したのではないでしょうか。

イオンは現在GMS事業を中心に、低採算の小売事業で実にさまざまな構造改革を進めています。この成果を早く示すことが重要ですが、収益力が高まる局面ではグループ企業の資本関係の再構築が進め、イオン株主の利益をさらに高めていくことが求められていくでしょう。

 

LIMO編集部