静かに株式市場から消えていくダイハツ工業を忘れない

上場廃止になってもダイハツのプレゼンス向上への期待は続く

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自動車セクターはQ1決算の注目業種の1つ

激動の金融市場となった2016年も半分以上が過ぎ、日本では7月下旬から第1四半期決算(3月期決算企業)が始まります。新しい年度に入ってまだ3か月ですが、参議院選挙後の株式市場が上昇に転じていることもあり、このQ1決算には例年以上に注目が集まると考えらえます。

特に自動車メーカーのQ1決算には、ひときわ関心が集まると予想されます。4月以降の急速な円高進行、熊本地震の影響による一時的な生産停止、国内販売の低迷など、良いニュースがほとんどなかったものの、どれだけのコストダウンで業績を下支えするのか注目されます。

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中にはQ1決算時に通期業績予想を下方修正せざるを得ない会社が出て来る可能性もありますが、今回のQ1決算での注目業種であることは間違いないと言えましょう。

Q1決算を発表せずに上場廃止となるダイハツ工業

しかし、そのQ1決算発表を行うことなく、株式市場から静かに消え去っていく自動車メーカーがダイハツ工業(7262)です。今年1月、トヨタ自動車(7203)は8月1日付でダイハツを株式交換で完全子会社にすることを発表しており、ダイハツは7月27日付で上場廃止になる予定です。同社株の最終売買は7月26日になります。

なお、交換比率は1:0.26となっており、ダイハツ1株に対してトヨタ0.26株が割り当てられることになっています。売買最終日にかけて様々な思惑で株価が動く可能性がありますが、極端な変動はないと考えられます。

7月15日終値で見ると、トヨタ株5,759円、ダイハツ株1,495円となっていますので、1:0.26という交換比率は、ダイハツの株主にとって少しだけ不利な条件となります。もっとも、この完全子会社化のニュースが出てからダイハツ株が値上がりした時点で売却した投資家も多いでしょうし、現在もダイハツ株を保有している投資家は、トヨタ株への“交換”を可としているのでしょう。

小型車への需要シフトが進む中で存在感を十分に示した

ダイハツは1967年にトヨタと資本業務提携を行って以降、徐々にトヨタからの出資比率が高まり、1998年には過半数を超えて連結子会社となりました。

しかし、ちょうどその頃から世界で小型車(コンパクトカー)が増え始め、日本でも軽自動車市場が拡大し始めました。小型車と軽自動車に経営資源を集約していたダイハツは、親会社のトヨタへ技術供与や商品開発でプレゼンスを高めていきます。特に、インドネシアなどASEAN市場での協業は大きな効果をもたらしました。

株式市場でも間違いなく貴重な存在だったダイハツ株

また、株式市場においては、円高になって自動車株が売られる時、国内とASEANが中心で為替影響が小さかったダイハツ株は、投資資金の“避難先”としても重宝されたと言えます。間違いなく、貴重な存在でした。

また、業績も順調に拡大したため、従前よりも投資対象としての位置付けが高まりました。2000年1月初めに486円だった株価は、その後は最高値2,300円まで約4.7倍へと上昇しています。ダイハツへの高い評価と考えていいでしょう。ちなみに、同じ2000年1月初めのトヨタの株価は4,940円で、その後の最高値は8,783円となっています。

ダイハツのさらなるプレゼンス向上を願う

今回、株式市場からダイハツ株が消えていくのは、寂しいという一言に尽きます。ただ、上場廃止になっても、ダイハツ工業という会社は存続しますし、ダイハツのブランドも残ります。

唯一心配なのは、ダイハツの従業員のモチベーションですが、合従連衡を始めとした業界再編を何度も経てきたことを考えれば、トヨタのような大企業の完全子会社となって生き残るというのも1つの選択肢です。時代の流れと言ってもいいかもしれません。

ダイハツという“小粒でもピリリと辛い”自動車メーカーの株式が上場していたことを、多くの投資家は忘れることはないと思われます。株式は上場廃止となっても、ダイハツの今後のさらなるプレゼンス向上に期待したいと思います。ダイハツ工業、お疲れさまでした。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。