減収・減益決算を恐れることはない? IBM株上昇の教訓

日本の電機銘柄の注目ポイントをIBM決算から考える

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IBMの株価は決算発表後に上昇

米IBMは、2016年7月18日(米現地時間)の取引時間後に2016年12月期Q2(4-6月期)決算を発表しました。決算は減収・減益でしたが、発表後の時間外取引での株価は一時+3%上昇しています。

ちなみに、IBMの株価パフォーマンスをS&P500と比較すると、5年前はIBMが▲10%下落に対してS&Pが+68%上昇と、IBMが大きくアンダーパフォームしていました。しかし、2016年の年初来ではIBMが+16%上昇、S&Pが+6%上昇とIBMがアウトパフォームしています。つまり、足元ではIBMの株価は復調傾向にあることになります。

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来週から日本でも決算が本格化しますが、IBMのように世界的にビジネスを展開する米国大手企業が英EU離脱ショック後にどのような決算を発表するか、また、それを受けて株価はどのように動くかを知っておくのは有益だと思います。そこで、IBMの決算と株価の動きの背景について詳細を見てみることにします。

戦略分野が順調

まず、IBMの決算内容ですが、Q2の売上高は前年同期比▲3%減、純利益は同▲25%減益でした。

売上高は、引き続きサーバーなどのハードウエアや関連ソフトの減収に歯止めがかからず、17四半期連続での減収となりましたが、事前のアナリスト予想は上回りました。また、純利益についても先行投資の影響等により減益とはなりましたが、これもアナリスト予想を上回っています。

今回の決算で特に印象的であったのは、同社の決算プレゼンテーションに「Becoming a Cognitive Solutions & Cloud Platform Company」という表現があり、人工知能を活用したソリューションや、IoT事業を行うためのクラウド関連事業が順調に拡大している点が強調されていたことでした。

こうした背景に加え、通期のEPS(一株当たり利益)予想は据え置かれ、2016年12月期下期(7-12月期)からEPSの改善が目覚ましくなるというコメントもあるなど、決算の実績や見通しには英EU離脱ショックの影響はほとんど見られませんでした。

減収・減益決算を過度に恐れる必要はない

では、減収・減益決算でありながら、時間外取引でIBMの株価にネガティブな動きが見られなかったのはなぜでしょうか。それは、市場予想を裏切らず、また予想も据え置かれたことに加えて、株価指標が低位にあり、そもそも市場の期待値がそれほど高くなかったことも一因と考えられます。

また、株価指標については、PER(株価収益率)が約12倍と、米国株式市場の歴史的な平均値である15~16倍に対しては割安な水準にあります。

前述したように、日本の大手電機企業も来週から決算が本格化しますが、多くの企業が減収・減益決算を発表すると思われます。とはいえ、過度に恐れることはありません。IBMの決算と同様に、日本企業も為替影響を除くと、英EU離脱ショックの影響が短期業績に表れる可能性は極めて低いと考えられるからです。

このことを念頭に、業績予想が下方修正されるリスクが低く、株価指標面でも割高感がなく、また、戦略分野が着実に改善している銘柄に注目していきたいと思います。そうした銘柄は、じっくりと探せば、日本でも決して少なくはないと思います。

 

和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。