ポケモンGOが子供のゲームであるために必要な3つのポイント

なぜナイアンティックを主体としたのか

Matthew Corley / Shutterstock.com

任天堂は利益確定の売りに押された7月20日の株式相場

7月20日の株式市場で、任天堂(7974)の株価は前日比約▲13%下落の27,765円で引けました。一部メディアでは「ポケモンGO20日から日本でも配信開始」とも報じられていましたが、サービス開始延期のニュースが駆け巡ったことで、任天堂株の利益確定売りが出たものと思われます。

株式市場では、期待していたことが目先に実現される可能性が高くなると、いったん利益を確定する投資家がいます。今回も、20日のローンチが目前に迫ったところで、任天堂株をいったん売却しようと考えた投資家が多かったのではないでしょうか。そこに、ローンチ延期というニュースが出たことで、売りに拍車がかかったと見られます。

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そもそも、任天堂の株式を保有する際には最低投資金額が20日の終値ベースでも277万円近く必要となります(1株の株価が2万7,765円で単元株数は100株なので最低投資金額は277万円)。277万円はなかなか手が出ない投資金額です。ここ最近株価が大きく上昇した任天堂ですが、投資金額が大きいため、戦々恐々としていた個人投資家も多かったのではないでしょうか。

ナイアンティックが主体のポケモンGOを考える

さて、「ポケモンGOの飛躍により任天堂の業績が変化するかもしれない」という期待から株価は大きく上昇しました。しかし、『ポケモンGOに沸く任天堂の業績は本当に復活するのか』でもお伝えしたように、任天堂が大きな業績インパクトを享受できる仕組みにはなっていないと見ることもできます。

では、これほどまでに世界中で熱狂的に受け入れられているポケモンGOを、なぜ任天堂と株式会社ポケモンだけで取り組まなかったのかという疑問が湧いてきます。

確かに、Niantic(ナイアンティック)は既にIngress(イングレス)として位置情報を活用した陣地取りゲームで実績がありました。ポケモンGOを短期間で立ち上げようと思えば、ナイアンティックと協業してプロジェクトを進めるメリットが多分にあったのでしょう。

これまでの任天堂のゲームへの取り組みを振り返ると、なぜポケモンGOに関して開発・販売元をナイアンティックとし、任天堂や株式会社ポケモンはナイアンティックの株主になることを選択したのかが読み解けるのではないか、考えてみます。

スマホのアプリを前提にしている以上、万人向け子供ゲームと言えるか

任天堂が、子供を始めとして同社のゲームを幅広い人に楽しんでもらいたいと考えていたのは、これまで販売してきたファミコン、ニンテンドーDS、Wii(U)などを見ても明らかです。

ところが、今回のポケモンGOはスマホを持っていない人は楽しめないことになります。

「おいおい、いまどきスマホを持ってない人などいるのか」という突っ込みも来そうですが、ポケモンのコンテンツを楽しみにしている小学生のうち、いったい何割が自分用のスマホを持っているのでしょうか。

小学生がポケモンGOを楽しもうとすれば、自分の両親のいずれかのスマホを借りて遊ぶということになるでしょう。この状況に両親はいい顔をするでしょうか。初めのうちは物珍しさもあり、両親もスマホを貸してはくれるでしょう。しかし、いずれ嫌がられるのは目に見えています。

話は逸れますが、Wiiを開発する際のエピソードとして「リビングでお母さんに嫌われない据え置き型ゲーム機」を目指したといいます。両親がLINE(3938)で友達とメッセージにやり取りをしている際にせがんでも、子供がスマホを貸してもらうのはなかなか難しそうです。

つまり、スマホでポケモンコンテンツを遊ぶことは、まだ万人、特に子供が好きな時に楽しめる状況にないということです。

任天堂はハードとコンテンツの掛け合わせで最高のUXを求める

今回のポケモンGOが任天堂らしくないなと感じるのは、ハードウェアであるスマホが(iPhoneであれアンドロイド端末であれ)、任天堂がほとんど関与することができないプラットフォームである点です。

GPSを搭載しているモバイル端末がスマホである以上、今回のポケモンGOはスマホが中心のハードとならざるを得ないのですが、この状況を任天堂はどう捉えているのでしょうか。

かつてはスマホは数万円台後半もする高級品でしたが、今は中国では相当のスペックでも2万円程度のスマホが存在します。

そうした環境を考えれば、任天堂デザインのスマホがあってもいいように思います。ただし、毎月継続的に数千円から数万円を払わないと使用できないスマホをベースとしてゲームを考えられるかという点に関しては、先に挙げたように、子供を含めて考えれば万人受けする商品になるかといえば難しいでしょう。

では、どうすればよいか。たとえば、2万円のスマホにおいて製造コストを引き下げるために通信チップをLTE対応ではなく3G対応としたり、他にも機能を落とす(ディスペック)作業をし、より普及をさせるためには現在の3DSのハード価格にまで近づける努力が必要でしょう。

また、ゲームを購入すれば一定の通信料で3Gインフラを活用したゲームが楽しめるということになれば、子供でもスマホでポケモンGOのようなゲームを楽しむことができます。こうしたことができるのであれば、任天堂がハードもコンテンツも両方で関わることができるという仮説です。

ポケモンGOはネットワークの経験値を高める好機

最後に、任天堂には、今後ポケモンコンテンツを通じて任天堂自身が取り組まなければならないであろう、ソーシャルで起きる問題の対応への準備をする狙いがあったのではないでしょうか。任天堂はナイアンティックだけではなくDeNA(2432)ともネットワークゲームでは協業をしています。

ポケモンGOに関しては、すでに使用中のけがや事故などの報道も一部でされています。任天堂は、今回のポケモンGOを通じて、今後自分たちでネットワークを通じたゲームに取り組んだ時に生じ得る問題の洗い出しに真剣に取り組む機会を得たとの見方もできそうです。

今回は、ソーシャルではイングレスで一日の長のあるナイアンティックがその背中を見せてくれるので、私たちもそのオペレーションをじっくりと見ていくことにしましょう。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。