大きな社会問題となった三菱自動車の燃費データ不正問題

4月から始まった2016年度は、早くも第1四半期決算(4-6月期)の発表が本格化しています。

話題が少なかった自動車業界の中で、悪い意味で最も注目されたのが、三菱自動車の燃費不正問題でした。これは、三菱自動車が国土交通省へ提出した燃費試験データについて、燃費を実際よりも良く見せるため、長年にわたり不正な操作を行っていたことが判明した問題です。

国内法規で定められたものと異なる試験方法がとられていたことが明らかになり、自動車の燃費性能に対する信頼性を損なった極めて由々しき問題です。

日産自動車傘下での再出発が進行中

この問題が発覚して以降、窮地に立たされた三菱自動車は、問題となった商品をOEM供給していた日産自動車からの資本出資を受けることになりました。日産自動車は発行済み株式の約34%を出資することで、三菱自動車を事実上傘下に収めることになります。

正式な払い込みは10月になる予定ですが、既に日産自動車からは代表取締役の派遣も受けており、三菱自動車は日産グループの一員として再出発することになります。

Q1決算は▲1,297億円の巨額赤字に転落

さて、その三菱自動車が7月27日に発表したQ1決算は散々な結果でした。

一連の不正問題により国内販売を停止した影響もあって販売台数は激減、円高進行も追い打ちとなりました。営業利益は対前年同期比▲75%減と大きく落ち込んでいます。また、最終利益(親会社株主に帰属する四半期純利益)は▲1,297億円という巨額の赤字となりました。

これは、不正問題に絡む特別損失▲1,260億円を計上したためです。この特別損失には、保有ユーザーへの賠償金(台当たり10万円)、工場操業停止に伴うサプライヤー等への支払保証など様々な費用が含まれています。なお、2017年3月通期の会社予想では、営業利益は同▲82%減、最終損益は▲1,450億円の赤字を計画しています。

三菱自動車の過去6か月の株価推移

巨額赤字転落は織り込み済み、株価の反応は限定的に

このQ1決算の結果を受け、翌日(28日)の三菱自動車の株価は▲2%程度下落して始まりました。市場全体が弱含んでいることを考えると、株価下落は限定的と言えます。巨額の赤字転落は既に織り込み済みであり、新しいニュースではなかったということでしょう。

普通、これだけの巨額赤字を計上すると、財務状況の悪化が心配されますが、10月に予定されている日産からの払い込み(約2,380億円、見込額)を考慮して、特段懸念される動きは見られません。

日産主導による企業体質の抜本的変革への期待

三菱自動車の株価は、不正問題の発覚以前は概ね800~900円で推移していましたが、その後は急落し、一時412円まで下落しました。しかし、日産との資本提携が発表されると、日産主導の企業体質改善に対する期待感などから株価は上昇に転じ、600円を超える場面がありました。その後は現在に至るまで概ね500円前後の動きに終始しています。

株式市場における三菱自動車への注目点は、日産の傘下に入っていかに企業体質が変わるかです。もちろん、業績回復も重要です。しかし、この20数年にわたり何回もの不祥事(今回の燃費データ不正問題含む)を起こしてきた企業体質の変革こそが、最も重要な注目点と言えます。

それが目に見える形で明らかになるまで、株価は静かな動きに止まる可能性が高いと考えられます。

 

LIMO編集部