男気対決!広島東洋カープ黒田投手 vs. 日本銀行黒田総裁

軍配はどちらに

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広島東洋カープの黒田博樹投手と日本銀行の黒田東彦総裁。同じ姓にして全く別の職業ですが、それぞれが置かれた立場における男気対決を考えてみました。

日米通算200勝

2016年7月23日、広島東洋カープの黒田博樹投手が日米通算200勝を達成しました。

メジャーリーグでばりばりの先発投手だった黒田投手は、高額契約のメジャーを選択せず、男気を発揮して古巣である広島東洋カープに復帰しました。そして、投手としての偉業である通算200勝を本拠地である広島市のマツダスタジアムで見せてくれました。野球ファン、カープファンだけでなく、広く世の中の方々が感銘を覚えたのではないでしょうか。

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200勝達成の直前、黒田投手は2試合勝ちに恵まれませんでした。しかし、しっかり立て直して7回無失点で200勝を飾るあたりに、男気を感じます。

非凡なる適応力

渡米前の黒田投手は剛球投手の印象でした。しかし、メジャーリーグの試合中継や帰国後の試合中継を見ると、ストライクゾーンを広く深く使える投手という印象に変わりました。

手元の数字を見てみますと、広島で初めて2ケタ勝利を達成した2001年(12勝)から2007年まで、一度登板すると平均7.2イニング投げていましたが、ロサンジェルス ドジャースに移籍の後ニューヨーク ヤンキースに移籍した2008年から2014年までは一登板あたり平均6.2イニング投げていました。しかし、1年間の投球回数は、2001年‐2007年の年平均が184イニング、2008年‐2014年が188イニングで、あまり変わっていません。

つまり年間に投げるイニング数は日米であまり違いませんが、米国では登板間隔が短くなり、登板あたりのイニング数が少ないということです。

先発完投ではなく、クオリティスタートをコンスタントに続けるためにはどうするか、このポイントを渡米後早くから考え抜き、ピッチングの幅を広げていったのが200勝達成という偉業の成功要因に違いありません。

試合中継を見ていますと、それなりに走者が出てはらはらするのですが、走者が出るとエンジンがかかり、少ない球数で内野ゴロを打たせてしっかり抑えてくれます。はらはらと安堵、まさに千両役者ここにありということでしょう。

また、捕手目線で配球を楽しませてくれる、貴重な投手でもあります。ストライクゾーンからボールになる変化球、ボールゾーンからストライクになる変化球など、打者にボールの軌道を重層的に見せて打ち損じのための伏線を張っていく投球術は、オールドファンをうならせていることでしょう。

このように磨き抜かれた職人技を、日本のファンの前で披露すると決めて日本に復帰した男気溢れる黒田投手、今年はぜひカープを優勝に導いてほしいと筆者は願います。

黒田日銀総裁の男気度はどうか

日銀の黒田総裁を、男気という観点で語ることがふさわしいかは賛否があるでしょう。しかし、デフレからの脱却を明確な政策目標とし金融緩和政策の拡充を果敢に進めてきた経緯を振り返ると、はっきりしたメッセージを出すという点で特筆すべき総裁と言えます。

しかしながら、2016年7月30日の日銀の金融政策決定会合の結果は、かつて黒田マジックを謳歌したころとは異なり、正直なところ肩すかしの印象です。

ドル資金供給策の強化は良いとして、上場投信の買入額引き上げ以外には従来から大きな政策の変更はありませんでした。上場投信の購入は、お金を市場に供給するので市中に出回るお金を増やすという意味では金融緩和策と言えるのでしょうが、政策目標への波及経路が直接的とは言えず、打つ手が限られてきたという印象すら与えかねません。

金曜日のニューヨーク市場では米国の4-6月期のGDP統計への失望もあり、ドル円相場は102円台前半、シカゴの日経平均先物も下げて終わっています。

9月の日銀金融政策決定会合では状況適応力を示せるか

9月の日銀の金融政策決定会合では、これまでの量的・質的金融緩和の効果を検証するとされています。政策目標や政策手段の重要な変更の可能性に含みを持たせたという気がしてなりません。要注目です。

振り返ってみると、日銀はマイナス金利まで金利水準を引き下げ、さらに国債を幅広く買い上げて短期のみならず長期の金利も低下させました。

しかし、期待インフレ率に顕著な変化はいまだ生じず、実物投資の熱が高まったとは言えない状況が続いています。年率2%の物価上昇という目標はなかなか手に届きません。

ここで思い起こしていただきたいのは、広島カープの黒田投手の適応力です。黒田総裁はいったんこれまでの政策とその効果をレビューし、目の前に広がる経済実態に適応する必要があるのです。

黒田総裁に9月までに期待したいことがいくつかあります。脱デフレないしインフレ経済への移行についてしっかり国民に語りかけること、2%の物価目標の達成・未達成それぞれの場合の出口戦略についてしっかり議論すること、立法府・行政府とは異なる立場から行政の合理化を後押しすること等に、従来以上に目を配ることです。

特に、日本は労働人口の減少とグローバルなイノベーション力の低下が懸念されます。ITを活用し労働生産性を高めるために、金融システムが果たすべき役割を突き詰めてほしいと思います。

9月になればカープの優勝の行方も見えてきます。2人の黒田氏の男気対決が見たいと思いますので、日銀の黒田総裁も9月までぜひ知恵を絞ってほしいと願います。

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。