2016年7月22日、任天堂(7974)からポケモンGOの配信による連結業績予想への影響についてのコメントが出ました。コメントの趣旨は、現時点で業績修正を行わないというものですコメント全文はこちら)

ポケモンGOが世界的にブームになりつつある中、このタイミングでこのようなコメントが任天堂から出るのはなぜか、考えてみたいと思います。

まずは任天堂のコメントのサマリー

まず、任天堂のコメントのポイントをまとめてみます。

  • ポケモンGOは米国法人Niantic, Inc.が開発を行い、配信している
  • 任天堂の関連会社である株式会社ポケモンは、ポケットモンスターの権利保有者としてライセンス料および開発運営協力に伴う対価を受け取る
  • 任天堂は株式会社ポケモンの議決権の32%を保有し、株式会社ポケモンは任天堂の持分法適用関連会社である
  • ポケモンGOと連動する周辺機器、Pokémon GO Plus(以下、ポケモンGOプラス)の製造および販売を予定している
  • 直近の状況を鑑みても現時点では2016年4月27日発表の連結業績予想に対する業績予想の修正はない

つまり、ポケモンGOの事業運営者、株式会社ポケモンに関する収益構造、任天堂と株式会社ポケモンの資本関係、ポケモンGOに関して任天堂が今後関与する事業についてまとめた上で、今回の業績予想の修正はないというものです。

ちなみに、収益構造等については、投信1の「ポケモンGOに沸く任天堂の業績は本当に復活するのか」でもお伝えしています。

なぜ、このタイミングでこの内容なのか

では、なぜこのタイミングで発表したのでしょうか。任天堂の2017年3月期第1四半期の決算発表は7月27日に予定されていますが、それまでにポケモンGOによる影響の様々な憶測を払拭しておきたかったのかと思います。また、投資家などから任天堂の窓口であるIR部門に多くの質問が来たでしょうから、その回答をしたという見方もできます。

いずれにせよ、任天堂のコメントの中で気になるのは、「直近の状況を鑑みても、現時点では、当業績予想の修正は行いません」という箇所です。

確かに第1四半期は4月から6月までであり、ポケモンGOがリリースされた7月の影響分は入っていないでしょう。ただし、任天堂が強調しているのは、足元の状況を見ても、2016年度上期や通期の業績修正は行わないというものです。

というのは、ポケモンGOが任天堂に影響を与える収益部分については、持分法適用会社である株式会社ポケモンの今後の決算について任天堂から予想を出すものでもありません。また、ポケモンGOプラスは今後発売していくものですから、現時点で業績予想を見直す状況にないということでしょう。

次の注目点はスマートデバイス事業と次世代機NX

ポケモンGOでは、位置情報とアプリの普及の爆発力を見せつけられることになりました。今後は任天堂の次のアクションが気になりますが、そもそも任天堂は2017年3月期に関しては施策を開示しています。

ポケモンシリーズに関しては、2016年冬にニンテンドー3DSの「ポケットモンスター サン」「ポケットモンスター ムーン」が世界で発売予定です。任天堂からすれば、ポケモンGOの動きも気になるものの、業績を考える上ではむしろ任天堂が直接恩恵を受けるこれらの新タイトルによるポケモン事業で巻き返したいのではないかと思われます。

また、開発コード「NX」と呼ばれる次世代ハードウェアが2017年3月に発売予定です。Wii U後のゲーム機のあり方を定義するためのカギとなるのは間違いありません。

任天堂の株価はポケモンGOで大きく上昇しましたが、冒頭で述べた同社からのプレス発表により、再び同社の業績への注目が集まる状況になりそうです。ただ、クリスマス商戦やNXの発売タイミングを考えると、下期までは同社の業績面での確認ができるかどうかは注意が必要でしょう。

青山 諭志